表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に残った、ただ一人  作者: 梅道
第1章 魔王退治
3/54

3.仮面の男

魔王軍四天王の一人・ハラヤが姿を現した。


ハラヤ「サクナ姫をさらいに来たぞ!」


その声を聞いた瞬間、ナギの脳裏に過去の記憶が鮮明によみがえった。

かつて自分が誘拐されたときの、あの恐怖と混乱。


一方、サクナ姫の胸にも苦い記憶が突き刺さる。

貴族たちが陰で囁いていた声が、耳の奥で響くのだ。

「男の子に生まれていたらよかったのにね――」


魔王軍四天王には一人一人に特殊な能力を魔王から与えられている。

ハラヤの能力は“ネガティブ”。

彼を視認できる距離にいる者は、強制的に自らの「傷ついた過去」を思い出させられるのだ。


ハラヤ「歴代最強の剣士、サクナ!お前と勇者を組ませるわけにはいかない!」


そう言い放つと、ハラヤは突然、ナギに手を伸ばした。

その手が彼女の腕を掴む。


ハラヤ「ドローン!」


次の瞬間、ハラヤとナギの姿はその場からかき消えた。


アイカ「ナギ!!」


混乱する一同。事態を理解できない王が声を荒げる。


王「どういうことだ?」


ジミー「あの野郎……ナギとサクナ姫を間違えたんです!」


アイカ「どうして、こうなるの……?」


アイカは膝をつき、絶望の色に染まっていった。


アイカ「サクナ……」


だが、その瞳には怒りの炎が宿っていた。


アイカ「魔王を倒して、ナギを助けるぞ!」


拳を強く握りしめるアイカの決意に、サクナも力強く頷いた。


サクナ「ああ!もちろんだ!」


その瞬間――


重く軋む音と共に、部屋の扉が開いた。


そこに立っていたのは、仮面をつけた謎の男だった。


全員が警戒する中、ジミーが男を指差す。


ジミー「貴様は誰だ!」


仮面の男「名乗る気はない。……だが、安心しろ。アイカ、サクナの味方だ。」


サクナ「アイカ、君の知り合いかい?」


アイカ「……いいえ。見たこともない。」


サクナ「でも、なぜだろう……君と似た雰囲気を感じる。」


仮面の男は躊躇なく話を続けた。


仮面の男「魔王城には強力な結界が張られている。

その結界を解除するには、各地に散らばる魔王軍四天王を倒さなければならない。」


仮面の男「手分けして動くぞ。俺は“ユウキュ”と“リョウキ”を倒す。

お前らは“ハラヤ”と“メイメイ”を任せる。」


一瞬の沈黙。


アイカが疑いの目を向ける。


アイカ「待て。お前が何者かもわからない。簡単には信じられない。」


仮面の男はゆっくりとアイカの目を見据え、静かに言い放った。


仮面の男「……ナギを助けられるなら、この世がどうなろうと構わないんだろ?」


その言葉に、アイカの心が揺れた。


アイカ「……ああ。……うさんくせぇけど、信じるしか手がねぇ」


そのころ、魔王城――


荘厳な魔王の間。


静寂の中、魔王は一枚の写真をじっと見つめていた。


その写真には、サクナ姫の姿。


そして、目の前に立つのは四天王の一人・ハラヤ。


彼の肩は上下し、目は見開かれ、額には汗がにじんでいる。


魔王「……この娘が、サクナ姫に見えたのか?」


写真と、連れてこられた少女――ナギを交互に見比べながら、魔王は低く尋ねた。


ハラヤは明らかに動揺し、息を荒げて答えた。


ハラヤ「……似ていますね……」


魔王は額に手を当て、深いため息をついた。


魔王「金髪と黒髪、全然ちがうけどなぁ」

魔王「……まじか。じゃあ、しかたないなぁ……」


重い空気が漂う中、魔王は軽く手を振った。


魔王「おい、タイガー。この少女を牢屋に入れとけ。」


タイガー「はぁ! わかりましたっ!」


ナギはその場でへたり込み、身体を震わせていた。


目の前のすべてが怖くて、力が入らない。


そんなナギに、タイガーは少し困ったような声を出した。


タイガー「……しかたないなぁ」


そして、唐突に――


タイガー「いないいない……ばぁっ!」


彼は大真面目な顔で「いないいないばあ」を披露した。


……不細工だった。


ナギはますます震えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ