7.ピピン王国
アイカ達はピピン王国にたどり着いた。
ピピン王国──かつて魔王討伐の使命を帯びて召喚されたこの地に、アイカは久しぶりに足を踏み入れた。
アイカ「ピピン王国か……懐かしいなぁ」
風に乗って懐かしい匂いが鼻をくすぐる。
あの時、王に命じられ、魔王を倒すため旅立った場所だ。
あれから、ずいぶん時が経った。
アイカは昔の仲間を思い出して嬉しそうに
アイカ「……そうだ。褒美、まだもらってなかったな」
苦笑いを浮かべながら、過去の記憶を辿る。
しかし、かつて栄華を誇った王国の街並みは見る影もなかった。
人々は虚ろな目をし、まるで魂を抜かれたようにさまよっている。
かつての活気は消え失せ、廃墟のような静けさが王国を包んでいた。
アイカは驚いていた。
アイカ「……こんなことになっているなんて」
その声に、一人の兵士が振り返った。
兵士の目には、一瞬にして生気が宿る。
兵士「あなたは……勇者様!? 本当に!?」
兵士「アイカ殿!!」
アイカはこいつ誰だとおもいながら
アイカ「……ああ。久しぶりだな」
兵士は興奮しだした。
兵士「私を覚えておられるのですか!!」「感激です!!!」
兵士「ハラヤです。すべては、魔王軍のハラヤのせいなんです……!」
切実な言葉が胸に刺さる。
兵士「奴に城を奪われてから、魔族がこの地を支配するようになった。人間は道具のように扱われ、城下町は地獄のようです……!」
怒りが、アイカの胸に炎を灯した。
アイカ「許せない……!」
拳を強く握りしめ、振り返って叫んだ。
アイカ「サクナ、ついてきてくれ!」
アイカ「道はわかる。案内できる!」
サクナ「うん!」
サクナの力強い返事とともに、二人は駆け出した。
目指すは、魔族の巣窟と化したかつての王城。
途中、魔族たちが次々と襲い掛かってくる。
しかし、アイカの拳は一体一体をなぎ倒し、サクナの鋭い剣技が援護した。
やがて、巨大な王城の門が姿を現す。
サクナ「ここが……!」
サクナが前に進み出て、剣を構え、一閃。
重厚な扉が真っ二つに斬り裂かれ、道が開けた。
サクナは剣を納め、振り返った。
サクナ「行こう、アイカ」
アイカは相変わらずすごい剣裁きだなと感心した顔をしている。
アイカ「ああ、ナギの件とピピン王国といいあいつだけは絶対ゆるさない。」
アイカとサクナは、王城へと足を踏み入れた。
ハラヤとの決戦が、いま始まる──。