第5話 うちの恋人の新しい一面は度し難いほどに開放的でした
予行演習の朝、三人でベッドに転がってた記憶がまだ鮮明に残ってる。
翔子のぎこちないけど必死な口の動き。
恋歌ちゃんの「翔くん、私にも♡」って甘えた声。
そして最後まで翔子が「ここはダメ」と守った謎のライン。
あれは本当に「悠真くんの本番まで取っておく」ってことだったんだろうか。
まあ、経験少ないって言ってたし、俺は深く考えなかった。
考える余裕もなかった。だってその後、恋歌ちゃんと二人でシャワー浴びて、朝ごはん食べて、帰るまでずっとイチャイチャしてたんだから。
俺は戸惑いつつも完全にハーレムを楽しんだだけだった。
得も言われぬ極上の甘美が全身を満たし、これまでの快楽の常識を完全に上書きしてしまった。
「翔吾、本当にありがとう。本番の日を楽しみにしてるね。今日の事、悠真くんに報告しておくから」
「ああ、分かった」
「それと、さ」
「うん?」
「まだ色々と慣れていきたいってのもあるから、本番の日がくるまでさ……また練習の日、設けてもいい?」
「……」
「ダメ?」
「まあ、どうせ一回切りにはならないだろうから、恋歌ちゃ……いや、分かったよ。じゃあ日取りは後ですり合わせしようか」
恋歌ちゃんさえ良ければ……って言いそうになってやめた。
なんだか彼女を免罪符にしてハーレムを楽しみたいって言ってるような気がして憚られたからだ。
いやまあ、今更いいわけがましいが……。
「うん、ありがとう。気を付けてね。これからデート?」
「ああ、そのつもりだ」
正直、今日の俺は恋歌ちゃんと2人きりで過ごしたい気持ちでいっぱいだった。
俺の中の意識を色々とメンテナンスする必要がある。
「レンたんもありがとう。本当に感謝してる」
「私も楽しかったよ! 翔くん次第だけど、私はまた3人で色々してみたい。それに、翔くんと翔子ちゃんがシテるところ見て、凄く興奮しちゃった♡ 私、本格的にそっちの属性あるみたい」
なんて言ってる俺の恋人。恋人の新しい一面を発見するのは楽しみでもある筈だが、これに至っては複雑極まる気分だった。
◇◇◇
で、現在。
今日は日曜日なのでそのまま恋歌ちゃんとデートをすることになった。
翔子は悠真くんと電話して、ゆうべの事を報告するつもりらしい。
なんでもそういう「寝取らせ報告」なるプレイが存在するんだそうな。
とにかくそういうわけで翔子とはその場でサヨナラをし、俺は恋人との時間を過ごすことにした。
「翔くん、夕べのご感想は?」
恋歌ちゃんが俺の腕に絡めながら、悪戯っぽく上目遣いで聞いてくる。
駅前の映画館でラブコメ見て、軽くランチ食べて、今は川沿いの遊歩道をのんびり歩いてる。
冬の陽射しが柔らかくて、恋歌ちゃんの栗色の髪がキラキラ光ってる。天使そのものだよ、マジで。
「感想って……ストレートすぎるよ恋歌ちゃん」
俺は苦笑いしながら、昨夜の記憶をフラッシュバックさせる。
翔子の胸で挟まれて、恋歌ちゃんが腰を振って、二人に交互にキスされて……。
股間が疼いてくるのを必死に抑える。
そりゃ快感が単純に2倍になるわけだし、凄まじい体験だったのは間違いない。
「だって気になるもん。翔くん、翔子ちゃんのこと気持ちよくしてあげられた?」
恋歌ちゃんは俺の反応を見て、くすくす笑ってる。
この子、本当に末期だ。俺が他の女に欲情してるのを想像するだけで興奮するって、付き合ってから知った隠れ性癖がヤバすぎる。
「気持ちよく……ってか、翔子の方が俺を責めてきてた気がするけどな。っていうか、目の前で見てたでしょ?」
「えへへ、そうだよね~。翔子ちゃん、すっごく頑張ってたもん。私も横で見ててドキドキしちゃった」
恋歌ちゃんが俺の腕をぎゅっと抱きしめてくる。柔らかい胸が当たって、理性が揺らぐ。
「翔くんは? 翔子ちゃんの胸、気持ちよかった?」
「気持ちよかったに決まってるだろ……デカくて柔らかくて、挟まれた瞬間ヤバかった」
正直に答えると、恋歌ちゃんの目がさらに輝く。
嫉妬してるんじゃなくて、興奮してるんだこの子。
「私も負けないように、もっと頑張らないと♪」
「恋歌ちゃんはもう十分すぎるくらい……」
俺は照れ隠しに恋歌ちゃんの頭を撫でる。
でも本音を言えば、あの三人プレイは本当に極上だった。
恋歌ちゃんだけでも最高なのに、翔子の豊満な体が加わると快楽の次元が違う。
翔子は最後まで一線を守ってたけど、だからこそ逆に焦らされて頭おかしくなりそうだった。
「翔子、結局本番は悠真くんまで取っておくって言ってたよね。あれ、どう思う?」
恋歌ちゃんが少し考えて、俺の顔を覗き込む。
「うーん、私的には翔子ちゃんが翔くんとしたいならしてもいいと思うけど……でも翔子ちゃん、彼氏のこと本気で好きみたいだし、尊重してあげたいかな」
本気で好き、か。
確かに翔子は「悠真くんのためなら」って真剣な顔してた。
でも、昨夜の翔子の目、なんか熱っぽくて、俺のこと見てるときの方が本気に見えた気が……いや、気のせいか。
流石に自意識過剰だろう。
「それにさ、翔くん」
恋歌ちゃんが急に立ち止まって、俺の胸に顔を埋めてくる。
「私、翔くんが翔子ちゃんを抱くところ、ちゃんと見てみたいかも」
「またそれかよ……」
「だって想像しただけで熱くなっちゃうんだもん。翔くんが他の女の子に欲情して、私の知らない顔見せて……それで最後は私に戻ってきてくれるの、最高にドキドキする」
恋歌ちゃんの声が甘く震えてる。
俺は思わず彼女を抱き寄せて、耳元で囁いた。
「君がそんなこと言うから、俺も今すぐしたい気分になってるぞ」
「えへへ、じゃあこの後私の家行こ? 親まだ帰ってこないし……二人きりで、昨夜の続きしよ♡」
二人きりで、か。
でも頭の片隅で、翔子の「今週末も予行演習しようよ」って言葉がよぎる。
悠真くんの本番はいつになるんだろうな。
もしかして、翔子は処女まで俺とのプレイで……?
なんて考えが頭をよぎり、奇妙な興奮が体を支配しそうになる。
それを振り切って目の前の恋人を力強く抱きしめた。
「きゃっ♡ 翔くん、興奮してるの?」
「正直、恋人の新しい一面に対して思うところがある」
「うん……。翔くんがイヤなら、いつでもやめていいからね、って、私が言うのも変だけど」
「いや、半分は恋歌ちゃんの性癖を満たすためってのがあるから、俺が受け入れるかどうかだと思うけど……正直なところをいうと、よく分からない感情でイラついてる」
「分かってる……翔くんの苛立ち、私にぶつけて」
「え?」
「今夜は、めちゃくちゃにしてほしい。いつもの優しくてたっぷり愛してくれるヤツも大好きだけど、もっとめちゃくちゃに、もっと情熱的に、戸惑いとか、ぶつけどころのない感情とか、それを整理できない苛立ちとか、そういうの全部、私の体に八つ当たりしてほしい……」
「恋歌ちゃん」
「私、そういう激しい翔くんも、見てみたい」
「分かった。恋歌ちゃんの部屋に行こう。そこでやったことないヤツ、全部やってやる」
「えへへ、楽しみ」
そんな新しい情熱が頭と体を支配、俺は彼女の手を引っ張って目的地へと急いだ。
その日の夜は、恋歌ちゃんの聞いた事もないような凄まじい甘い叫び声を聞くことになるのだった。




