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Let'sパーティー!

社交パーティーの幕開けだ。


屋敷の門が開き大勢の貴族たちが入ってくる。あまりに多く、数えられないほどだ。

メイン会場となる1階は、数多くの貴族が談笑したり、料理を食べていたり、していることは様々だ。


「グレースどこだろ?」


先程からグレースの姿が見当たらず会場のどこを探してもいない。


「やっぱり恥ずかしいわよ…」

「お似合いですよ。フレディさんの所へ行きましょう。」


グレースとエリサの声がする。

見るとエリサに手を引かれフレディの方へやってくるグレースの姿があった。


「グレース、その服すごい似合ってるよ!」

「…あんまり言わないで。」

「なんで?こんなに可愛いのに。」


フレディは不思議そうに首をかしげた。それを見たグレースはエリサの後ろに隠れ、彼に顔を見せないようにするのに必死だった。


「なんで隠れるの?俺、嫌なこと言っちゃった?」

「そんなんじゃないけど…とにかくこっち見ないで!恥ずかしいから!」


2人のやり取りをエリサは嬉しそうに見ていた。


「おふたりは本当に仲がよろしいんですね。」

「そんなことないわよ。」

「グレース、俺のこと嫌いなの?俺は好きだよ!」

「そういうところよ。」


グレースはそう呟く。しかし、フレディにはあまり聞こえなかった。パーティー会場はかなり賑わっており、近くにいても会話がギリギリ成り立つほどなのだ。そのため小さい声はほとんど聞こえない。


「パーティーは夜12時まで行われます。もし疲れてしまわれたら、ご自由にお休みください。」

「12時まで…結構長いね。」

「はい。半年に1回行われるパーティーなので、それなりに気合いが入ってるんですよ。」


半年に1回。盛り上がらないほうがおかしい。


「あら?あなたたちは…」


声をかけてきたのは先日街で会った貴族、クロエだ。クロエは彼らに向かって早足で近づいてくる。


「なんであなたがここにいるんです?このパーティーは招待された貴族しか参加できないものですけど?」

「クロエさん、こんにちは。実はおふたりには代理で来ていただいているんです。」

「なぜこんな2人…私に、あんなに失礼な態度をとっておいて…!」

「あの時は、ごめんなさい!俺、エリサが困ってるように見えて、ついついあんなきつい言い方してしまって…」


クロエは黙ってフレディの方を見つめていた。その表情はかなり不満そう。

それを見たフレディは何とかこの気まずい関係を終わらせるために声をかけた。


「お詫びをさせてくれませんか?」

「お詫び?」

「はい。あの時すごい失礼な態度取っちゃったんで…」

「…なら、私と一緒に踊りなさい。」

「踊るんですか?」


予想外の返しに俺は驚くフレディ。

しかも彼はダンスをできるかどうかすら怪しい。運動神経はずば抜けている方だ。オブリビオンを1人で倒せるぐらいなのだから。

しかし、ダンスができるかは別だ。


「私、今日本当はもう1人、男の子のお友達と来る予定だったんです。しかし急用で来られなくなってしまいましたの。だからその相手として、あなたが踊ってくださいな。」


クロエは今日、一緒に踊る相手がいないわけだ。断れる雰囲気もなく、彼は彼女と一緒に踊ることを決意した。


まもなくして、音楽が鳴り始める。チェロやバイオリンの美しい音色が、ホール全体に響く。


初めてのダンスに惑いまくるフレディ。ステップを踏むので精一杯だ。完全に完全に相手にリードしてもらってる。


「あなた踊ったことがありますの?ずいぶんと下手ですけど。」

「今日が初めてです…」


彼は少し目をそらしながら、そう言った。


「そのようなことでよくお詫びをと言えたものですね。仕方ありませんわ。これでは私も恥をかいてしまいます。私の動きに合わせて踊ってください。」

「はい!わかりました。」


相手の動きに合わせて精一杯踊る。なんとなくだが、形にはなってきた。

果たして、これが合っているのかはどうか、彼には全くわからない。

曲も終盤へ向かい、もうあと一踏ん張り。

そんな時、クロエが体制を崩して転びそうになってしまった。

フレディはとっさに体勢を変えて、転ばないように支えた。


「大丈夫ですか?怪我は?」

「…大丈夫ですわ。」

「ならよかった。」


曲も終わり、何とか無事踊りきることができた。


「緊張したけど、何とか取れてよかったよ。」

「初めのほうはできるかヒヤヒヤしたけど、案外できてたわね。」

「はい。とてもお上手でした。」

「ありがとう。」


彼がクロエの方を向くと、何やら考え事をしているようなそんな顔している。 のが見えた。


「クロエさん、リードしてくれてありがとう。すごいきれいな踊りだったよ。俺、多分足手まといになっちゃってたけど…」

「…許してあげます。」

「え?」

「だから、この前の無礼を許してあげると言っているの!」


そう言うとクロエは以前と同じように、ハイヒールをコツコツと言わせながら去っていった。


「これっていいんだよね?」

「本人が満足してたからいいんじゃない?…それにしてもずいぶん楽しそうに踊ってたわね。」

「うん!できるか不安だったけど、楽しかった!」

「…私を差し置いて…」

「グレースも一緒に踊りたかった?なら、今から踊ろうよ!」

「えっ…?いいわよ。別に…私、ちょっとお手洗いに行ってくるから。」

「あ、うん。わかった。」


グレースは足早に去っていった。

それを見てエリサがクスクスと笑っていた。


「なんで笑ってるの?俺なんか変なことしたかな?」

「変な事はしてないけど…ハハッ…面白い。」

「何か、エリサのそんな笑顔を初めて見たよ。」

「あっ…そうですか?」

「うん。なんか楽しそう。俺はその笑顔の方が好き!」

「…わたし、他の貴族の方々に挨拶していきます。失礼します。」

「あ、いってらっしゃい。」


エリサも行ってしまい、1人その場に取り残されるフレディ。

(暇だし、料理でも食べようかな。ここのご飯ほんとにおいしいんだよな。どれから食べようかな…)


彼は1人、食事を堪能した。


----------


「お腹いっぱい。それにしても、2人とも帰ってこないな。」


料理も食べ終わり、とうとうやることがなくなってしまった。2人はなかなか帰って来ない。やることもないので、2人を探しに歩き回ることにした。


フレディが少し歩いていると、庭のほうの椅子に座っているエリサを見つけた。


「エリサ!ここにいた。何してたの?」


エリサから返答はなく、ただ星空を見上げているだけだった。

何度か呼びかけると、エリサはようやく返事をした。


「すいません。フレディさん。ぼーっとしていました。」

「それならいいけど…もしかして疲れてる?今日準備とかで忙しかったもんね。」

「心配してくださりありがとうございます。ただ、ここで星空を見るのが好きなので来ていただけです。」

「確かにすごく星が綺麗に見えるね。」


エリサのことについて聞くなら今しかない。彼はそう思った。このパーティーが終われば、彼らはもう会えなくなるかもしれない。

周りには誰もいない。絶好のチャンスなのだ。


「エリサ。少し話があるんだ。いいかな?」

「話ですか?はい、構いませんが。」

「エリサのことについて教えて欲しいんだ。」

「わたしのことですか?」

「うん。…その日記の事とか…」

「日記って…もしかして僕の部屋…じゃなくてわたしの部屋にあるやつ読んだの!?」

「ごめんね!悪いことってわかってたんだけど…!でもエリサのことについて知りたかったんだ。君がどんな悩みを抱えているか。」


2人の沈黙が流れる。双方、どう言えばいいかわからないと言った状況だ。


「…日記の内容、全部読んだ?」

「ほとんどは、かな。」


エリサは黙り込んで話さなくなってしまった。デリケートな話題だ。話に詰まるのも仕方がない。


「もし話しにくいなら、俺から話すよ。」

「何を話すんですか?」

「たいして話せることもないんだけど…俺の事について。ちょっとだけ話そうかなって。」


エリサが話しづらいなら、話しやすい雰囲気を作ればいい。そうすれば話してくれるかもしれない。そう思い、フレディは自分のことについて話し始めた。


「俺は記憶がないんだ。記憶喪失ってやつ。オブリビオンの仕業かもしれないし、ただの事故かもしれない。本当の事はまだわからないんだ。」

「フレディさんが記憶喪失?」

「うん。自分が何者なのかわからない。だから、自分を見つけるために旅に出たんだ。その途中でエリサに出会った。」

「旅ってどんなところに行ったの?そこにお花畑ってあった?」


かなり食い気味に聞いてくるエリサ。お花畑と言うのは、エリサが読んでいたあの絵本に登場していたもの。

しかし、今までの旅路にはそんなものはなかった。正直にそう答えるとエリサは少しがっかりしていた。


「そうですよね。あんな創造の世界あるわけないか…」

「わかんないよ。あるかもしれない!俺がまだ行ってないだけで。……どうしてそこまでお花畑に行きたいの?」

「約束したから。…聞いてくれますか?」

「うん!どんな話でも聞くよ。」

「…僕…違う、わたしは…」

「俺の前ではありのままでいてくれていいんだよ。本当の君を見せて欲しい。」


「……いいんでしょうか?」

「俺は、君を知りたい。本当の君を。」

「…じゃあ、僕について。僕と言う存在。ノアとして話します。」

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