潜入4日目
前回のあらすじ
施設内をさまよっていたフレディは、謎めいたおじいさんから古い施設の地図を手に入れることに成功する。さらに第一倉庫では設備資料を発見し、食堂では看守たちの会話から「裏切り者」の存在が明らかになった。
調査の目標を「裏切り者の正体を突き止めること」と決めた。
潜入4日目。
今日の目標は仲間を増やすこと。鍵の模造品を作るのはドロシーにお願いできるし、あとはチュラさんの行動観察する必要がありそうだな。
資料室への侵入には、完璧なタイミングと協力者が必要だ。ひとりじゃ無理でも、手を貸してくれる仲間がいれば突破口は開ける。そのためにも、まずは
「ヴェレに会わないと。」
昨日の約束通り、訓練場の裏手に向かうと、木陰で大きく伸びをする銀髪の少年が待っていた。俺に気づくと、ヴェレはニヤッと笑う。
「来てくれたんだな。で、弟子にしてくれるのか?」
「うん。いいよ。でも、1つ条件がある。」
「条件?」
「ある計画に手を貸してほしい。もちろん、君にしかできない役割だ。」
俺は、資料室の存在、そしてその中に眠っているはずの裏切り者の情報について簡潔に説明した。ヴェレは途中で何度か眉をひそめながらも最後まで黙って聞いてくれた。
「なるほど…僕は何をしたらいいの?」
「建物の中で、ちょっとした騒ぎを起こしてほしい。それで人の目を引きつけるんだ。できる?」
ヴェレは少し考えこみ、やがて不敵な笑みを浮かべる。
「騒ぎなら得意分野だ。ド派手にかましてやる!」
「ちょっと騒ぎでいいからね。危険なこととかそういうのはダメだから。」
「わかってるって!で、その間に、あなたは?」
「ドロシーが作った偽の鍵とすり替えて、俺が本物で資料室に潜入する。制限時間は見つかるまでの数十分。君の腕にかかってる。」
「面白くなってきたな。」
ヴェレはクスッと笑い。肩をすくめた。
「これが終わったら、ちゃんと俺を弟子として認めてくれよ?」
「約束するよ。君はもう俺の仲間だ。」
「師匠の言う通り、いい感じにやってるから、期待しといて!」
これで準備は整った。整ったと言うのはまだ早いか。これからチュラさんの行動を観察して把握しなければいけない。
それに鍵だって完成させないと。
「これから忙しくなるな。」
この作戦を共有するために、一度俺の牢屋に集まった。
「今回の作戦はドロシーが鍵の模造品を作って、看守が持ってる鍵とすり替える。このタイミングで、ヴェレがちょっとした騒ぎを起こす。俺は本物の鍵を持って資料室に行って情報を盗み取る。こんな感じなんだけど、大丈夫かな?」
2人はこの作戦に賛同してくれた。
「私が鍵の模造品を作ればいいんですね。でも鍵の形も正確なものはわからないし…形が違ったらすぐにばれるんじゃないですか?」
「確かに。何か鍵の情報とかないの?」
2人に質問してきた。確かに鍵の形が違えばすぐにばれてしまうだろう。勘のいいチュラさんならなおさらだ。
そういえば、どこかでこの施設のことに関して書いてある紙があったはず…
俺は隠し持っていた紙を探した。第一倉庫から盗んできたものだ。
「もしかしたらこの中に…」
何枚も何枚もめくっていくと、鍵のことについて書かれている紙を見つけた。白黒で色はわからないが、形はよくわかる。
「これ!鍵の事について書いてある!これで作れないかな?」
「…これがあれば形ぐらいなら再現できそうです。でも色がわからないし…」
「この鍵、少しずつ形が違うな。看守の持ってる鍵を見たらわかるんじゃね?師匠は看守の行動を見張るんだろ?だったらわかるんじゃない?色ぐらい。」
紙に書かれてある鍵は少しずつ形が違っていた。チュラさんの持っている鍵と形を照らし合わせて、色を特定すれば…
いけるかもしれない…!!
「俺が看守のことを観察して色を伝えるから、作って欲しい!」
「…わかりました。材料はどうしましょう?」
「第二倉庫から持ってくるよ。あそこ鍵もかかってないし、人もほとんど通りかからない場所にあるから。」
「師匠!僕もついていく!何か役に立てるかもしれないし!」
「ならお願い。そうだ、地図一応共有しておくよ。」
この前おじいさんにもらった地図を地面に広げた。この時間帯看守はほとんど通らず、なぜか俺の牢屋は独立した場所にあるから、情報が漏れる心配はあまりないだろう。
「今いるのが、この俺の牢屋。第二倉庫はここにあって、比較的行きやすい場所だから大丈夫だと思う。」
「騒ぎを起こすとしたらやっぱり、人が大勢集まるところのほうがいいよな?」
「そのほうが人目に止まりやすいし、看守の注意をそこに引けるからそのほうがいいかも。」
「どうやって騒ぎようそうかな…!やっぱり喧嘩とか!」
「危ない事はしないでよ。君が怪我したら元も子もないでしょ。」
「大丈夫!ちょっとやそっとのことで僕は倒れないよ!」
少し心配だな。と思いつつどんどんと話が進んでいく。
「じゃあ、素材を取りに行こう。」
「気をつけてください。」
「もし師匠が危なかったら、僕が囮になるから!」
「そこまでしなくていいよ!でも見つからないように気をつけよう。」
ヴェレと二人で通路を抜け、第二倉庫へと向かう。足音をできるだけ殺しながら、壁際をすり抜けるようにして進んだ。監視の目はほとんどなく、相変わらず倉庫前の道は静まり返っている。
「ここだ。」
俺は倉庫の扉に手をかけ、そっと押し開ける。ギィ…という古びた音が響いたが、周囲に気配はない。
中は暗く、木箱や棚が無造作に積まれている。埃っぽい空気の中を、ヴェレが先に足を踏み入れた。
「師匠、鍵の素材ってどんなのがいいんだっけ?」「見た目は金属っぽいけど、削れる素材のほうがいい。強度より、形の再現性重視で。」
「了解!」
ヴェレが物陰を動きながら、棚の引き出しを次々と開けていく。俺も奥の方に積まれた箱を一つひとつ開けて確認した。
やがて、少し光沢のある灰色の棒状の素材を見つけた。持った感じは軽く、削れば形になりそうだ。
「これ、使えるかも。」
「こっちにもそれっぽいのあった!」
ヴェレが駆け寄ってきて、手に取って目を細める。
「あいつならうまく作れそうだ。」
「うん。じゃあ、急いで戻ろう。」
素材を布でくるんで背中の袋に詰め込む。それと同時に削るための道具も入れる。念のため、予備の分もいくつか持っておいた。
「師匠大成功ですね!」
「声が大きいよ…!ばれちゃうから静かに。」
「あっ、はい。」
俺たちは急いで牢屋へと戻った。後ろの方で鋭い目が光ったような気がした。気のせいだろう。ここはほとんど誰も使わない場所なんだから。それより早く帰ろう。
「…」
「何とか持って帰れたよ!」
「おかえりなさい。何事もなかったですか?」
「うん!とりあえずっぽいやついっぱい持ってきたんだけど…」
取ってきたものをドロシーに見せ。ドロシーは少し見つめた後で口を開いた。
「…削ったら形になりそうです。でも鍵穴の形を再現する事は難しいと思います。」
「その場しのぎでいいんだ。ほんの数十分。少しの時間だけでも稼げたらそれでいいんだ。」
「できるだけ頑張ってみます。作るのが久しぶりなのでうまくできるか分かりませんけど。」
「よろしくね。」
「とりあえず今日は1つだけ持って帰ります。牢屋も近いので大丈夫だと思います。」
「明日から本格的にこの計画が始動する。みんなで頑張ろう。」
2人とも笑顔で首を振ってくれた。
この日はこれで解散となった。明日から本格的に計画が動き始める。俺は明日の朝からチュラさんの後ろつけて、行動を観察する。うまくいくといいけど。
潜入4日目。とうとう運命の歯車が動こうとし始めた。
それにしても…フェニいつになったら来てくれるんだろう…来るって言ってたはずなんだけどな…
「…フレディ。あいつとも面識があるようだし…注意を払わないと。」
次回予告
潜入5日目。
俺はチュラさんの行動を観察するため、朝から影のように後をつけていた。果たして無事に資料保管庫に入ることはできるのか…




