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裏切り?

「…なんでチュラメリダが…」


一番動揺をかくせていなかったのはヒュラドだった。


「そいつら敵だぞ!世界を支配しようとしてるやつらだぞ!」

「で?それでなんの問題があるの?」

「問題しかないだろ!!」

「…キャリー様は私の全てを叶えてくださると約束してくださったの。世界を支配?そんなことどうだっていいわ。私の願いが叶うのだもの。」


ヒュラドは拳をぎゅっと握りしめた。


「チュラメリダは…エリカはそんな事しない!!」

「えぇ。確かにあなたの知っているエリカはこんなことしないでしょうね。でもこれが本当の私よ。これが本当のエリカ・ルナード。」

「ずっと騙してたのか?あの時からずっと俺のこと…」

「騙してた?…はははっ…!あなたが勝手に信じてただけでしょ。私、一度でもあなたのことを家族だなんて思ったことはないのだから。」


ヒュラドはそれ以上何も言わなかった。いや言えなかった。


「…お話は終わったかしら?チュラメリダ。」

「はい。申し訳ございません。いつでも始めていただいて大丈夫です。」

「ならやりましょうか。」


また攻撃が来るのではないかと、彼らは身構えた。


「…あなたたちに邪魔をされるわけにはいかないの。」


攻撃してこない。いや、攻撃は攻撃だ。しかし、今までのものとタイプが違う。痛みもなければ衝撃もない。

何をしたんだと全員がその場でかたまった。すると、だんだんと足に力が入らなくなった。視界が歪み、目の前が真っ暗になる。


「大丈夫。きっと良い夢が見られるわ。目覚めたくないほどのね。」


その声が、やけに遠く聞こえた。思考が溶けていく。抵抗しようとしたはずの意識は、いつの間にか底へと沈んでいた。



----------



石畳の感触。

鼻をくすぐる、懐かしい空気。


「ここは…」


見覚えのある街並み。もしかしなくもタイガーアイ王国だ。フレディが生まれ育った場所。


「…フレディ?どうしたんだよ。任務行くぞ。」


フレディは目を疑った。


(ありえない。そんなはずない。)


目の前にいたのは、自分の手で自ら手にかけた親友、リアムだった。


「リアム…?なんで…なんで生きてるの…?」

「何寝ぼけたこと言ってるんだ?勝手に殺すなよ。失礼だな。」

「本物…?だって…リアムはあの時、死んで…」

「だから死んでないって。……フレディ…なんで泣いてるんだ…?」


確かにリアムはそこにいた。ちゃんと目の前に。その声は、あまりにも懐かしく、昔と同じで、何一つ変わっていない。そっと触れた体はたしかにそこにあった。


「フレディ…大丈夫か?今日変だぞ。任務は俺に任せて休んどいたほうが…」

「ううん。大丈夫。ちょっと悪い夢を見たんだ。……リアムが遠くに行っちゃう夢。」

「2人で騎士団長になろうって約束したじゃないか。俺はどこにも行かない。」


その言葉を聞いてフレディは酷く安心した。


世界が反転した。



----------



グレースはふわふわとしたなにかに浮かされているような感覚に目を覚ました。


「…ねぇね!ねぇね!ねぇねってば!!」

「…!!アシュリ?」

「ねぇね、アシュリの話聞いてる?ぼーっとしてるけど大丈夫?お仕事疲れたの?」

「…大丈夫。ありがとう。心配してくれて。」

「ならよかった!!」


ニコニコと笑うアシュリ。そんなアシュリを見たグレースは戸惑った。


(なんで?アシュリはもうこの世界にはいないはずじゃ…だってあの時アシュリは…そもそもなんで家に?私はさっきまであの場所で…)


アシュリはあの日、殺された。この場所にいるわけがないのだ。


そっとアシュリの方へ手を伸ばす。


「どうしたの?ねぇね。」


確かにそこにいる。触れた感触が紛れもなくアシュリだ。


「アシュリ…」

「なぁに?」

「ううん。なんでもない。ご飯食べよ。」

「うん!」


----------


「ねぇね!ねぇね!」

「これおいしい!」

「今日はお友達と追いかけっこして遊んだんだ〜」

「もうすぐねぇねのお誕生日だね。プレゼントは何がほしい?」


すべての日常が愛しく思える。

妙に懐かしく寂しい気持ちになることがあるが、それは気にしないことにした。


(今が幸せならそれでいい。)


夢がほどけ、また別の意識に引き込まれる。



----------



柔らかな光が差し込む。

ソフィアが目を開けると、見慣れた天井がある。いや、正確には見慣れているはずの天井だ。


「朝…?」


体を起こすと、身体が驚くほど軽い。痛みが、疲労が、なにもかもが嘘のように消えていた。先程まであれほど疲労が溜まっていたのに。

するとドタドタと部屋の外から足音が聞こえてきた。


「お姉ちゃん、おはよう!」


彼女が振り向くと、そこにはリリィがいた。


「早く起きて!早く起きて!今日から新しいお稽古が始まるんだよ!」

「…おけ、いこ?」

「やだなぁ。お姉ちゃん忘れちゃったの?お姉ちゃんが主役の新しい劇だよ!」

「え…?主役は、リリィじゃ…」

「私も出るけど、主役はお姉ちゃんだよ。オーディション受けたけど、私は落ちちゃったんじゃん。」

(おかしい。そんなはずない。)


リリィが劇団に入ってからソフィアが主役をやったことなどない。一番良かった役はヒロイン役。それ以上の役はもらったことがなかった。


「だから、早く起きて!お姉ちゃんに演技のコツを教えてもらいたいの!」

「…先に行っておいて。準備ができたらすぐに行くから。」

「はーい!待ってるね!」


どういう状況か理解できないまま、彼女は準備を始めた。しかし、悪い気はしなかった。胸の奥が、じんわりと温かくなる感覚がある。


「わたしが主役か…」

(でもきっとお母さんたちは見に来てくれないだろうな…リリィは優しいからわたしのことを気にかけてくれてるだけ。)


今までの経験から、そう思わざるを得なかったのだ。準備が終わったので、下の階へ向かった。


----------


「おはよう。ソフィア。」

「…」

「今日も演劇の稽古なんだってな。頑張ってくるんだぞ。」

「…」

「どうしたのソフィア?一言も喋らないけど…もしかして喉の調子が悪いの?だったら飴を舐めたほうがいいわ。のど飴を買っておいたから取ってくるわね。」

「えっ…」


母親が異常に優しい。喋れないのはいつものことだ。それなのにソフィアのことを気にかけてくれている。


「はい。のど飴。悪化する前に舐めときなさい。練習にも持っていく?」

「…あり、が、とう…」

「じゃあ俺は仕事に行ってくる。ちょっと忙しくてな。」

「今日は早めに帰ってきてちょうだいね。ソフィアが主役になった。大切な記念日なんだから。」

「あぁ。わかってるよ。」

「…なんで?お父さん、帰ってきてくれるの?」


今までの父親ならば、絶対に帰ってきてくれなかった。彼女の誕生日すら仕事が忙しいと言い、いつも帰ってきてくれなかった。


「なんでって…ソフィアが主役を取ったから決まってるでしょ?」

「あぁ。帰りにケーキを買ってくるつもりだったんだが…」

「……なんでもない。ありがとう。お父さん、お母さん。」

「やっぱり調子悪いんじゃないの?今日の練習は…」

「大丈夫!ちょっとまだ眠くって。」


この時、ソフィアは両親に対してなんとも言えない感情を抱いた。


----------


練習をするために練習場であるホールに向かう。


「ふんふ〜ふ〜」


リリィが楽しそうに鼻歌を歌っている。


満たされている。望んでいた日常だ。ずっとこうであればいいと思っていた。


(でも、これがわたしの望んでたものなのかな…)


その先の思考は、やさしい光に溶けていった。

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