17.過去の世界へ
時を越え、アイカとサクナは過去の世界に降り立った。
街に入り、あたりの様子を確認した二人は、掲げられた日時の札を見て顔を見合わせる。
サクナ「本当に……戻ったんだね、過去に」
サクナの声には、戸惑いと安堵が混じっていた。
サクナ「しかも、ナギちゃんが誘拐される──ほんの数分前に」
アイカ「今なら……今急げば、ナギを助けられるかもしれない!」
アイカが言うと、サクナも大きくうなずいた。
サクナ「うん! ギリギリ間に合うかも!」
二人は城へと駆け出した。
城門にたどり着いたその時、見覚えのある衛兵が立ちふさがった。
衛兵「止まれ……お姫様? あれ……」
衛兵の名はクロム。彼はサクナの顔を見て目を見開いた。
サクナ「クロム、久しぶり。……でも、今は急いでるの」
サクナのひと声に、衛兵は思わず道を開ける。
クロム「すごい美人になったな」
城門を抜けた途端、館内に不穏な鐘の音が響き渡った。
アイカ「来た……ハラヤが、襲来したんだ」
アイカが息を呑む。
二人はそのまま王の間へと走り抜けた。
扉を開いた先で目にしたのは──
すでに空になった玉座の前で、呆然と立ち尽くす人々。
サクナ「……遅かった」
ナギは、すでに連れ去られていた。
ジミー「サクナ様が……二人!? 一体どういう──」
ジミーが驚きの声を上げる。
サクナ「父様……私たちは、五年後の未来から来たのです」
サクナが静かに口を開く。
王「なんだと……?」
王は目を見開き、今のサクナと、幼い過去のサクナを交互に見つめる。
過去のアイカとサクナも、突然現れた「未来の自分」にただ驚くばかりだった。
サクナは、王の姿を見た瞬間、感情があふれ出し──声を失った。
彼女の目には、懐かしくも切ない涙が浮かんでいた。
代わりにアイカが一歩前に出て口を開く。
アイカ「俺が話す……。ナギは死んだ。そして──俺たちは、魔王を倒すことができなかった」
アイカの言葉は重く、静かに響いた。
アイカ「その結果、人間が住む場所は魔王に支配されて、サクナは王様とはなすのが5年ぶりで感極まって……」
サクナの涙を見て、王は何も言わず、ゆっくりとうなずいた。
王「……信じよう。その涙が、すべてを物語っている」
アイカは、力強く語り続けた。
アイカ「俺に作戦がある。魔王の結界は、四天王を倒せば壊れる。だから──」
アイカ「現在の俺とサクナが、メイメイとハラヤを倒す」
アイカ「そして未来の俺たちが、ユウキュとリョウキを討つ」
さらにアイカは続ける。
アイカ「王様、お願いがあります。結界が崩れたとき、エルフの国の連中が勝手に戦争を仕掛けないように、外交的に調整をお願いしたい」
王は深く考え込んだ後、渋い顔で答えた。
王「エルフか……。あいつらは理屈が通じぬ野蛮な連中だが……仕方あるまい。なんとかしてみよう」
アイカ「……感謝します」
アイカとサクナは、深々と一礼し、その場を後にした。