11.戦争
重く沈む空の下、黒々とそびえる魔王城に激震が走った。
玉座の間に響く報告の声――
魔王「魔王様……メイメイ、ハラヤ、ユウキュ、リュウキ……四天王、全員が討たれました」
その報せに、場の空気が凍りつく。
魔王はゆっくりと立ち上がった。漆黒のマントが床を擦り、重くうねるように揺れた。
魔王「……最高戦力が、か。」
その瞬間、外からけたたましい警鐘が鳴り響いた。
轟音とともに、城壁を揺るがす怒声が届く。
魔王の部下「エルフの軍だ!!」
城門の外には、無数のエルフ兵が集結していた。
その先頭に立つ、美しくも凛々しい将軍が剣を掲げる。
エルフ将軍「魔王軍四天王は全滅した! 今こそ、魔王を討ち、闇を終わらせる時だ!!」
エルフ兵隊「いえーーーい!!!」
兵たちの叫びが地鳴りのように響く。
玉座の間に戻り、魔王は目を細め、ただ一言だけを告げた。
魔王「……戦争だ。エルフどもを地に還せ。」
魔王の部下「いえーーーい!!」
怒りに燃える魔族たちが立ち上がり、最終決戦の幕が上がった。
戦場の喧騒から離れた崖の上に、一人の少年が立っていた。
名はアイカ。
震える手を胸にあて、少年は眼下の戦いを見つめていた。
エルフたちが、次々に倒れていく。
その時、そっと手が触れた。
振り向けば、そこにはサクナがいた。
彼の手を強く握りしめ、優しく言った。
サクナ「大丈夫?」
アイカはかすかに頷き、小さくつぶやいた。
アイカ「ありがとう……」
沈黙ののち、アイカが口を開く。
アイカ「サクナ、逃げるなら……今だぞ。」
だが、サクナはにこりと笑った。あたたかく。
サクナ「震えてる君を一人にできないよ。行こう、一緒に。」
その言葉に背を押されるように、アイカは走り出す。
サクナもその後を追った。
作戦内容――
未来のアイカから告げられた作戦を、二人は思い出していた。
未来のアイカ『魔王との一騎打ちは、私が引き受ける。
その間に、地下牢に捕らわれたナギを救い出して――城を脱出して。』