表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/68

夜空に響く声

前回のあらすじ

フレディたちは、アレンくんの心の拠り所になろうと考え、ソフィアの提案で公園で思い出の遊びを一緒に楽しむことに。

一日中遊び、アレンくんは久しぶりに笑顔を見せるものの、根本的な悩みは解決せず。今後の課題が浮かび上がる中、ソフィアを呼ぶ声がした。

後ろの方でソフィアを呼ぶ声が聞こえた。


「お姉ちゃん!」

「…!」


声がする方を振り返ると、そこにはソフィアと同じ髪色をした少女が立っていた。


「お姉ちゃん、最近会ってなかったから嬉しい!」


うれしそうに話す少女。トレに比べて、うつむいたままのソフィア。お姉ちゃんと呼んでいるし、もしかしてソフィアの妹さんかも…


「お姉ちゃん?聞いてるの?そうだ!明日、一緒に夜ご飯食べない?」

「…」


ソフィアは相変わらず黙ったままで、その少女と目を合わせすらしなかった。

しばらくして、ソフィアはノートを手に取る。


『わたしが行っても、お母さんとお父さん喜ばないでしょ。』

「そんなことないよ!少なくとも私はお姉ちゃんと一緒にご飯を食べたいよ!」

『わかった。行けたら行くね。』

「やった!じゃあ明日待ってるから!」


そう言って少女は去っていった。


「もしかして、今のが妹さん?」

『はい。妹のリリィです。食事会に誘われました。前、言っていた例の食事会です。妹がどうしてもと言うので、迷っています。』

「妹さんのことを大切に思ってるんだね。」

『はい。妹のことは大切です。もちろん家族のことも。でも本当に行っていいのか、わからないんです。』

「…ソフィアが思ったなら行けばいいわ。」

「僕もそう思うよ。決めるのはソフィアなんだし。」


ソフィアは微笑みを浮かべ、少し嬉しそうな顔をした。


『ありがとうございます。少し考えようと思います。』






「…喉、乾いたな…」


その日の夜。嵐の後の静けさと言うやつだろうか、夜空は澄み渡りとても美しかった。フレディとノアは隣で深い眠りについていた。

何か飲み物を飲もうとキッチンの方へ向かった。


「綺麗な月…」


本当にきれいな月だった。思わず見とれてしまうほど。

飲み物を飲み終わり部屋に帰ろうとしたが、少し目が覚めてしまった。このまま帰っても眠れないだろう。


「外で風にあたろうかな。」


そう思い外に出た。

すると、そこにはソフィアもいた。


「…ソフィア?」

「…?」

「ソフィアも眠れないの?」

「あっ…」


その時のソフィアはノートを持っておらず、どう答えたらいいか悩んでいる様子だった。


「わ…た、し…」

「ノートを持ってないのね。無理。喋らなくてもいいわよ。私少し喉が渇いたから飲み物を飲みに行ったんだけど、そしたら目が冴えちゃって、それで夜風に当たりに来たの。ソフィアも眠れなかったの?」


ソフィアは、首を縦に振りイエスと答えた。


「食事会の事悩んでるの?」


ソフィアは再び首を縦に振り答える。


「悩んでいるなら、相談に乗りましょうか?私も妹がいたから、ソフィアの気持ち少しはわかるかもしれない。」

「…」

「妹は8歳の時に死んじゃったの。私の誕生日に。突然のことで全然受け入れられなかった。昨日までは一緒に話して、笑って、でももうそれができないって…近くにいる人ほど、大切な人ほどすぐになくなっちゃうんだよ。」


私の話をソフィアは真剣に聞いてくれていた。


「…何かごめん。すごい重い話しちゃって。私の価値観をソフィアに押し付けるのも違うよね。今の事は忘れてくれて構わないから。」

「わ、たし…」

「…どうかした…?」


ソフィアはしばらく黙っていた。口を開こうとして、少しだけ俯く。


「話…して、くれ、て…ありが…とう…」


初めてソフィアが話した瞬間だった。途切れ途切れに言葉をつなぎながら、一生懸命私に語りかけてくれた。


「わたし…話すこと、怖い、の…昔、お母さん、に…話し方、変って…言われて、から…だから…ノートに、書いてた。でも、わたし…お話するの、好き。ノートに、書けば…お話しできる。だからそうしてた…」


ソフィアは少し涙目になっていた。怖い思いを必死に堪えて、今私に話してくれたんだろう。


「ソフィア。ありがとう。ソフィアの声はとっても素敵だし、話し方も変じゃないよ。」

「…ありがとう。いつか、わたしのこと、話したい。グレースさん…話して、くれたから。」

「いつまででも待ってるよ。」

「まだ、みんなの…前では、話せないかも…しれない。でも、頑張る。みんな、とっても、優しいから。」

「私は嬉しいよ。ソフィアが自分の声で自分のことを教えてくれて。何かあったらまたいつでも相談して。それに、私のことグレースって呼んで、敬語もいらないからね。」

「…グレース…」


ソフィアは私の名前は呼んでくれた。その時なんだかとても嬉しい気持ちになった。

夜風が私たちを撫でながら静かに吹き抜ける。






朝が来た。今日はソフィアの食事会の日だ。


「ソフィア、おはよう!」

『おはようございます。フレディさん。』


ソフィアの顔はなんだか昨日よりスッキリしていて、気持ちが良い笑顔だった。


「ソフィア、おはよう。あの後よく寝れた?」

『うん!グレースのおかげだよ。』

「なら、よかった。何かあったらまた言ってよ。私たち友達でしょ。」

『もちろん!グレースもわたしに何でも言ってね。』


2人の距離感がやけにに近い気がする。なんでだろう?何かあったのかな?


「ノア、あの2人なんか仲良くなってない?」

「うん。やっぱりそうだよね。なんというか…気軽に話し合える友達になったって感じ…」

「昨日の夜、何かあったのかな?」


俺とノアはなぜ2人が仲良くなったのか、全然わからなかった。

2人が仲良くなる事は良いことだし、まぁいっか!


「今日は食事会なんだよね。結局行くことにしたの?」

『はい。行ってきます。食事会は夜なので、昼間は少し買い物に行きたいと思っています。グレースいいかな?』

「うん。いいんじゃない。」

『なら、今から行こう。わたし、お友達と買い物とかそういうのはあんまりしたことなくて、だからやってみたい!』

「確かに私も、友達と買い物なんてしたことなかったわね…行きましょう。じゃあ私たちへ買い物に行ってくるから、2人は適当に何かしといて。今日が終わったら、アレンくんの事についてまた考えるから。今日だけはお願いね。」


そう言って、2人は出て行った。俺らの会話をそっちのけに楽しそうな雰囲気で。


「あの2人、本当に仲良くなったね。」

「一晩であんなに仲良くなれるんだね…やっぱり同性同士だと話も合うのかな?」

「確かに、俺もグレースと距離詰めるの結構時間掛かっちゃったし…それに比べてノアの方がすぐ仲良くなれたかも。」

「あっちはあっちで楽しそうだし、俺たちはアレンくんの事について考えようか。」

「そうだね。ソフィアも楽しそうだったし。よし!じゃあ、アレンくん笑顔大作戦の作戦会議しよう!」




あっという間に夜になり、リリィとの約束の時間はもうすぐだった。


『行ってきます。家の中にあるものは基本どれを使ってもらっても構いませんので。』

「いってらっしゃい。せっかくなら楽しんできて。」


ソフィアは深呼吸をし、軽く頬を叩く。

ソフィアの背中は昨日より、少しだけ前を向けてる気がした。


「俺たちどうする?」

「私、今日昼間買い物行った時においしそうなご飯屋さん見つけたの。そこに行かない?」

「どんなご飯屋さん?」

「何か、和食…とか書いてたよ。お店の前を通った時に、すごくいい匂いがして…」

「じゃあそこに行こう!…待って…俺お金ないかも…」

「え…口の中、もう和食の気分なんだけど…」

「どうしよう…」

「僕が払うよ。フレディには助けてもらったしさ。」

「ほんと!ノア!ありがとう!!」


こうして俺たちは、店の方へと向かっていった。


「どんなメニューがあったの?」

「天ぷらとかお寿司とか書いてあったわ。」

「和食ってどれもおいしいやつばっかりって聞いたことあるから、楽しみ!」






家の前まで来た。自分の家なのに、ここに入る時は妙に緊張してしまう。門の前で手を振るリリィが見える。その姿に、ほんの少し口角が上がった。


「お姉ちゃん!いらっしゃい!やっぱり来てくれたんだね。中でみんな待ってるよ!」


リリィに言われて、門をくぐる。今日は家族としっかりお話をするんだ。大丈夫。わたしならできる。そう言い聞かせた。

どこか遠くかすかな鳴き声のようなものが聞こえた。

風の音?今日は少し風が強いからかな?わたしは足を止め辺りを見渡した。しかしこれといったものは無い。


「お姉ちゃん?何してるの?」


リリィに呼ばれハッと我にかえる。

気のせいだったのかな?呼ばれてるし、早く行かないと。


この日の街はとても静かだった。不気味なほどに。

次回予告

ソフィア、初めて妹リリィと向き合う夜。

笑顔の裏に隠された、幼い頃の傷と葛藤。街には不穏な影もちらつきはじめる。

ソフィアの初めて明かされる過去は…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ