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2.勇者は、なんで魔王討伐することになってんの?

囚われていたナギを助け出したアイカ達は奴隷市場の入り口付近にいた。

するとこの国の兵たちが、アイカたちの目の前に現れた。

「探しましたよ。姫様」


サクナは兵士の名前を叫んだ。

サクナ「ジミー」


大柄な男がこちらに歩み寄ってくる。

ジミー「姫様!? どうしてあなたがこんなところに……!」


サクナは静かに、しかし確固たる意志を込めて言った。

サクナ「ちょうどいいところに来た。この子たち捕らえられていたの。保護してあげて。」

サクナ「で、希望する子には、親の元に帰らせてあげるように手続きお願い。」


ジミーは少しためらいながら答えた。

ジミー「えっ、私、一応は貴族ですからね? こんな汚い子供たちなんて……」


サクナは鋭くジミーを睨みつけた。

サクナ「お願いね」


ジミー「……た、たまんねぇ……っ」

その迫力に圧されたジミーは、興奮した表情を浮かべていた。


サクナは再びアイカたちの方へ向き直る。

サクナ「でも、びっくりしたよ。君が異世界からきた勇者だったなんて」

サクナ「アイカ、彼女に自己紹介してよ。」


アイカは落ち着いて言った。

アイカ「こいつは、ナギ。」


ナギ「はじめまして、ナギです。この度は助けていただきありがとうございます。」

十四歳、身長149センチの少女だった。


サクナ「よろしくね。私はサクナ。」


サクナは笑顔で、

サクナ「アイカ、ナギ。申し訳ないけど、君たちもお城に来てもらうよ。」


ナギはアイカの袖を引っ張り、ささやいた。

ナギ「アイカ、何かやらかしたの?」

ナギ「あの方、この国の王女様だよ」


サクナはお城のほうに向かって歩き出した。

アイカはナギの手首を優しく掴んだ。

サクナ「アイカとナギは恋人なのかい?」


サクナが振り返ると、アイカとナギは逆方向に歩き出していた。


サクナはアイカ達の方に駆け寄って、

サクナ「逃げないでよ!」と叫んだ。


【翌日昼】

王の間にて。

ナギは小刻みに震えながら、アイカの横に立っていた。

アイカの目はどこか虚ろで、まるで死んだ魚のようだった。


王は嬉しそうに語る。

王「まさか、勇者様がこの世界に残っておられたとは。」

王「勇者アイカよ、復活した魔王を倒すのだ。」


ナギは驚いた。

ナギ「え、勇者?」

ナギ「えええ。飢えて死にそうだったアイカが。」

アイカはため息をついた。


ジミーが勢いよくアイカに向かって走り出し、胸ぐらを掴んだ。

ジミー「王の御前だぞ!もっと敬え!」

ジミーはアイカに平手打ちを見舞う。

しかし、その直後、ジミーは自分の手を押さえてうずくまり、膝をついた。

ジミーは顔をしかめながら、アイカを睨みつける。

ジミー「王様!こいつを捕らえてください!」


王は深いため息をつき、静かに言った。

王「ジミー、少し控えなさい。」

ジミーは悔しそうにしながらも、元の位置へ戻っていった。


沈黙の中、アイカが静かに口を開いた。

アイカ「王様、俺は“防御”に特化した勇者です。

……他の勇者たちは、もう元の世界に帰ってしまいました。

俺ひとりじゃ……無理です。」


サクナ「なら、私が鉾となろう」

サクナはまっすぐにアイカのもとへ歩み寄った。

サクナ「父上、私もアイカとともに魔王退治に参ります。」


王は首を横に振った。

王「だめだ。いくらサクナに剣の才があろうと、お前は姫なのだ。」


サクナは強い眼差しで言い返す。

サクナ「私はこの国で、誰よりも強い。そしてきっと、アイカとともに魔王を倒すために──

王族として生まれ、力を授かってきたのだと思います。」


その真剣な眼差しに、王はしばし沈黙した後、ついに口を開いた。

王「……わかった。」


その瞬間――


突如として床に魔法陣が現れ、そこから人間離れした何者かが姿を現した。

現れた男は王の前に立ちはだかる。


ジミーは大声で叫んだ。

ジミー「お前は……魔王軍四天王、ハラヤ!」

そこにいたのは、醜悪な容貌をした男だった。

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