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第23話 パーティー結成

「そうですね。半日PTを組んでみましたが、ときどき間の抜けた行動を取るものの、私の指示にも嫌な顔せず素直に従ってくれましたね」


 おお、好感触っぽい。


「そりゃあ、委員長の指示は的確で分かりやすいし、最近まったくPT経験がなかった俺からしたら大助かりだったし」

「だから委員長って呼ばないでください。あなたは鳥頭ですか」

「す、すまん。指示を出す姿が様になっていたからなんか癖になってしまったみたいで…」


 そうなのだ。美月の指示を出す姿があまり委員長っぽいから心の中で委員長と言い続けたらすっかり癖になってしまったのだ。決して嫌がらせで言っているわけではない。

 でもこの話の流れからして、もしかするとこれからもPTに入れてもらえるかも。

 そう思った矢先、美羽から爆弾が投下された。


「もしかして忍、お姉ちゃんに命令されて喜んでたんじゃない?掲示板に忍は『M』だって書いてあったし」


 こちらにニンマリとした笑みを向けながらそんなことを言う。

 おい!このタイミングになんて余計なことを!お尻に悪魔の尻尾が生えているのが見えてるぞ!


「残念ですがあなたと組むのはこれで最後になります」


 ちょっ!


「な、ないから!美羽、せっかくいい感じだったのに余計なこと言うなって!」

「そうかなぁ?くんくん。お兄ちゃんからは確かに『M』の匂いがするんだけど」


 そういって、美羽は自分の唇を舐めるような仕草をしながら、まるで獲物を見つけた肉食動物のように目を輝かせてこちらを見た。

 こわっ!え、何その妖しい目の輝き?それって子供のする目じゃないですよね?


「美羽、はしたないですよ」

「はぁーい」


 委員長に窘められると、美羽はいつもの子供らしさを取り戻していた。なんだろう、心底ほっとしている自分がいる。


「さっき言ったのは冗談です。ふふっ、忍さんとのPTハントは別段不快ではありませんでしたから」


 おお、委員長が笑ったところ初めてみた。か、可愛いなおい。もしかしてこれが噂の聞くギャップ萌えという奴なのか。


「ただし今後セクハラのようなことが確認されれば、即刻出ていってもらうことになりますが」

「は、はい」


 気をつけよう…。


「しかし忍さんはいいんですか?今日もあれだけ狩ったのにLvが上がったようには見受けられませんでしたが、ソロで高Lvの狩場に行ったほうが効率いいんじゃないですか?」


 確かにソロ狩りは経験値効率がよかった。戦いは楽しかったし、どんどん強くなっていくのも面白かった。


「でももうぼっちは嫌なんだ…」


 そう、俺はついに前へと踏み出すときが来たんだ。

 PTハントの楽しさを知った今、もうソロ狩りに戻りたいとは思わない。

 一歩委員長たちの方へと踏み出す。


「は?」

「俺だって本当は仲間たちとわいわいやりながら狩りしたいんだ」


 一人で黙々と戦い続けるだけの日々。あれはあれで悪かったとは思わない。それでも。

 だから俺はさらに一歩を踏み出す。


「ちょ、忍」

「仲間と連携したり助け合ったり…したいんだ!」


 仲間の役に立っているという実感。戦術がうまく噛み合ったときの快感。ソロ狩りにはなかった本当に多くのものがPTハントにはある。

 だから俺は、さらにもう一歩二人へと踏み込み、本音をさらけ出した。


「だから俺もパーティーという輪の中へ入れてくれないか!」

「わ、わかったから、分かりましたから、怖いので少し離れてください」


 委員長が顔を引きつらせながら俺から距離を置くように後ずさった。

 こ、怖い?俺怖い?う…過去のトラウマが…。


「忍…キモすぎ…」

「ぐはっ!」


 俺はそこで力尽き、倒れ伏してしまった…。

 いや、ちょっと待て俺。美羽は女みたいな顔してても男キャラじゃないか。男にきもいって言われるくらい……うん、死のう。


「とりあえず、忍さんが色々と残念なのは『よく』分かりました。顔を上げてください」


 顔を上げると二人が心配そうにこちらを覗きこんでいる(注:忍目線)。


「うぅ…こんな俺でも必要としてくれるのか?」


 俺は縋るような思いで二人に聞いてみた。


「もちろんです。(消極的にではありますが。ほら、美羽も何か言って)」

「当たり前だよ。(だって、こんな面白いやつなかなかいないしね)」

「そ、そうか。そうなのか。」


 俺は何て幸せ者なんだ、いきなりこんなにいいPTメンバーと巡り合えるなんて。

 今日という日をヴァルキリーヘイムで初めて新しい仲間が出来た『仲間記念日』として俺は永遠に忘れることはないだろう。

 自分から前に踏み出してみて本当によかった。

 どう考えてもこれからの俺のゲーム人生は薔薇色だ。



 それから俺たちは道中雑魚敵とエンカウントしつつも町へと帰還した。


「それではこれから3人PTで行動するにあたって、分配方法を決めておきましょう。忍さんは何か希望はありますか?」

「俺は特にないかな。二人は今までどうしてたんだ?」

「使わない素材は全部お姉ちゃんに売ってきてもらってドロップしたお金と合わせて均等分配かな。後は自分の欲しいものがドロップしてたりしたら優先的にもらったりもしてたよ」

「なら、それでいいんじゃないか?俺はどうせ素材なんか持っててもNPCへ店売りするだけだし」

「「は?!」」

「それマジで言ってるの?」

「ん?ああ、昨日までプレイヤーとはなし…あ、いや、プレイヤーとの取引って何だか苦手だから」

「なるほどね。ずっとぼっちだったお兄ちゃんは初対面の人に話しかける勇気もなかったと」


 人がせっかく言い直したのに、そんなに正確に事実を読み取らないでくれ!というかそこまで読み取ってるなら察してくれ!


「あまりにも不憫ですね…。素材アイテムなんかはNPCに店売りしてもゴミのような値段でしか買い取ってもらえないのに…」

「う、やっぱりそうだったのか?」


 基本的にネットゲームって素材は店売りするより生産に使って欲しいから、店売りで得られるゴールドなんてあってないようなものなんだよな…。

 とはいえ、今まで大したお金を使わなかったから気にせず店売りにしてたんだよな。


「例えばこの『バジリスクの皮』は店売りだと100Gもしませんが、プレイヤー相手だと5kで売ることができます」


 そこまでとは…。素材たちよ、ごめんな。今までお前たちのことをゴミのような値段で売りさばいたり、持ちきれなかったものはその場に捨てていったりしてたよ…。


「えっと、それじゃあもしよかったらこれからも俺の分も一緒に売ってきて欲しいなぁ…なんて」

「構いませんよ」

「いいのか!」


 やった!言ってみるものだな!


「ええ、あなたが強くなることはパーティーにとってもプラスですから」

「お姉ちゃんに任せてたら戦いの準備から食べ物の準備まで全部やってもらえるよ?」


 そ、そんなことまでやってもらえるのか?


「なんだか、至れり尽くせりで申し訳ないんだが」

「気にしなくて構いません。その分忍さんには戦闘で頑張ってもらいますから」

「おう!そっちは任せとけ!」

「それにお姉ちゃんって、他人のだらしないところまで気になって自分で仕事を取り上げてまでしちゃうタイプだから気にしなくていいよ」

「美羽!」

「うひっ」


 委員長が叩くようなそぶりを見せると、美羽は目を瞑って舌をぺろりと出しておどけて見せた。

 やっぱり二人は姉弟なんだなぁ。それにしても


「委員長になるべくして産まれてきたような人だな」

「だから委員長って……はぁ、もういいです。忍さんおつむの方には何も期待できないことが分かりましたから」

「す、すまん」

「それでは私はこれからアイテムを換金してきますから、二人は先に宿を取っておいてください」


 え!まさか同室!?


「もちろん別室で」

「うん、分かった。行こう、お兄ちゃん」


 ですよね。



 それから俺たちは宿で部屋を取った。しかも俺はなぜか一人なのに三人部屋を取らされる。何でも一緒にご飯を食べてくれるらしい。なんとありがたいことか…。

 そしてとりあえず俺は委員長を待っている間にPK疑惑を払拭しようと掲示板を開いていた。

 そこに美羽からプライベートコールが入る。


「今何してるの?」

「ああ、今からちょっとPK板に書き込みしようかなって」


 思ったんだけど、これは酷いな…。


「へぇ~、面白そう!部屋行ってもいい?」

「ああ。二人の入室は『許可』設定にしてるから入ってきていいぞ」


 言った直後ドアが開いて美羽が入ってきた。

 いくらなんでも早すぎだろ。


「おじゃましまーす。今日一日だけでも結構色々目立つことしてたからね。一体どんな流れになってるの?」

「それが…、あまり口に出したくはないから、自分で読んでくれないか…。」

「しょうがないなぁ」


 美羽が向かいの椅子に座ってシステムウィンドウを操作し始める。

 俺も既に開いているPK掲示板の『狂刃きょうじん情報PKカウント-13kill!!!』に目を落とした。そう…今日一日でスレッドが一つも進んでいたのだ。

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