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3幕 天命

 ただ主要キャラが走る回。

 ………。

 …今更ギャーギャー騒いだりはしない。もう急展開に次ぐ急展開で頭がついてこないからな。

 だが、敢えて言おう。


 おかしい。


 俺は黒翼族の奴らに見送られて元の世界に帰った、筈なんだけど…。

 瞼を上げて見えた風景は、俺の部屋とは全く別物だった。


 RPGの神殿…と言えばイメージしやすいか。

 清潔感溢れる石柱、壁、床。この白さは大理石か?

 とにかく、部屋の一部が高級なんだから、この天井にぶら下がる巨大なシャンデリラも高級なんだろう。

 部屋の面積…いや、体積か。

 それはもう高校の体育館が入っちゃいそうな大きさだった。

 由香だったら失神モノだな…。


 そして、俺が立っているのはまたしても魔方陣の上。

 前回との違いがいくつかある。

 装飾然り、大きさ然りだが、最も目に際立つのは色だ。

 あちらが黒に対し、こちらは白。

 …清潔感溢れてんなぁ…。

 …ん?


「…おぉ…この方が…」

「我々を救ってくださる…」

「しかし、どんな人間かは分からぬぞ…」

「まだ若そうだしな…」


 ………。

 俺には、周りを囲まれる体質的な何かがあるのでしょうか。

 またしても此方の思惑の外で勝手にお祈りされて召喚されてなのだが。

 円形の魔方陣に、それを囲む者。

 さっきと同じで、全く違う状況。

 今回は、

 普通に人間に召喚されたようだ。


 ボーッとしてると、一人の女性がやってくる。

 長身に完璧なスタイル。

 純紅のドレスに、碧眼と真紅のセミロングの髪が映える。

 一言で言うなら、美しい。

 …何ですか、ここは。俺の嫁探索の舞台ですか。

 歓喜の余り思わず叫びそうになる衝動をぐっと抑える。

 女性は俺の膝元で片膝をつき、頭を下げる。




「勇者よ、よくぞ参られた」




 WAO。

 何だ、俺はさっき何て言われて召喚されたっけ?


《お待ちしておりました、魔王様》


 魔王。

 で、今回が勇者。

 魔王。

 勇者。


「…ハァ…」

「ッ? 如何したのだ勇者!?」

「あー、ごめんなさい。

 そんなに貴女が気張るほどの溜息じゃないから、あしからず」

「い、いや、その様に露骨に溜息をつかれては…」

「あ、ホント大丈夫なんで。お構いなく…」


「妾のお肌ケアが足りなかったのかと不安になるではないかーーーーーーーっ!!!」


 そしてダーーーーッと、このアホみたいに広い部屋を走って出ていった。

 慌てて女性を追う魔法陣担当の方々。

 ……。


「へ?」


 ???

 クエスチョンマークが俺の頭上を踊っている気がする。

 とりあえずよく分からない人と理解はして、俺は近くでぽかんとしている衛兵に話しかける。





 □■□■□■□■□■ 





「何でしたっけ…勇者?」

「うむ、その通りだ。魔を討つ者、勇者」


 俺は衛兵の親切な案内でこの施設の中を歩く。

 どうやらここは城っぽい場所のようだ。

 廊下の豪華な造りもそうだが、金縁の窓から見える外の風景の高さ、そして通路の角から窓に映る建物の外面からしても確実だろう。

 デカさは冗談抜きで東京ドーム4個くらい。

 嘘じゃない。断じて嘘じゃない。俺も最初に窓からこの城を覗いた時は素で「うわぁ…」と声を漏らしてしまった。

 その時の衛兵さんのショックそうな顔といったら…。

 ……。


「そういや、おっさん名前は?」

「おお、気が利かなくて申し訳ない。

 私はアルベダ国の王城を守護する『アウシュビリア部隊』の隊長、コーネリアだ」


 衛兵じゃなかった!

 よ、良かった。隊長か…余計な事を言っていたら更に心をズコズコに踏み荒らしかねなかった。

 と、歩いていたら。


「ここだ」

「デカっ!」


 視界を奪っているのは、巨大な扉。

 廊下の端にある、それはそれは大きな出入り口の前に俺とコーネリアはいる。

 …さっきの俺が召喚された部屋の扉もまぁまぁデカかったが、ここまでじゃなかった。

 ホント、凱旋門近くあるんじゃないかってくらいデカい。


「ここにさっきの人いんのか?」

「その通りだ。

 …勇者殿に言う言葉ではないかもしれないが、彼女の前では口を慎むのだぞ?

 あんなんでも一応女王なのだから」

「女王ッ!? あの人一国の主の奥さんなの!?

 そして口を慎まないオッサンに痺れる憧れるぅっ!」

「うむ。それでは、私はこれにて退散する事にしよう」

「え、アンタは入らないのか?」

「私も勇者殿の儀式を見届けたいのだが、どういう天命か、国の東で魔族の襲撃が起こっているらしくてな…。

 すぐに部隊を編成して迎撃せねばならんのだ…」

「……。

 …そっか」

「うむ、それでは失礼させて頂く」


 そう言って、親しみやすそうな笑顔のまま来た道を戻っていった。

 俺は暫く、その場に突っ立っていた。

 …魔族の襲撃、か…。

 …誰の判断なんだろうな…。

 妙な蟠りが、心を燻る。

 それとは別にもう一つ気になる事もあった。

 …儀式って、何だろう…?

 ……まぁ、とにかくこの扉を越えなければ話は進まなそうなので。


 振り返る。

 俺は右手を前に出す。

 金の装飾が施された白扉の取っ手を、堅く握る。

 すると、全く力を入れていないはずなのに、扉は音を立てずに開き、俺を迎え入れた。

 俺は部屋に足を踏み入れる。




 レッドカーペット。

 VIPが歩を進める赤の絨毯。

 高速道路の幅くらいあり、そして奥行きが尋常じゃないくらい長い部屋の中央を、赤の線が堂々と占拠していた。

 そしてそれから足一つ分はなれて得よう側に立つ兵士、スーツ、貴族(っぽい服装の方々)。

 …ここ、通るのか…。

 重い足取りで、部屋を進む。

 ……。

 ………。

 …まぁ、勇者っつーんだから、品定めする為にジロジロ見られるだろうなって事は覚悟してた。

 …だけどさー、睨む事ないと思わん?

 やめてくださいよ…。ボクはか弱い…そう、子羊ちゃんなんですよ。そんな突き刺すような視線で見られたらプルプル震えちゃうんですよ。

 もー…。うわ、この人イカツいなぁ…。何で顔に桜吹雪の刺青してんだよ…。絶対場違いだよ…。

 わ、こっちのオッサンは、え、え? 吐いてる? 吐いてるの? え、勇者を待ってんのに何で飲んだくれみたいにゲーゲー吐いてんのよ。 クセぇ。

 …オイ何でコイツぼそぼそメロンパン食ってんだよ!? もう俺なんかどうでもいいんだろコイツ! あ、おいテメっ! 目ぇ逸らすな! 今更シカトこいたって遅いんだよ! オイ!

 …。

 ……。

 ………うっ!


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!」


 ダダダダダダダダダーーーーー!!!


「走った!?」

「泣いた!?」

「脳に障害がある子なんじゃないの?」


 それは失礼だろっ!?

 そう思いつつも涙を零して俺は驀進した。

 うぅっ、心も折れるよぉぉおっ!><。゜

 俺は走った。

 走って、走って、走って…。

 ……。


「長っ!!!?」


 どんだけ走ってんだ俺!? 二百メートルは軽く走り抜けたぞ!?

 ホラ、俺の入ってきた扉もあんなに遠く…!

 ……。

 あれ?

 おかしいな。

 俺、こんなに足速かったけ?

 驚き、そして疑問。

 しかし、それに思考を巡らせている時間は無かった。

 俺は速度を落とす。

 そして、立ち止まり、見上げる。

 数段の段差。

 レッドカーペットの、終着点。

 そこには。


「先ほどは、すまなかったな、勇者よ」

「…別に気にしてませんよ」


 俺は巨大な椅子の前で頭を下げる女王様に向けて首を横に振る。

 上げられた顔は、なんか目を丸くするほど。

 美しかった。


「…まだ、名前を名乗っていなかったな…」


 女王様は胸の前に右手を添え、目を瞑る。

 まるで、聖歌を届ける聖母のような、優しい顔。

 そして、その名を口にする。


「妾の名はルミナル・ホレイト。このアルベダ国を責任する女王だ」

 そろそろタイトルの意味が分かると思います。


 感想とか書いてくれると発狂する程嬉しくなるので是非お願いします。

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