話せぬ少女
前回のあらすじ
アンフェニとの戦いに敗れ、意識を失ったフレディ。そこで再び、正体不明の彼と出会う。
彼は仲間のことやフレディの今を優しく問いかけるが、正体は明かさぬまま姿を消してしまった。
そして、新たに現れた少女ソフィアとの出会った。
「この子は、ソフィアよ。」
「ソフィアか、よろしくね。」
「実はフレディが倒れたあと、あの場所でソフィアと出会ったの。」
「フレディ!」
いくら声をかけても返事がない。気を失っているようだ。
「グレース!あいつら追いかけてくる!」
「わかったわ。でも深追いをしないで。あいつらすごく強かった。1人じゃ立ち打ちできない。」
「うん!行ってくる!」
どうしよう…この近く泊まれる場所もなさそうだし、街まではまだ距離がある。運んで行けるかしら…
どうしようか悩んでいると、近くで足音がした。振り向くと、そこには1人の少女が立っていた。
「あなた…なにこれ…?紙?」
少女は1枚の紙を渡してきた。そこには彼女の名前。そして近くに彼女の家があることなどが書いてあった。
「もしかして、家に連れて行ってくれるの?」
彼女は、首を縦に振った。そしてもう1枚紙を渡した。
『今の戦い見ていました。彼気を失っているみたいですし、よければ家に来てください。ここからだと5分ほどで着きます。』
そんなことが書かれていた。見ず知らずの人の家にお邪魔するのは申し訳ないと思ったが、今は状況が状況だ。お言葉に甘えさせてもらうことにした。
「ありがとう。それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかしら。」
「…グレース!見失っちゃった…ごめん。」
「大丈夫よ。それより今はフレディを優先しましょう。」
「うん。その人は?」
「この人はソフィアって言うの。家でフレディを休ませてくれるって。」
「そうなんだ。」
「あなたの家に案内してもらってもいいかしら?」
ソフィアはうなずき、家と案内してくれた。
家につきフレディをベッドに寝かせる。ノアがここまで運んできてくれた。
「ありがとう。助けてくれて。」
ソフィアはノートを取り出すと、何かをかぎ始めた。
『どういたしまして。彼は大丈夫なのでしょうか?』
その質問に対して私は答えた。
「とりあえず様子を見ましょう。そういえばまだ自己紹介していなかったわね。私はグレース。」
「僕はノア。よろしくね!」
『わたしはソフィアと申します。先程のオブリビオンとの戦闘、とてもすごかったです。オブリビオンを倒している人なんてあまりいませんから、なんだか新鮮な気分でした。』
ソフィアはそのノートに書き、私たちに見せてくれた。
ソフィアは言葉を話せないのかしら?でもこれはかなりデリケートな話だから、軽々しく聞くのも気が引ける。どうするべきか悩んでいると続けてノートに書き込んだ。
『わたしは今、声を出せない状態です。耳は聞こえているので大丈夫です。私が話すときはこのノートに筆談と言う形式で話させていただきます。』
との事らしい。なるほど。だからノートに書いてたのね。
「私たちの声は聞こえているのね。なら筆談で話しましょう。」
そう答えると、ソフィアは嬉しそうに笑っていた。
「そうだったんだ…ありがとう。俺はフレディ。」
『はじめまして。フレディさん。体のほうはもう大丈夫なんですか?』
「うん。だいぶ体も楽になったよ。殴られたところはまだちょっと痛いけど…でも結構大丈夫になったよ。」
『ならよかったです。もしよろしければ、本日は泊まって行かれませんか?あなたの体のことも心配です。もうすぐ夜になりますから。』
「いいの?」
『はい。おもてなしはできませんがそれでもよければ。』
ソフィアは優しい笑顔でそう話してくれた。たしかにもうすぐ夜になる。しかもここから街までは少し遠く、歩いている間に夜が深けてしまうだろう。
「じゃあお願いしようかな。」
お言葉に甘えて今日は泊まらせてもらうことにした。
夜。外では風がゴーゴーと吹き、激しい雨が降り注いでいた。窓がギシギシと音を立てるほど強い風だった。雨も強く遠くの方で雷が鳴っているのがわかった。
…寝れない…今日、昼間にかなり寝てしまっていたからだろう。
2人は寝てるし、しばらく寝れそうにないから、少し家の中を歩いてみようかな。
夜とは言え、あまりに静かすぎて不気味だ。というか人がいない感じ。
遠くの方でピカッと雷が光る。
「すごい雷…あれなんだろ…?」
廊下の先に光を見つけた。気になって覗いてみると、そこにはソフィアがいた。
「…ソフィア?」
「…!」
「ごめん脅かすつもりはなかったんだ。」
謝るとソフィアはこちらに来るように手を招いてくれた。
「何してたの?夜遅いけど…」
机の上には、分厚い本が何冊も置かれていた。
「この本…」
『わたし、演劇が好きなんです。なのでよくここで本を読んでいるんです。』
「演劇って、舞台の上でセリフを言ったりするあれ?」
ソフィアはコクリとうなずいた。
「それにしても、この本分厚いね…どんな内容なの?」
『今読んでるのは、演技が下手な女優さんが世界でも大人気の役者になるって言うお話です。面白いんですよ。声も出せないのに、演劇が好きだなんておかしな話ですよね。』
「…そんなことないと思うよ。この本の内容を話していたときのソフィア、なんだかすごく楽しそうだった。好きなものを好きっていうこと実は難しいと思うんだ。だからすごいと思う!」
そういうとソフィアは少し嬉しそうな顔した。
『ありがとうございます。そう言っていただけるとなんだか嬉しいです。』
「少し見て行ってもいい?詳しい話ちょっと気になるし!」
『いいですよ。もしよければ一緒に読みますか?』
「いいの?!ありがとう!」
『では、はじめの方から見ていきましょう。』
ソフィアと一緒にいろいろなもの本を読んだ。あまりの分厚さに最後まで読むのはかなり大変そうだったけど、内容はとっても面白かった。話してるときのソフィアは楽しそうで、なんだかこちらまで嬉しくなった。
「ありがとう!ソフィアは毎日読んでるの?」
『はい。毎晩。わたしの妹、演劇をやっているんです。親は、妹にばかり期待していて、わたしのことなんてどうでもいいんです。妹は頭も良くて運動もできて、愛想も良くて私とは正反対。みんなに好かれるようなそんな存在なんです。』
話をしてくれたソフィアは悲しい目をしていた。そして同時に自分も誰かと比べられていたようなそんな気が…気のせいかな…?それよりも今はソフィアの話に対してどう答えるか考えていた。
「ソフィアはすごくいい人だと思う。俺のことを助けてくれたし!」
それが今の俺にできる精一杯の答えだった。
『怪我をしている人を放っておくなんてできません。当たり前のことをしたまでです。』
「それでも、ありがとう!」
感謝を伝えると、ソフィアは先程の悲しい目から少し明るい目になったと思う。
そして、1つ気になっていたことがある。それを聞いてみることにした。
「…この家ってソフィア以外の人はいるの?妹さんとか。」
『この家には私しかいません。今は来ているので4人ですが。普段は私1人で生活しています。』
「家族は?」
『この家は別荘なんです。わたしが家にいると暗い雰囲気になるって言われて。それからずっとここに1人で暮らしてます。』
ここに1人で…この家はノアの屋敷ほどの広さではないが、普通の家に比べると広い方だと思う。その家に1人で生活なんて…寂しいに決まってる。
「寂しくない…?」
『もう慣れました。家族とは時々街などで会いますし、寂しさはほとんどありません。』
「そっか…ごめんね。変なこと聞いて。」
気づけばかなり時間が過ぎていて、俺も眠くなってきたから、その日はそのまま別れて寝ることにした。
妹と比べられてるか…なんでだろう。他人事とは思えない。
しばらくすると睡魔に襲われ、眠りについた。
「ふぁ〜2人ともおはよう。」
「おはよう…フレディ…」
相変わらずグレースは寝起きが悪いみたい。ノアはもう起きていたのかベッドにはいなかった。すると、慌てたノアが部屋に戻ってきた。
「フレディ!グレース!外、凄いことになってるよ!」
次回予告
ソフィアとの出会いで、少しずつ互いの心に踏み込んでいくフレディ。
しかし、静かな夜は明け、朝になった外では異変が。
「フレディ!グレース!外、凄いことになってるよ!」
一体何が待ち受けているのか…




