旅立ち
前回のあらすじ
街に突如現れた謎の怪物「オブリビオン」。記憶を失った少年フレディは、自分の正体もわからないまま、その脅威に立ち向かう。果たして彼は何者なのか?命懸けの戦いの後、ミナミはフレディに問いかける――「君は、一体誰?」
2話です。よろしくお願いします!
「…ねぇフレディ。フレディって何者なの?あの剣術普通の人じゃ有り得ない。」
「自分でもわかんなくて。なんというか、剣が体に馴染んで勝手に動いてっていうか。」
ただあの2人を助けたいって思って、そしたら頭の中から声が聞こえてきて、それで剣を握ったらいつの間にかって感じ。
自分自身でさえ理解できないことをなんとミナミに説明したらいいかわからなかった。
「うーん。ますますわかなくなってきたな〜とりあえずもう遅いし帰ろうか!」
「うん。そうだね。」
「ただいま〜」
「おう!おかえり!」
「あらおかえりなさい。あっ、あなたフレディくんね。話は聞いてるわ。ちょっとの間よろしくね。フレディくん記憶が無いって聞いたんだけど」
「はい。迷惑かけるかもしれませんが、よろしくお願いします。」
「もしもは何かあれば私たちに言って協力させてもらうから。」
「ありがとうございます。」
暖かい家族に迎えられてほっとして、緊張がほぐれた。
正直俺が来てどんな反応されるかわかってなかったから、嫌な反応されたらどうしようとかネガティブな方向にばかり考えていたがそんなの杞憂だった。
すると、ミナミのお父さんがターフェアイト王国について話した。
「そういえば聞いたか?ターフェアイト王国のこと。」
「あぁ、あれね。大火事だったそうよね。」
「あぁ、国民や王族含め全員亡くなったらしい。1面焼け野原だったそうだ。」
「ターフェアイト王国って隣の国だよね。」
「あぁ、3日前全焼して無くなった。」
「えっ、こわ…」
ターフェアイト王国聞いたことがある。
耳鳴りがする。聞いたことがあるのに思い出せないなんだろう。
この感じなんと言うか…
「フレディ!」
「え?」
「どうしたの?ボーッとして。もしかして、何か思い出したの!」
「うーん…わからない」
「そっか…まぁ気長に考えよ!」
「ミナミ、フレディくんを部屋に案内してあげて2階の空き部屋掃除しといたからね」
「はーい!じゃあ行こっか!フレディ!」
「うん。ありがとうございます。」
「ここがフレディの部屋ね!」
「ありがとう。」
「まぁゆっくりくつろいでよ。私下にいるから何かあったら言ってね!」
「うん。」
ミナミ去った後、ソファに腰をかけ、今日あった出来事を思い返していた。なぜあの場所で目が覚めたのか。
そして妙に馴染むこの剣。頭の中に響く誰かわからない不思議な声。
そしてターフェアイト王国のこと。思い出そうとしてもどうしても思い出せない。思い出そうとすると、頭が痛くなってしまう。どうすればいいんだ。
「フレディ!晩御飯できたって〜!」
「わかった。すぐ行く。」
ミナミ達は、ターフェアイト王国のことを知ってた。少し話を聞いてみよう。
「おかわりもたくさんあるからいっぱい食べてね。」
「ありがとうございます。」
「母さんの料理おいしいでしょ!私、お母さんの料理大好きなんだ〜」
「すごくおいしいよ。ミナミ、少し聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「うん?」
「ターフェアイト王国ってなに?」
思い切ってターフェアイト王国のことについて聞いてみた。するとミナミは少し考えて答えた。
「ターフェアイト王国は私たちが住んでいる国、タイガーアイ王国のここから見て東にある国だよ。覚えてるかどうかわかんないけど、この地方は8つの国があるの。
前は戦が絶えなかったけど、今はオブリビオンが出たことで一時的に休戦状態。
すべての国が一旦戦いをやめてオブリビオンに集中することになったの。 今はもう7つしか残ってないけどね。」
今ミナミが言ってくれた内容で覚えている事はほとんどなかった。
やはり俺は名前以外のものをほとんど全て忘れてしまっているらしい。
「ターフェアイト王国は前はすごく強い国でねこの地方を統一するのはターフェアイト王国だ。って言われてたんだ。なんで滅んじゃったのかはわかんないの。さっきお父さんが言ってたみたいに。ある晩ものすごい火事が起こって。そのままなくなっちゃったって。わかるのはこれぐらいかな。」
「そっか。ありがとう。」
ご飯を食べた部屋に戻り、さっき聞いた話を踏まえていろいろなことを考えていた。
考えれば考えるほど懐かしいような何とも言えない不思議な気持ちになる。
今日は疲れたから、このまま寝ようそう思いベッドに入り込んだ。
炎音がする。街を燃やしている。嫌になるほどの熱さと赤い光。
そしてそこら中で蔓延るオブリビオン。
「ハァ、ハァ、ハァ…」
目の前にはピンク色の髪の毛をして、全身に黒いローブを身にまとった女の人が立っていた。
例えるならまるで本の中に出てくる魔女のようだ。
体が鉛のように重く座ることで精一杯。
すると目の前に立っていた女の人がそっと耳元で何かを呟いた。
「なら、奪ってあげる。」
フレディ「はっ…!」
はっと目を開けるとそこは部屋のベッドだった。額には嫌な汗をかいており、まるで夢を見ていたのに夢じゃない。そうな感覚だった。
さっき見た夢の景色どこかで見覚えがあるような気がする。
「あの場所…」
そばにあった剣を見つめ、これからの歩む道を決断した。
「おはよ〜フレディ」
「ミナミおはよう」
「2人ともおはよう。ご飯にするわね」
「フレディ昨日はよく眠れた?」
「あっ、うん。お陰様で」
「なら良かった!朝ごはん食べたら早速仕事手伝ってほしんだけどいいかな?」
「うん。任せて。」
ミナミと少し話をした後ご飯を食べて仕事に出かけた。
「その箱はそっちにお願い!」
「了解。」
ミナミと一緒に店の外にある箱を中に入れたり、飾り付けたりなど着実に仕事終わらせた。
思いのほか仕事が捗りちょうどお昼回った位の時間にすべての箱を片付け終わった。
「ふぅ〜!終わった〜!いや〜フレディがいてくれて助かったよ!ありがと!」
「ううん。俺は言われたことをしただけだよ。」
「そういえば、フレディこれからどうするの?記憶喪失のままなわけだし…」
「うん。その事なんだけど…俺やりたいこと見つけたんだ。」
「やりたいこと?」
「正確にはやらなきゃいけない気がすることだけど…オブリビオンを倒す。」
「えっ…オブリビオンを…?」
俺の話を聞くとミナミは目を大きくして驚き、まるで本気で言っているのかと言うようなそんな目でこちらを見ていた。
「オブリビオンを倒すって相当大変なことだよ。フレディの剣術ならできるかもしれないけど…でも危険じゃない?」
「わかってる。でも…やらなきゃいけない気がするんだ。」
「どうして?なんでそんなふうに思ったの?」
「実は昨日夢を見たんだ。」
昨晩見た夢のことをミナミにこと細かに話した。するとミナミは少し微笑んでからこちらを向き直す。
「…本気なんだね…わかった。サファイア王国とオパール王国の国境にある小さな廃墟。グラジオラス邸って言われてるんだけどあそこに行くとオブリビオンに襲われるって噂があるの。」
グラジオラス邸。初めて聞く名前だ。
「元は誰かの屋敷だったみたいだけど…突然家主がなくなって、なんならそこにあったマラカイト帝国も消えたみたい。本当かどう化はわかんないけどね。」
「ありがとうミナミ。俺行ってみるよ。」
「うん。ここからずっーと北に歩いていくの。ものすごーく遠いの。この地方の1番北にある場所だしそれにこの国は1番南だからね。」
「頑張ってみるよ」
「約束だよ!」
ミナミと指切りをして約束を交わした。
絶対にオブリビオンを倒してミナミと再会する。心に強く誓った。
あっという間に月日は流れていき、1週間が経った。
「お世話になりました」
「こちらこそだ。仕事手伝ってくれてありがとな」
「すごく助かったわ」
ミナミのお父さんの腰の調子も元に戻り、俺はこの街を出ようとミナミ達と別れを惜しんでいる最中だ。
「フレディ気をつけて行ってきてね」
「うん。」
「あと、これ持ってて!最低限の食料と、あとお金。ちょっとしかないけどね。」
ミナミが袋を手渡してくれた。そこには食料、お金、いざと言う時に使えそうなロープなどの物がたくさん入っていた。
「えっ、こんなの貰えないよ!」
「いいよ。手伝ってくれたんだし、それに、オブリビオン倒してくれるんでしょ?それに比べたら安いもんだよ!」
「ありがとう。ミナミ。絶対オブリビオンを倒してみせるから。…ミナミ?」
「…ちょっと寂しいなって。せっかく会えて友達になって、これからも一緒に話したり笑ったりするのが当たり前みたいに思ってた。」
「ごめんね。自分勝手で。ミナミと出会えてよかったよ。」
「いつかまた会えるって信じてるよ。その時はオブリビオン倒したって言う良い報告待ってるから!」
「うん!行ってくるよ!」
「いってらっしゃい!」
大きく手を振りミナミ達と別れた。街を出て、人の影がなくなるまでミナミは手を振ってくれていた。
暖かく優しい人が多い街。本当はもっと一緒に居たかった。けど、それを後にして俺は旅立つ。オブリビオンを倒すために。
今から向かうのは言っていたグラジオラス邸。
みんなの為にも自分のためにもこの旅で全て見つけてみせる。
ひたすら北へ進んでいく。
しばらくすると小さな街が見えてきた。
「ここは…」
次回予告
暖かな街ターフェアイト王国を旅立ったフレディ。歩いていくとそこには小さな村がありました。
次回は火曜日更新予定です。