圧倒的格差
前回のあらすじ
何とかアンフェニに勝利することができたフレディたち。その場の全員が終わりかと思ったその時、現れたのはピンク色の髪をした女、シェーラだった。
「シェーラ様!」
アンフェニとアヴィニール、2人が同時に叫ぶ。
「2人とも頑張っていたわね。後は任せて先に帰りなさい。」
「でもまだ…!」
「後は私がなんとかするから、2人は帰りなさい。」
「はい…わかりました。」
「わかりました…」
2人ともかなり不服そうな顔して消えてしまった。
「さてと…」
俺たちは全員、反射的に身構える。だが直感で理解した。これは、今の俺たちじゃ絶対に勝てない。
シェーラは微笑みながらゆっくりと手を上げる。その指先から淡い光が散り、空気がねじれるように揺れた。次の瞬間
バシュッッッ!!
光の刃が一気に飛び出し、ノアの弓の矢を弾き飛ばす。弓も手元から滑り落ち、後ろに倒れ込む。
「なっ…!?」
ノアは必死に立ち上がろうとするが、シェーラの手のひらから次々に魔力の刃が放たれ、まるで空間を裂くように飛び交う。回避しようと体をひねるたび、刃は微妙に軌道を変え、必ず目前に迫る。
グレースが小刀で切りかかるも、刃は空中で溶けるように消え、シェーラの前に届かない。ソフィアの槍も同じく、光の壁に阻まれて弾かれる。
「くっ…!」
ヒュラドが鎌を振り回すが、地面から魔力の波が跳ね返り、足元の岩盤が砕け飛ぶ。バランスを崩し、転倒しかける。
「…まだ、私に届くと思ってるの?」
シェーラの声は冷たかったら、その瞳は、まるで本気を出していないかのようにフレディたちを見据えている。
俺は剣を握り直し、全身に力を込める。なんとか一撃を当てようと踏み込むが、シェーラは軽く手を振っただけで剣の刃先が跳ね返される。攻撃の感触が全く伝わらない。
「くそ…!」
全員が全力で攻撃を仕掛けても、当たらない、効かない、何もかもが無力に思える。息が荒くなり、体中が痛む。
「…弱点なんて、あるのかな」
俺は心の中で自問する。アンフィニやアヴィニールなら、何とか隙を作れた。だが、シェーラは次元が違った。
一瞬、周囲の空間が歪む。光と影が入り混じり、視界が揺れる。シェーラはその間にすうっと間合いを詰め、俺たちの正面に立った。
「ここまで頑張ったわね。でも、これ以上は…無理よ」
言葉と同時に、彼女の手から光の鞭のような魔力が飛び出し、四方にいる仲間たちを吹き飛ばす。
「うわっ!?」
ノアもグレースもソフィアもヒュラドも、全員が地面に叩きつけられ、体が痛みで動かなくなる。
俺はなんとか剣を握りしめ、立ち上がろうとする。血と汗で視界がぼやける中、シェーラの姿は変わらず美しく、冷たく、そして圧倒的だ。
「…俺たちじゃ、勝てない。」
正直、そう思わざるを得なかった。全力を出しても、届かない。効かない。歯が立たない。
だが、その背後で微かに、しかし確かに聞こえるあの声。
「諦めるな。まだ、戦える。自分を信じろ。仲間を助けろ。」
思い出す。あの声が、今の俺に唯一の希望を与える。
「…まだ、終わらせない。」
痛みと絶望の中で、俺は立ち上がる。目の前の敵は圧倒的だけど、ここで逃げるわけにはいかない。
これが、俺の覚悟だ。
「はぁぁぁ……!!」
力を全て手に込めて…
少し距離を取ったシェーラに向かい、剣を思いっきり投げつけた。
戦わなくちゃいけないんだ。みんなを守れ。
「…!」
しかし、その投げた剣もいとも容易く跳ね返されてしまう。
「…さすがね。今日はこれでおしまい。早く仲間を助けてあげたほうがいいんじゃない?それじゃあ私はここで。また会えるといいわね。フレディくん。」
そう言ってシェーラは消えていった。
膝から崩れ落ちた。もう立っていられない…みんなは…
「フレディ、大丈夫か?」
「ヒュラド…」
「力になれなくて悪い。」
「みんなは…」
「大丈夫、気を失っているだけだよ。」
「よかった…」
目の前が真っ暗になって…
ヒュラドが何か言ってる…?聞こえない…
俺はそのまま意識を失った。
次に気がつくと、ベッドの上に寝かされていた。
目を覚ますと、白い天井が目に入った。全身が鉛のように重く、体中に痛みが走る。
「あ…ここは…」
ぼんやりと周囲を見渡すと、ヒュラドが椅子に腰かけ、真剣な顔で見守っていた。
「フレディ、大丈夫か?」「…えっと、なんとか…」
力なく返事をするも、まだ体が言うことを聞かない。
「みんなは?」
「ちょっと買い出しに行ってるよ。」
「ならよかった…」「スっげぇ戦いだったもんな。倒れて当然だよ。施設で訓練受けてた俺でさえしんどかったからな。」「ここまで運んできてくれたの?」
「あぁ。」
「ありがとう、ヒュラド。」
「お前らが無事ならそれでいいよ。」
その瞬間、胸の奥に熱いものが込み上げてきた。
「ヒュラド、戻ったよ…フレディ?フレディ!意識が戻ったんだ!よかった…」
「フレディがいちばん酷い怪我だったからよかった。」
「…心配かけすぎよ。」
「ごめん。みんな。」
「でも、目が覚めてほんとによかったわ。」
みんないる。怪我はしてるようだけど、みんな生きてる。よかった…
「あの戦いで…負けた。勝てなかった。」
「フレディ…」
「あんな化け物どうやって倒せって言うのよ…」
「今回は何とか命は助かったけど、次は…」
正直みんな怖気付いていた。命の危機に晒され、これほどまでに力の差を痛感して。勝てない。負けるって思う度に、自分の弱さが不甲斐なかった。でもやらなきゃいけない。
「諦めるわけにはいかない。あの人たちはたくさんの人の大切なものを壊してるんだ。止めなきゃいけない。いくら無力でもやらなきゃダメなんだ。」
「でも、あんな敵…」
「俺について来て欲しい。俺が絶対に守ってみせる。みんなのこと。だから俺を信じてくれ。」
目の前に浮かぶ、あの絶望的な光景。圧倒的すぎるシェーラの姿。それでも、あの時の声を思い出す。
「諦めるな。まだ、戦える。自分を信じろ。仲間を助けろ。」
胸の奥が熱くなる。全身に力がみなぎるような感覚。
「まだ…終わらせない…!」
握りしめた拳に、覚悟が宿る。仲間を守るため、世界を守るため、俺はまだ立ち上がる。ヒュラドが軽く頷く。
「俺は一緒に戦うよ。ついて行ってやるよどこまでも。」
「僕も。フレディに助けられたんだ。次は僕が誰かを助ける番。」
「わたしも。わたし、みんなの笑顔を見るのが好きだから。みんなを笑顔にしたい。」
「…シャドウジョーカーに時も色んな依頼を受けた。だから、それと同じようなものよね。人から感謝されるのは嬉しいものだし。」
「みんな…」
みんな俺と一緒に戦ってくれる。疲れたけれど、絶望はない。
ベッドからゆっくりと体を起こす。傷はまだ痛むが、心はもう折れていない。
「行こう…オブリビオンを止めるために。」
まだあの脅威が待っている。でも、もう逃げない。もう、諦めない。これが、俺たちの戦いだ。
「そうと決まれば、早速特訓だね!今のままじゃ勝てない。だから力をつけよう!」
「おかえりなさい。シェーラ様。」
「ただいま。」
「おかえりなさい!シェーラ様!」
「2人とも今日は頑張ったわね。偉いわ。」
「あいつらを退けるのに苦労してしまいました。申し訳ございません。」
「俺も負けちゃって、ごめんなさい。」
ふたりは深々と頭を下げる。
「あなたたちはよく頑張ったわ。見ていたもの。それに、あの子を見てみたかったからちょうどよかったわ。きっとこれからもっと強くなるわ。楽しみね。彼のようになれるかしらね。」
次回予告
圧倒的な差を見せつけられた一行。このままではシェーラに勝てない。そう悟った。彼らは強くなるために訓練に勤しむのだった。
そんな中、オブリビオンはさらに脅威を増し始め…




