プロローグ
この世界は、二つの界に分かれている。
ひとつは人間界。もうひとつは魔界。
人間界には、人間をはじめ、エルフ、ドワーフといった多種多様な種族が共存している。
一方、魔界に住まうのは魔族のみ。そこは荒れ果てた大地と過酷な環境が支配する、力なき者には生きられぬ世界だった。
そんな魔界の民たちは、長年、人間界の豊かな自然と文化に憧れを抱き続けてきた。
そしてついに、ある“異端の魔族”が誕生する。
その魔族は、他を圧倒する力を有し、自らをこう名乗った。
**「魔王」**と。
魔王の侵攻は止まらなかった。人間界の軍勢は抗うすべなく、世界は暗黒の支配へと傾いていった。
だが、そんな中。
ある日、異世界から四人の勇者が召喚される。
■ 勇者パーティーの四人の特徴
・炎を剣に宿す、灼熱の戦士
・盾すら要らぬ、鋼の肉体を持つ男
・癒しと浄化の力を司る、慈愛の聖女
・奇想天外な道具で敵を翻弄する、知恵の魔女
彼らは人間界の希望となり、やがて魔王との激闘の末に勝利を収めた。
そして、使命を果たした彼らは、元の世界へと帰還していった。
世界には再び平和が訪れ、人々は束の間の安息に酔いしれた。
だが、それは長くは続かなかった。
半年後。
誰もが忘れかけていた脅威が、当然のように復活する。
魔王の再来。
しかも今度は、さらに厄介な存在を伴っていた。
魔王は自らの手で、四人の最強の戦士を生み出した。
彼らは「魔王軍四天王」と呼ばれるようになる。
■ 四天王の特徴
・相手の心の傷を暴く魔族
・相手の記憶を改変する魔族
・相手の身体を乗っ取る魔族
・いかなる攻撃も即座に再生する魔族
この四天王の台頭により、人間界の一部は魔族の支配下に置かれた。
人間やエルフ、ドワーフといったかつての住人たちは住処を追われ、世界はふたたび魔王の影に沈んでゆく。
そんな中、あるひとつの国に希望の火が残されていた。
その名は「ワクワク王国」。
風変わりな文化と自由な気風を持つこの国の王女は、ある噂を信じていた。
“異世界に帰ったはずの勇者パーティーの一人が、この世界に残っている”と。
そして王女は決意する。
その勇者を見つけ出し、一緒に魔王に立ち向かうのだと。
護衛もつけず、一人旅に出た王女の名は、サクナ。
中性的な雰囲気を纏い、金髪のボブカットに澄んだ碧眼。十八歳の少女だ。
その旅の始まり、サクナは誰にともなく呟いた。
「いつになったら、勇者に会えるのかな」
だが、彼女が出会うことになるのは、勇者だけではなかった。




