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第17話 一匹狼

「へぇ…ようやくまともな装備になったじゃない。あれ」


 ん?


「晶、これ……」

「これは……恐らく気付いていないんだろうな……」


 姫たちがステータスをゆびさして何かを相談している。


「な、何か?」

「あなた称号が付いてないわよ」


 称号?ステータスにそんな項目ないんだけど……。


「ほらここ、職業のところに触れてみなさい」


 姫に言われたとおり職業をタッチしてみる。

 すると、なんと新しいウィンドウが開いた。



称号を選択してください

 一匹狼の       敏捷+2

 下級         HP+5%

 中級         HP+10%

 モンスターハンターの 5%の追加ダメージ(一般モンスター)

 見習い        武器の攻撃力+1

 一般         武器の攻撃力+2

 リザードマン討伐隊  水属性に対する防御力+20

 修羅の        与ダメージ+25%、被ダメージ+25%



 何だこれ?こんなの前はなかったんだけど……。

 うーん…旧作はゲームシステムがかなりシンプルだったのに、今回はかなり色々と複雑に作りこんであるな。


「ほら、この中から一つだけ選んで付けることができるのよ。って何よこれ?」

「一匹狼に修羅……か。聞いたこと無いな」

「効果がすごいわね。取得条件は?」

「取得条件?」


 そんなの全然知らないんだけど。


「見たい称号に触れれば詳しい説明が出るわ」


 試しに一匹狼をタッチしてみる。



一匹狼の 敏捷+2

取得条件

 ゲーム内時間で30日間他のプレイヤーと会話をしない。

 ※注 ログアウトしている時間は含まれません。


《称号を『一匹狼の』にしますか?(Y/N)》



「「「ぶっ!」」」


 何だよこれ……何の嫌がらせだよ……。


「くくっ…これは……」

「あ、あきらったら笑っちゃ失礼よ……っ……」

「姫こそ必死に笑いを堪えているのが丸分かりだ…あははッ、もう駄目だ」


 二人とも顔が完全ににやけてしまっている。

 姫は必死に口の中で笑いを噛み殺し、師匠に至ってはもう遠慮なしに爆笑してやがる……。

 あの…本人としてはマジで笑えないんですけどコレ……。


「でもこれ使えるんじゃないか?」

「そりゃあ、敏捷が2も上がるんだから使えるでしょうけど」

「いや、そうじゃない。忍が情報掲示板でこれの取得条件を公開すれば、多少はPKの疑いも晴れるんじゃないなってね」

「ナイスアイデアね!それ採用だわ!」


 俺が30日間ぼっちだったってみんなに公表しなきゃいけないってこと?え、何それ?公開処刑?


「いいでしょ、忍。というか拒否権は認めないわ。後できっちり書いてもらうからね」


 暴君ぼうくん過ぎる……。とはいえ、俺がちょっと我慢すればギルドにかかる迷惑を少しでも拭い去れるのか。もう俺はぼっちじゃないんだし、ここは広い心で師匠の案を受け入れても……。何より噂を払拭するのは自分のためだし……。

 と、血の涙を流している心に必死に言い聞かせる。


「修羅の方は?この称号はヤバすぎない?色んな意味で」

「ええっと…」


 一度『一匹狼の』を閉じて『修羅の』を開いてみる。



修羅の 与ダメージ+25%、被ダメージ+25%

取得条件

 ソロで自分よりLVの高い敵を1000体以上殺害。

 ソロで自分よりLVの高いパーティーモンスターを100隊以上殲滅。

 ソロで自分よりLVの高いレアモンスターを討伐。

 ソロで自分よりLVの高いユニークモンスターを討伐。


《称号を『修羅の』にしますか?》



 パーティーモンスターっていうのは徒党ととうを組んで襲ってくるモンスターのことだよな。レアモンスターっていうのは何となく分かるけど、ユニークモンスターっていうのは何だ?

 ユニークなモンスター?面白そうだなそれ。そんなの倒したっけ?


「取得条件もまさしく修羅道ね……。こんなの分かっていたとしてもデスゲームの世界で取得するのは事実上不可能だわ。危険すぎる」

「それに効果も諸刃の剣だ。与えるダメージが増えればそれだけ敵の敵愾ヘイト値を稼ぐことになる。敵に狙われやすくなるうえ、受けるダメージが25%も増えるなんてリスクが高すぎる」

「そうね。それにこの情報を公開するのは止めましょう。もし、何かの理由で使わなきゃいけなくなったときに、被ダメージが増えるっていうのは知られていない方がいいわ」

「え、何で?」


 仲間も知ってた方がいいような気がするんだけど。


「先はまだまだ長いのよ。モンスター以外とも戦うこともあるかもしれないでしょう?システムウィンドウを操作できる状況ならいつでも付け替えられるわけだし」

「犯罪者プレイヤーか……確かに知られていなければ、ただ忍の攻撃力が上がったようにしか見えないだろうな。なら……」


 師匠がジークに目を向ける。

 それに続いて姫もジークに目の方へと視線を向けた。


「ん?なんだ?」

「なるほど、口封じ…しないとね?」


 姫が不敵な笑みを浮かべる。


「ちょま…!?勝手に聞かせといてそれは酷くないか!」

「さすが姫……目撃者には消えてもらうのか……」


 なんて恐ろしい人だ……。この人を敵に回すようなことだけはやめよう……。


「勝手に人をPKみたいに言わないで。ただちょっと、そう、『お願い』しているだけよ。ねぇそうよね?」


 目で語るとはこのことか……。

 姫の中では拒否権を与えない命令を『お願い』というらしい。

 そういえば、昔は俺もそんな『お願い』をいっぱい聞かされてきたな……。何だか思い出したら目からしょっぱいもんが出てきた……。


「い、言わない!釘を刺されなくても忍の不利になることなんて言うつもりないって」


 ジークが激しくきょどる。分かる!分かるぞその気持ち!


「そうね、もし『お願い』を聞いてくれなかったら…忍には他の店を紹介するし、マイスタークリスたちがもう二度とあなたに近づかないようにするから」

「な、なに!?なんて非道なことを考えつくんだ……」

「大丈夫よ。あなたが私の『お願い』を聞いてくれる限りはね」


 ジークってクリスとも知り合いだったのか?

 でも何でそれが脅迫の材料になるんだ?

 はっ!そういえばジークはロリコンだった!

 姫、ロリコンから幼女を遠ざけるなんて、なんて恐ろしいことを考え…あれ?ちょっと待って?それってむしろ正しいんじゃ……。


「脱線してしまったが、忍。とりあえず修羅はやめておこう。見ている俺たちも心臓に悪すぎる。ステータスを考えたら一匹狼か中級にしたらどうだ?」


 雑魚相手なら攻撃を食らわない自信があるけど、武器も強くなったし、何よりこれからは『独りじゃない』んだし、無理して『修羅の』称号を付ける必要はないな。


「うーん、そうだな。長所を伸ばすか短所を補うか……長所を伸ばしたほうが戦って面白いし、ネーミングが嫌だけど一匹狼にしようかな」

「それがいいわね。あなたにぴったりよ」


 それはステータス的にだよね?ネーミング的にぴったりってわけじゃないよね?


「もちろん両方よ」


 なっ!?ひどっ!しかもなんで考えてたことが分かるんだ……まさか俺が知らないだけでそんなスキルが……。


「忍…お前は考えてることが全部顔に出てるから」


 俺ってそんなに分かりやすいキャラだったのか…。ショックだ……。まるで一昔前の少年漫画の主人公みたいじゃないか……。

 まぁいい。とりあえず称号を付けよう。



《称号を『一匹狼の』にしますか?(Y/N)》



もちろんイエスを押してステータスを確認する。。



名前 忍

種族 ダークエルフ

性別 女

職業 一匹狼のソードマンlv46

 HP 402/402

 SP 442/442

 MP 500/500

 筋力 23

 体力 6

 器用 11

 敏捷 14(+2)

 魔力 13

 精神 12

 魅力 5

スキル スキル 両手剣Lv39 剛脚Lv35 気配察知Lv32 ガードインパクトLv42 ターンステップLv35 ダッシュLv38

ストックスキル 回復魔法Lv4

装備

 両手 鋼鉄のグレートソード(攻撃力52耐久240/240必要筋力20)

 頭 スチールサークレット(防御力14耐久度40/40)

 シャツ メッシュシャツ(蜘蛛の銀糸)(防御力4耐久度40/40)

 体 スチールブレストプレート(防御力27耐久度40/40)

 腕 スチールライトガントレット(防御力18耐久度40/40)

 足 スチールライトプレートブーツ(防御力18耐久度40/40)

 マント なし

 リング なし

 リング なし

 イヤリング なし

 ネックレス なし

 ファッションアバター1 海賊の眼帯

所持金 53,342G

貢献ポイント 4254P

所持アイテム

 クレイモア(攻撃力32耐久度60/60)×1

 キャンプセット

 下級ヒーリングポーション×10

 解毒ポーション×10

 麻痺消し×10

 眠気覚まし×10



 おお。ステータスが上がってる。

 それにしても一匹狼のソードマンか……取得条件さえ見ていなければ格好いいのに……。ちくしょう……。


 そして装備の変更をし終えた俺は、元の装備を25kでジークに買い取ってもらい、今後のことを姫たちと相談するため、宿へと戻ることになった。


「それじゃあ、修理でも何でもいいからまた来いよ」

「ああ、もちろんだ」


 心友しんゆうよ、と心の中で付け足す。


 そして俺たちはジークの店をあとにした。


 しかしその時の俺は気付いていなかった。大事なことを忘れていたことに……。

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