一撃の壁
前回のあらすじ
フレディは、シャドウジョーカー加入のための試験に挑む。第1の試験、第2の試験と順調に突破していくフレディ。
残るは最後の試験、それはオーウェンとの一騎討ちだった。
「最後の試験…それは、オーウェンと一騎討ちで勝負すること。」
ワクワクが一気に不安へと変わる。
先程のオーウェンさんの身のこなし、少なからず弱いわけが無い。
「あなた剣持ってるでしょ。それを使って戦って。勝敗の判断は私がする。それじゃあスタート。」
スタートの合図とともにふたり動きだした。
「今度は俺が勝たせてもらう!」
カキンという音が空に響き渡った。オーウェンが俺に向かい剣を振り下ろす。
自分の持っている剣で何とか防ぐが力が強くなかなか押し返せない。
「ど〜した〜?全然手応えがないな〜やっぱりお前はシャドウジョーカーのメンバーにはなれないんだよ!」
「くっ…!」
剣同士が激しくぶつかり、大きな音を立てる。防御ばかりでこちらから攻撃を加えることができない。
「早く諦めたらどうだ?」
「できません!俺はあなたたちの仲間になって絶対に助けに行くんだ!」
「なら根性見せてみろ!」
「わっ…!」
足が滑り後ろに倒れてしまった。
その間もオーウェンさんは攻撃を仕掛けてくる。押さえつけられそうになるのを何とか阻止して体制を立て直す。
体が思うように動かない。剣を握る力がどんどんなくなっていく。
「はぁはぁ…」
「勝負あったな。」
「降参なら言って。無理する必要ないから。」
ここで負けてしまうのだろうか?
体がおかしい。うまく動かせない。前オブリビオンを倒した時はこんなんじゃなかったのに。
あの時は体が勝手に動いてまるで動かされてるような、そんな感じだった。
でも、今はまるで違う自分でもうまく動かせない。押さえつけられているようなそんな感覚。
「剣は適当に振るものじゃない。」
頭の中で声が響いた。あの時、オブリビオンを倒した時と同じだ。
力強く剣を握りしめた。俺ならきっとやれる。
やらなきゃだめなんだ!
オーウェンさんに向けて剣を突き立てる。
俺が再び立ち上がると思っていなかった。2人は驚いて少し微笑んだ。
「なんだ、まだやれるのか…お前、なかなか面白い奴だ!」
「絶対に負けません!」
体が動く。さっき動かなかったのが嘘のように。
先ほどまでは攻撃を防ぐことしかできなかった。しかし今は互角に渡り合えてる。この調子で行けば…!
互いの剣がぶつかり合い、カチン!カチン!と大きな音を立てた。
「なかなかやるな…でも、これでどうだ!」
目の前に、小さな刀が飛んできた。どうやらひっそり忍ばせておいた小型のナイフを投げたようだ。それを避けていると体勢を崩してしまい、倒れてしまった。
それと同時に後ろから押さえつけられた。そして剣が手から離れ少し遠くにいってしまった。
「…勝負あり。オーウェンの勝ち。」
…負けてしまった。
せっかくここまで来たのに。
「お前なかなか強かったじゃなぇか。ここまで強奴と戦ったのは久しぶりだ。」
「フレディ、あなたは負けたけど確かに強かった。」
今何を言われても聞こえない。耳から耳へと流れていくだけ頭へ何一つ言葉が入ってこない。
感情がぐるぐる渦巻いて、自分の無力さ、負けたことに対しての悔しさ。そして試験に失敗し、シャドウジョーカーに入れないと言う結果。俺は酷く落胆している。
「…残念だけどシャドウジョーカーには…」
グレースさんがそう言いかけた時、遠くの方で悲鳴が聞こえてきた。
「何…?…オーウェン!」
「わかった!」
「フレディはここで待ってて!」
2人は悲鳴の聞こえた方向へと走り去っていった。
この場所で待機するように命じられたが、何が起こっているのか、気になって気になって仕方がない。その場にあった剣を回収し、こっそり跡をついていくことにした。
悲鳴の聞こえた方に行くと、そこにはオブリビオンがいた。
村の人が人質にとられており、それを助けに行こうとグレースさん達が必死になっていた。
「待ってて。今助けに行くから!動かないで!」
「グレース俺がアイツの気を引く!お前はその間に助けろ!」
「わかった。気をつけてよ。」
先ほど見たよりも早い動きでオブリビオンに詰め寄り、気を引くオーウェンさん。
そしてゆっくりと忍び寄るグレースさん。
2人の息ぴったりの動きに俺は思わず見とれていた。
「グレース!今だ!」
オーウェンさんの合図に合わせグレースさんがオブリビオンの死角から無事人質を救出した。
2人の連携により人質は救出。危機は免れたかと思われた。
しかし、次の瞬間、オブリビオンは大きな声をあげ、明らかに先より早い速さで動き始めた。
「なんだ。こいつ!さっきより早く…!」
「オーウェン!気をつけて!」
オブリビオンはオーウェンに向かってると思われた。しかし、次の瞬間グレースさんにぐっと近づいた。
そして目にも止まらぬ速さで腕を伸ばしてきた。
「グレース!危ない!」
「あっ…!」
危ない!!
剣を抜き、今自分の出せる全力を使い切ってグレースさんの元へ駆けつけた。
カキィン!
「大丈夫!グレースさん!」
「えっ…フレディなんでここにいるの?」
「気になったからついてきたんだ。そしたらグレースさん、めっちゃピンチだったからついきちゃって…!」
「何やってるの?危ないんだから向こう行ってたよ!」
「そんなことできない!俺も一緒に戦う!」
「バカ!怪我したらどうするの!」
「大丈夫だって!」
2人で言い争いになっていると、オーウェンさんが止めに入ってくれた。
「グレース、お前の気持ちはわかる。でも今はそんなこと言ってる場合じゃない!おい!お前!やれるのか?」
「やります。やってみせます!」
「ならやってみろ!」
「ちょっと!オーウェン!何言ってるの?彼は、危険な目に合わせるわけにはいかないわ!」
「それはわかってる。けど、今は…」
オブリビオンが、こちらを捉え向かってくる。
呼吸を整えて…
このオブリビオンは、動きが非常に早い。
さっきの第1の試験で使った技が思い出せ。オブリビオンは体が大きい。
それなら街の至るところが使える。
俺は全力で走りながら、村の裏道へと向かった。村の裏道は奥に行くにつれ狭くなっていく。さっきの土管のはめ技が使える!
しかし、オブリビオンの動きが早く追いつかれそうになる。
まずい。このままじゃ…
少し遠くの方でピピッと言う音がした。
「フレディ!走って!」
見るとグレースさんたちが第2の試験で使った罠で音を鳴らしていた。
オブリビオンは、その音につられ動きが少し遅くなった。
そのまま全力で駆け抜け、オブリビオン罠にはめることに成功した。
前のように、剣で切り付ける。
しかし、びくともしない。どうやらこのオブリビオンは体も硬いらしい。
せっかくここまで来たのにどうすれば…
「剣は適当に振るものじゃない。」
頭に響いたの言葉を思い出した。剣は適当に振る物じゃない。
…狙いを定め、1点に力を込めて、1番の技相手に打ち込む!
カキィン!
見ると、オブリビオンは塵となって消えていた。
「やった…よし、倒せた!」
「フレディ!」
「グレースさん!大丈夫怪我とかない?」
「私は大丈夫。」
「そっか、よかった!」
「お前、なかなか賢いな。俺と同じようにオブリビオンをはめて倒そうってか…俺が今まで見てきた中で1番強い人間だ。」
褒められて俺はかなりいい気分になっていた。自分より強い人にそんなこと言ってもらえるなんて、少し懐かしい感じがする。
「…フレディ。少し話があるの。」
「なに?」
「…あなたにシャドウジョーカーに入る資格を与える。」
次回予告
試験に落ちたはずのフレディに告げられる、意外な言葉。
それはシャドウジョーカーに入る資格だった。
少女たちを救うため、作戦会議が始まる。仲間と力を合わせ、救出作戦に挑む!