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3.仮面の男は、なんで俺のこと知ってんの?

突如、王の間にて、魔王軍四天王の一人・ハラヤが姿を現した。

魔王軍四天王ハラヤは叫んだ。

ハラヤ「サクナ姫をさらいに来たぞ!」

ハラヤは歯茎をだして笑った。


その声を聞いた瞬間、ナギの脳裏に過去の記憶が鮮明によみがえった。

かつて自分が誘拐されたときの、あの恐怖と混乱。


一方、サクナ姫の胸にも苦い記憶が突き刺さる。

貴族たちが陰で囁いていた声が、耳の奥で響くのだ。

「男の子に生まれていたらよかったのにね――」


魔王軍四天王には一人一人に特殊な能力を魔王から与えられている。

ハラヤの能力は“ネガティブ”。

ハラヤを視認すると、強制的に自らの「傷ついた過去」を思い出させられる。


ハラヤ「魔王様の命令で、」

ハラヤ「歴代最強の剣士、サクナ!お前と勇者を組ませるわけにはいかない!」

ハラヤは目を大きく開く。


そう言い放つと、ハラヤは突然、アイカの横にいた。

ナギの元まで歩き出して、ナギに手を伸ばした。

その手が彼女の腕を掴む。


ナギ「きゃー」

可愛らしい声だ。


ハラヤ「魔王様!!サクナ姫を捕らえました。魔王城に戻してください!!」

ハラヤの下に魔法陣があらわれて。光りだす。

次の瞬間、ハラヤとナギの姿はその場からかき消えた。


アイカは驚きのあまり叫んでしまった。

アイカ「ナギ!!」

アイカ「ナギがいない」


混乱する一同。事態を理解できない王が声を荒げる。

王「どういうことだ?」


ジミーは冷静に答える。

ジミー「あの野郎……ナギとサクナ姫を間違えたんです!」

ジミー「まぁ、結果オーライですね」


アイカ「どうして、こうなるの……?」

アイカは膝をつき、絶望の色に染まっていった。

アイカ「サクナ……」

だが、その瞳には怒りの炎が宿っていた。

アイカ「魔王を倒して、ナギを助けるぞ!」

拳を強く握りしめるアイカの決意に、サクナも力強く頷いた。

サクナ「ああ!もちろんだ!」


その瞬間――

重く軋む音と共に、部屋の扉が開いた。

そこに立っていたのは、仮面をつけた謎の男だった。

全員が警戒する中、ジミーが男を指差す。

ジミー「貴様は誰だ!」

ジミー「魔王軍の関係者か?」


仮面の男「名乗る気はない。……だが、安心しろ。アイカ、サクナの味方だ。」

サクナ「アイカ、君の知り合いかい?」

アイカ「……いいえ。見たこともない。」

サクナ「でも、なぜだろう……君と似た雰囲気を感じる。」


仮面の男は躊躇なく話を続けた。

仮面の男「魔王城には強力な結界が張られている。

その結界を解除するには、各地に散らばる魔王軍四天王を倒さなければならない。」

仮面の男「手分けして動くぞ。俺は“ユウキュ”と“リョウキ”を倒す。

お前らは“ハラヤ”と“メイメイ”を任せる。」


一瞬の沈黙。


アイカが疑いの目を向ける。

アイカ「待て。お前が何者かもわからない。簡単には信じられない。」


仮面の男はゆっくりとアイカの目を見据え、静かに言い放った。

仮面の男「……ナギを助けられるなら、この世がどうなろうと構わないんだろ?」


その言葉に、アイカの心が揺れた。

アイカ「ナギは、この世界での俺の唯一の希望だ。正解だ」

アイカ「……ああ。……うさんくせぇけど、信じる。」


そのころ、魔王城――


荘厳な魔王の間。

静寂の中、魔王は一枚の写真をじっと見つめていた。

その写真には、サクナ姫の姿。

金髪碧眼で整った顔立ち。身長も高い

そして、ハラヤが誘拐してきた女の子は黒髪黒目の小柄な女の子。

魔王の目の前に立つのは四天王の一人・ハラヤ。

彼の肩は上下し、目は見開かれ、額には汗がにじんでいる。


魔王「……この娘が、サクナ姫に見えたのか?」

写真と、連れてこられた少女――ナギを交互に見比べながら、魔王は低く尋ねた。


ハラヤは明らかに動揺し、息を荒げて答えた。

ハラヤ「……似ていますね……」「目の数とか、鼻の数とか」


魔王は額に手を当て、深いため息をついた。

魔王「……まじか。じゃあ、しかたないなぁ……」

魔王「金髪と黒髪、全然ちがうけどなぁ」


重い空気が漂う中、魔王は軽く手を振った。

魔王「おい、タイガー。この少女を牢屋に入れとけ。」


いかつい男が現れた。

タイガー「はぁ! わかりましたっ!」


ナギはその場でへたり込み、身体を震わせていた。

目の前のすべてが怖くて、力が入らない。

そんなナギに、タイガーは少し困ったような声を出した。

タイガー「……しかたないなぁ」


そして、唐突に――

タイガー「いないいない……ばぁっ!」

彼は大真面目な顔で「いないいないばあ」を披露した。


……不細工だった。


ナギはますます震えた。

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