40.勇者は、なんでもう一度英雄になろうとしてんの?
町の中心にある小さな食堂。そこは、異世界の料理を楽しめる不思議な場所として、
町の人々に大人気だった。毎日笑顔と香ばしい匂いで溢れ、いまや町のシンボルのような存在になっている。
サクナ「ありがとう、ございました。」
閉店の時間。サクナは最後のお客さんを見送り、扉をそっと閉める。
アイカ「で、なんでお前が生きているんだ。」
振り返ると、そこに立っていたのはかつて魔王軍四天王と恐れられたメイメイだった。
メイメイ「この世界に未練ができてな、死の世界から舞い戻ったんだ。」
アイカ「なんでも、ありだよな、お前ら(魔王軍)」
アイカは呆れながらも、どこか懐かしそうに笑う。
メイメイ「魔王が倒されて、魔族狩りが行われるようになった。頼む、魔族狩りを辞めさせてもらえないか。」
アイカ「わるいなぁ、もう俺たちは表舞台には出ない。本来、俺たちはこの時間軸にいてはいけない人間なんだ。」
メイメイはそれでも諦めなかった。
メイメイ「サクナ姫!!一度、魔族になってわかったはず。魔族も人間もみんな同じなんだ。見た目だけが違うだけで。」
サクナ「ええ、みんな優しかった。ごめんなさい、私たちにはもう何も権力がないの。」
メイメイ「いいえ、サクナ姫!!あなたならできる。先日、この時間軸のあなたは魔族の男に殺された。ダメなことだとわかっている。あなたがその穴を埋めれば、あなたは王女に戻れる。あなたは世界を救った英雄だ。きっと世間はあなたの言葉を聞く。」
メイメイ「わがままなことを言っているのはわかっている。どうか、同胞の命を救ってほしい。」
深く頭を下げるメイメイ。
サクナは静かに目を閉じ、そしてゆっくり開いた。
サクナ「アイカ、私はたすけたい。」
アイカは少し驚いたように、しかし優しい笑顔を浮かべた。
アイカ「サクナがしたいなら、それでいいと思うよ。」
こうして、食堂のあかりの中で、新たな希望の物語がそっと動き始めた。
アイカはメイメイをにらんだ。
アイカ「で、メイメイ。なんか都合よすぎないか、まさかお前がこの時間軸のサクナを殺してないだろうなぁ?」
メイメイ「しらない、たまたまだよ。」
メイメイは首を横に振った。




