表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/67

第26話 新しい仲間と共に

 それからあっという間に二週間が過ぎていった。

 俺たちはすぐにバジリスクの巣を卒業すると、Lv30~40が適正レベルとなる大型モンスター『トロール』の生息するミルダ坑道へと狩場を移した。ミルダ坑道は採掘スキルさえ持っていれば採掘により高い確率でシルバー鉱石を入手することができる絶好の採掘ポイントだ。また稀にだがトロールがシルバー鉱石をドロップすることがあるため金策には有効な狩場である。そのため、攻略ギルドのトップ集団は既にここで狩りを行っており、姫やネームレスたちとも坑道の中で何度かすれ違った。


 俺がPTに加わったことにより、委員長は『細剣』のスキルを『覚醒魔法』へと入れ替え、肉体強化系の魔法を使えるようになった。しかし美羽がまだ俺と同じスチール装備であったこともあって、トロールの攻撃を耐え切ることができなかったため、美羽のHPが半分近くまで減った時点で俺が火力で強引に敵の狙い(タゲ)を自分に向け、美羽が回復するまでの間、回避しながら少しずつダメージを与えていき、回復を終えた美羽が再びヘイトで狙い(タゲ)を取るという戦法を取っていた。だから俺たちは、ドロップしたシルバー鉱石やお金をまず美羽に回し、美羽の防具を最優先に整えていくことにした。

 そして美羽の防具が全てシルバーへと代わった頃には狙い(タゲ)を維持し続けても倒し終わるまで十分トロールの攻撃に耐えきれるほどになっていた。

 そこからは俺の武器をシルバー製へと新調するのに協力してもらい、さらにレアドロップである魔法スクロール『オーガパワー』がトロールからドロップしたことで、狩りの効率がますます上がっていった。


 『オーガパワー』はその名の通り瞬間的に筋力を飛躍的に上げる事ができる覚醒魔法で、覚醒魔法のスキルレベルに合わせて効果が増していくらしい。

 もちろん10分間ステータスを上げる覚醒魔法もあるが、その上昇値は覚醒魔法でも2が限界らしい。もちろん委員長も覚えていて、俺には『パワーブースト』と『スピードブースト』、美羽には『タフネスブースト』を常時途切れないようにかけてくれている。

 それに比べて『オーガパワー』はたったの5秒間しか効果を発揮しないが、現時点で筋力を10も上昇させることができる。しかも瞬間的にしか効果を発揮しないためか、MP消費も少なく、『パワーブースト』と重ねて効果を発揮することもでき、再使用時間も3分ととても使い勝手が良い。

 というのも俺が全力で攻撃に集中できるタイミング見極め、一声かけて使ってくれる委員長がいてこその効果だ。

 たったの5秒、連携が上手く噛み合わなければほとんど意味を為さないこのスキルも、連携が上手く噛み合うことで恐ろしいほど高い効果を発揮することが確認された。


 ここに来て一週間も経つ頃には、委員長を含めて全員の装備がシルバー製へと変わり、トロール狩りもかなり余裕になってきたので、採掘スキルを持つクリスやジークたちの護衛を兼ねながらレベル上げに勤しんでいた。

 さらに俺たちは次のボス攻略へと参戦するべく、新たにある秘策を用意することにした。

 そして、今日ついにイージスの盾・黎明・ローゼンクロイツから成るギルド連合『神話』の中でボス討伐の目途めどが立ったのか、俺たちのもとへ参加要請が届いたのだった。


「二人は今まで参加を断ってたんだよな?」


 確か前のボス狩りでは二人は参加していなかったはずだ。


「うん、一応は全員にメールが送られてくるんだけど、ボクたちのレベルじゃ力不足だったからね」

「今回は忍さんのおかげで参加できるだけのレベルを十分超えていると思います」


 二週間三人で狩りを続けたおかげで二人のレベルは50近くまで上がっている。


「だったら、一発目から『アレ』を使ってみんなの度肝を抜いてやらないか?」

「いいねそれ!面白そう!」

「しかしボスの攻撃力が分からない以上、二人が危険です」

「大丈夫だって、俺たちも十分強くなったんだから」

「あはっ、任せてよ!」

「仕方ありませんね…」

「よし!それじゃあ、頑張るぞー!!」

「「おおー!」」


 俺は美羽とともに勢い良く掛け声をあげた。

 しかし、委員長はそんな俺たちを見ながら微笑んでるだけだった。


「ほら、委員長も気合を入れないとボス戦乗り越えられないぞ」

「わ、私はいいですから」

「お姉ちゃんそんなことを言ってるから年寄り臭いって言われるんだよ」

「み、美羽!」

「ほら、その調子で『おおー!』」

「ぉ、ぉぉ…」


 蚊の飛ぶような小さい声をあげる。逆にそっちの方が恥ずかしくないか?


「恥ずかしがらないで!おおーーーー!!!」

「おぉ…」


 お、ちょっとは大きくなったな。


「ほらもっと、せーのっ!」


 俺は腕を振り上げる直前に美羽と目が合った。

 まるで何かを企んでますといわんばかりににやりと笑って目で合図を送ってきた。

 なるほど、そういうことか。了解だ。


「おおーーーーー!」


 委員長の声だけが部屋の中を木霊こだまする。

 委員長は自分ひとりしか声をあげなかったことに気付き、まるでりんごのように真っ赤になってしまい、美羽はそれを見て笑い転げている。そして俺もそれを見て笑ってしまった。

 しかし、俺はこのとき気付いていなかった。本当に罠に嵌められたのは委員長ではなく、俺だということに。

 俺はこの日すっかり拗ねてしまった委員長にひたすら謝り、一日中ご機嫌を伺うことに費やされてしまったのだった。

 美羽…恐るべし。

 しかしあの真っ赤になって恥ずかしがる委員長の姿にはそれ以上の価値があったから後悔なんてしてない。俺は委員長の恥ずかしがる姿を心のスクリーンショットに保存して生涯保護していくことを心に誓ったのだった。


 そしてついにボス狩り当日、黎明の借りたギルドホールにてネームレスさんから作戦の説明が行われた。


「知っての通り今回対象はミルダ坑道のトロールボス『ヘルガイズ』だ。あいつを倒さない限りプレイヤーは次の町へとたどり着くことが出来ないと言われている」


 そうなのだ。実はすでに他のフィールドは様々なプレイヤーたちの手により攻略されている。しかし、それでも次の町、次のマップへと続く道は発見されていない。だからミルダ坑道のボスを倒すことで次のエリアへ行くことができるのではないかと掲示板で噂されているらしい。俺は読んでいないけど。


「我々の事前調査によると武器は素手、特徴はその卓越した筋力による高い物理攻撃力、そして高い再生能力だ。今までのボスに比べてHPの自然回復速度がかなり速いため長期戦となることが予想される。特に注意しなければいけないのが目が赤く光った直後に、高威力の単体攻撃か周囲を薙ぎ払う範囲攻撃を行ってくる点だ。また、敵のHPがレッドゾーンに入ったときの行動パターンも確認できていない」


 そう、リザードマンボスに引き続いてなかなか討伐されなかった原因がこの高い再生能力だ。この一週間に何度か他のギルド連合も挑戦したらしいが、どの討伐隊もボスのHPを削りきることが出来ず、撤退を余儀なくされたらしい。


「そして今回のメインタンカーを務めるのは前回に引き続きセシリア。サブタンカーは…忍君、いけそうかい?」

「もちろん!その代わりPTメンバーを優先的に決めさせてもらってもいいか?」

「それはもちろんいいけれど、誰か希望するパーティーメンバーでもいるのかい?」

「ああ、イージスの晶師匠・美月・美羽、あとは優秀なヒーラーを二人付けて欲しいんだけど」


 師匠には既に話を通してある。『アレ』をするなら師匠の助けがあると安全度が跳ね上がる。


「そうだな、それなら…」

わたくしわたくしのギルドから一人入れましょう」


 えっと、この人は確か…


「ローズさん、君はメインタンカーであるセシリアさんの班だったよね?」


 そうだ。確かローゼンクロイツのギルドマスターローズさんだ。ヒーラーとしての腕はかなり優秀で、今までの神話連合によるボス討伐に死人が出ていないのは彼女のおかげとさえ言われている。そして現在確認されている唯一のリザレクション修得者だったはずだ。


「ええ、でもメインタンカーの班にはヒーラーが三人も配置されますし、セシリア様の堅さなら無理にわたくしがいなくても大丈夫ではないのかしら?ならば一瞬の油断が命取りになりかねない忍様の班に入った方が適材適所というもの。最も忍様がわたくしを信用してくださるならの話ではありますけれど」

「俺としては大歓迎だけど、姫はいいのか?」

「私も構わないわよ。他のヒーラーの方たちも優秀だからね」

「そうか、確かに今回の討伐はアタッカーの役割が重要になってくる。忍君が安心して火力を発揮できるならその方がいいかもしれないね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ