静かな風との出会い
前回のあらすじ
スピネル王国に訪れたフレディたち。そこで出会った話せぬ少女、ソフィア。
ソフィアの気ずかいにより、その日は家に泊めともらうことに。翌日目が覚めると外はすごいことになっていた。
「フレディ!グレース!外、凄いことになってるよ!」
窓の外を見てみると、何本もの倒された木。どこから飛んできたかわからない瓦礫など大量のものが散乱していた。昨日の強風により吹き飛ばされたのだろう。
「すごいことなってる…嵐が来たみたい…」
「こんなんじゃ外に出るのも一苦労だよ。向こうの川も雨で氾濫ギリギリみたいだし。」
ノアの指出す方法を見てみると、そこにはギリギリで氾濫していない川があった。今から雨が降ったら、きっと氾濫してしまうだろう。
「これじゃトルマリン王国に行けないよ…」
話していたコンコンと部屋がノックされた。
「ソフィア。」
『おはようございます。1つお聞きしたいことがあります。皆さんは旅をしているのですよね。どちらに向かわれているのですか?』
「俺たちはオブディシアンの荒地、トルマリン王国の橋を目指してるんだ。」
ソフィアは少し考えた後、俺たちにこう話してきた。
『実はトルマリン王国へと向かう道が封鎖されてしまっているんです。』
「どういうこと?」
『外を見ていただければわかると思うのですが、昨日の大雨と強風で、周りのものが色々と壊れてしまったようです。トルマリン王国へ向かう道もかなり危険な状態で、封鎖されてしまったんです。』
ソフィアは少し困ったようにノートにかいてみせてくれた。
困ったな。オブディシアンの荒地へと続く橋には絶対にトルマリン王国に行かなければならない。そこが通れないとなると1度南に行ってから、また北へ進まなくてはならない。かなり遠回りだ。
「どうしよう…」
「かなり遠回りになってしまうわね。」
「…やっぱりそうだよね。」
『封鎖は1週間ほどで解除されると思うのですがそれでも長いですよね。』
「しばらくこの王国にいるってことになると宿とかも取らなきゃいけないしね。」
ソフィアは少し考えてから、ノートに丁寧な文字でこう書いた。
『よければ封鎖が解除されるまでの1週間ここでお過ごしになられますか?』
ソフィアの提案は正直すごく嬉しかった。しかし、いつまでもこの場所に居させてもらうのは申し訳ない。
「本当にいいの?迷惑じゃないかな?」
『わたしは構いません。この家には私1人しかいませんし。』
「この家ってソフィアしか住んでないの?家族とかは?」
ノアがそう質問した。ソフィアはこの家に1人だと言うことを、まだ2人には話していないらしい。
『この家はわたしの家族の別荘で、両親と妹は別のところで暮らしているんです。』
「そうなんだ…」
しばらくの間誰も話さず、ただ沈黙がその場に流れた。そんな中グレースが話し始めた。
「一旦外に出ましょう。様子も気になるし、少し街を見てみましょう。」
「うん、そうだね。」
外に出てみると、それはそれはひどい状態だった。そこら中の植物が吹き飛ばされ、瓦礫の下敷きになっていた。
『あちらに少し歩くと街があります。案内します。』
ソフィアに案内してもらい街に着いた。
街の達はそれぞれ昨日の被害の後片付けをしていた。家の1部が破損していたり、ほとんどが壊れていたりなど被害の規模は様々だ。
「大変なことになってる。」
「あれだけひどかったんだもの。壊れていて当然よね。」
「重い…」
ふと目をやると、小さな少年がその場にあった瓦礫をどかそうと一生懸命にものを運んでいた。かなり服はボロボロで洗いざらしたような跡がある。
少年は、必死に瓦礫を動かしながら、何度も手を滑らせていた。
それでも誰にも助けを求めようとはせず、唇をきゅっと噛んで何かに耐えているようだった。
「大丈夫?手伝おうか?」
そんな姿を見ていられるず、思わず声をかけた。
「大丈夫だよ。自分で出来るし。」
「でもすごい大変そうだったから…」
「大丈夫だよ…僕、ひとりでできる…」
そう言う少年の声は、どこか無理をしているようで、でも誰にも見せたくないものを隠しているようだった。
「やっぱり手伝ったほうが…」
「いいってば!自分でできる!わっ…!」
「危ない…!」
間一髪のところでグレースが彼も支えてくれた。
「大丈夫?無理しちゃダメよ。」
「俺たち手伝うからさ。一緒にやろう。」
「…じゃあ、お願い。」
少年は少し不服そうな顔をしていたが、結果的に俺たちと一緒に作業することになった。
「どれとかすればいい?」
「そこにあるやつ全部向こう側にやって。あと、それから屋根も修理しないといけないから。」
「わかった。じゃあ俺とノアはこの瓦礫を向こうにやって、グレースは屋根の修理を手伝ってあげて。」
各自配置につき作業を始める。瓦礫を運んでまた運んで、それを繰り返しているうちに、家の前はあっという間にきれいになった。
「グレース!屋根の方どう?」
「もう少しで終わりそう。直す場所もそんなに多くなかったし。」
屋根のほうの修理ももうすぐ終わるらしい。ソフィアは、それをそばでずっと見ていた。手に持っているノートギュッと握り締めて。
「終わったよ!これで大丈夫?」
「…まぁ。」
「じゃあ俺たちは行くね。」
俺たちはその場を去った。手伝っていたらもう昼を過ぎていて、何か腹ごしらえにご飯を食べようと言う話になった。
「お腹すいたな〜なんかみんなで食べようよ!ソフィア、この辺でおいしいご飯屋さんとかある?…ソフィア?」
「…あっ…」
「どうかした?」
そう聞くとソフィアノートを開き、何かを書き始めた。
『なんでもありません。ご飯ならちょうど大通りを真っ直ぐ行ったところの定食屋さんが美味しいってよく言われてます。』
「ならそこに行こっか!」
「ここのご飯美味しーい!」
定食屋さんについて早速ご飯を頼み、食べる。
「そういえば、フレディお金持ってるの?」
「うん!この袋の中…に…あれ…?」
「どうしたの?フレディ?」
「…足りない。」
「え。そういえば、エメラルド王国に行った時もあんまりお金ないって言ってたわね。私もフレディの分払うほどお金もってないわよ。」
「僕が出そうか?家からお金持ってきたからさ。」
そんなやり取りをしていたときだった。ガラッと扉が開き、ひとりの男が店に入ってきた。
一目で旅慣れた者と分かる。擦れたブーツと年季の入ったコート。表情は読めないがどこかただ者ではない雰囲気をまとっている。
男は黙ってカウンターに近づくと、フレディたちの会話にちらりと目を向けた。
「…君たち旅人かい?」
唐突に声をかけられ、フレディは少し驚いたように答えた。
「どうしてわかったの?」
「その格好からして、この国のものではないだろう。エメラルド王国に行った時と言う会話が聞こえてきた。そこから推測するに、君たちは旅人だろう。」
「すごい…何者なんですか?」
「俺も、君たちと同じただの旅人さ。君たちはどこに向かっているんだい?」
「うん。トルマリン王国に行こうとしてるんだけど、道が封鎖されてて…」
男は静かに頷いたあと、店主に硬貨を数枚渡した。
「この子たちの分も。」
「えっ、そんな…!」
「気にするな。旅人同士、助け合いってやつだ。」
「…ありがとう。あなたも旅人なんですか?」
「まあな。あんたら、トルマリンを目指してるなら、馬酔木の道って名前、聞いたことあるか?」
「馬酔木の…道?」
男は微かに笑みを浮かべた。
「普通は通らねぇ。けど、封鎖されてる今、あそこを抜けるしかないだろうな。…命を賭ける覚悟があるなら、だけど。」
緊張が走るテーブル。ソフィアは静かにノートを開いたが、書く手が止まっている。
「…教えてくれないですか?その道のこと。」
フレディの問いに男はゆっくりと腰を下ろし、目を細めた。
「いいだろう。話してやるよ、馬酔木の道のことを。」
次回予告
封鎖された道を前に現れた、謎めいた旅人。
彼の口から語られる「馬酔木の道」は、通った者の命を必ず奪うと噂される禁忌の道だった。それでも進まねばならないフレディたち。その決断の先に待ち受けるのは、予想を超える静けさと…底知れぬ恐怖。
馬酔木の道とは一体何なのか…




