4.ラララー王国
馬車の中、薄暗い車内でサクナとアイカは静かに話を交わしていた。
外の景色はゆっくりと流れていく。
アイカは少し顔をしかめながら口を開く。
アイカ「まず、メイメイっていう魔王の手下を倒しに行くんだよね。」
言葉の端に緊張が滲んでいた。覚悟を決めたようでいて、
その瞳はまだ不安で揺れていた。
サクナはうなずき、静かに言った。
サクナ「うん。私たちの王国の隣にある、ラララー王国にいるらしいよ。」
彼女の声は落ち着いているが、その背後に秘めた決意が感じられた。
アイカ「メイメイ……どんなやつなんだろう。」
呟くように言ったその声は、不安だった。
翌日、ラララー王国の広場に降り立った二人は、早速情報収集に動き出す。
サクナは冷静に時計台を指差した。
サクナ「まずは情報を手に入れよう。手分けして探そう。3時間後にこの時計台の前で集合ね。」
緊張を隠せないアイカは小さく頷いた。
アイカ「わかった。」
心のどこかで、不安を打ち消すように。
二人は別れてそれぞれの道を進む。
サクナの前に突然声がかかった。
男「おお! 強そうだな。俺はギィス。お嬢ちゃん、協力してくれねぇか?」
ギィスの目は鋭く光り、その口調には得体の知れない威圧感があった。
ギィス「俺たちは、メイメイを倒すための組織だ。」
警戒心を抱きつつも、サクナは男の後をついていった。
ギィス「俺たちは、人間こそがすべての種族の頂点だと考えてる。」
その言葉にサクナは戸惑いを隠せなかった。
ギィス「けど、メイメイがこの国を侵略してから、エルフもドワーフも小人も――すべての生き物が平等になっちまった。……許せねぇ。」
サクナは言葉に詰まった。
「それって……本当にいいことじゃないの?」
心の奥底から疑問が湧き上がった。
ギィスは冷たい笑みを浮かべて言い放つ。
「平等なんて、幻想だ。人間様が支配する、それが自然の摂理だ。」
その言葉に、サクナの胸は締め付けられた。
ギィスの拠点にて。
サクナは深く息をついた。
ギィス「今日、俺たちはメイメイを倒す。」
その言葉にサクナは驚きを隠せなかったが、同時に胸の中に薄い光が差し込むような感覚を覚えた。
一方、酒場の隅でアイカは一人の男と向き合っていた。
アイカ「へぇ、お前の名前、メイメイっていうんだ。なんか聞き覚えがあるような……」
メイメイは柔らかな笑みを浮かべ、軽く首を振った。
メイメイの能力、記憶操作。アイカはメイメイが魔王軍四天王であることを忘れさせられている。
メイメイ「気のせいだよ。」
アイカの胸には、言葉以上の温かみが伝わってきた。
メイメイは手にした串カツを差し出す。
メイメイ「これはこの国の名物、串カツだ! どうぞ。」
アイカは戸惑いながらも手を伸ばした。
「ありがとう。」
口に運ぶと、思わず目を見開いた。
「うめぇ!!」
自然と笑みがこぼれた。
アイカ「この国、いいなぁ……すべての種族が平和に暮らしてて。」
メイメイの表情は穏やかで、どこか遠くを見つめているようだった。
メイメイ「この国に住むすべての生き物は、俺の家族だ。」
その言葉は重く、アイカの胸に深く刺さった。
アイカ「……お前みたいな人間が、人の上に立つべきなんだな。」
だが、その瞬間、酒場の外から悲鳴が轟いた。
二人は顔を見合わせ、すぐに外へ飛び出した。
街は混乱に包まれていた。
ギィスたちが暴れ、建物を破壊し、人々が逃げ惑っている。
ギィス(アイカを見つけ)「おお、相棒! 手伝ってくれるか?」
アイカの心臓は激しく鼓動した。
「……ああ。」
反射的に答えた。
ギィスが小人に剣を向ける。
メイメイは素早く動き、その剣を弾き返した。
二人の視線が激しく交錯する。
ギィス「化け物……今日で、お前も終わりだ。」
メイメイ「ギィス! なぜわかりあえないんだ!!」
怒りと悲しみが入り混じるメイメイの瞳に、揺るがぬ決意が宿っていた。
背後には人間たちが控え、その中にサクナの姿もあった。
メイメイ「背中はあずけたぞ、相棒。」
アイカは拳を強く握りしめ、サクナに向かって走り出した。
サクナとアイカの視線がぶつかる。
サクナ「……なんで、メイメイの味方してるの?」
アイカの表情が暗く変わる。
「メイメイ……あっ! 魔王軍四天王の……」
記憶の断片が鮮明に蘇り、心の中で嵐が巻き起こった。