異世界転移②ヤンキー無双
警戒しながらこちらの様子を伺っていた群の中の数体から、言葉の様な呟きが漏れる。
「ゲント?メス?……………ォタ…イ?……ニ?セェ?ゾ?」
「メス……………ホシ…」
「メス……………クヮ…」
「メス……………ザス……」
「ゲント…メス…グナ…ホシ…厶イ…ヒヒッ♪…ムカットクゥ♪」
全ては聞き取れないが、言語的には近いのかも知れない、ニュアンスで分からない単語も有るが、奴らの言葉の意味もある程度は分かる、目を…表情を見れば明らかだ。
嫌らしいニタニタ笑い、どこの国、世界であれ女をそんな目で見る悪漢に言葉は必要無いのかも知れない。
最初に女の声を聞き色めき立った数匹の内一体が暴走する、欲望に忠実なのか、理性が飛んだのだろう。
「イヒッ♪ワガ!ゲントメス!ムカットクゥ♪」
身体は小さいが、その動きは敏捷で、アッと言う間に美咲に詰め寄る。
周りの子鬼達から抜け駆けした個体への文句の様な怒鳴り声も飛び出すが…
美咲の太腿しか見えていないのだろう、飛びつこうと駆け足でそこを目指し、周囲は見えていない。
醜悪な初めて見る小さな怪物への恐怖で、美咲は身動きも取れず固まったまま小さな悲鳴を漏らす。
「嫌ぁ!ヒィッ!」
「美咲ちゃん!このっ!バケモノっ!」
慌てて反応した英二が駆け寄り、小鬼の腹の部分に前蹴りを食らわせる!
「グェ!」
カウンター気味に食らったせいで派手に数メートル吹っ飛びゴロンと地面に倒れた。
…が…
周囲の小鬼達がドッっと爆笑する。
中には倒れて寝転がる小鬼を指差して涙を流しながら笑う者も…
恐らく…この群れのリーダー格である黒緑のツヤツヤした肌の、金属製の短槍を持った子鬼が涙を拭きながら、メスに群がろうとしていた六体に指示を飛ばす。
「ヒィ〜ヒィー♪ハッハ♪…………サッ!オス!ザスパ!」
不思議な事に…メスだメスだと沸いているのはその六体だけで、他の十数体は好色な視線を、或いは好食とでも言うべきか?興味ぶかげに観察する個体や…
正人達の持ち物を遠目に物色中の者、珍しい被服や小道具、リュックサックなどの袋に視線を向けている。
それぞれ興味の対象が違うのかも知れない。
厄介な事にリーダーの黒色の子鬼は腰巻と槍のみの出で立ちだが、邪悪でで狡猾な知性を感じさせる眼差しでその目は愉悦に輝き、相当な知性も感じさせる。
そしてもう一匹…
青白いナイフを持つ板金鎧の小鬼はかなり物騒で、剣をブンブンと振り回しながら、この四人で一番身体も一見大きく強そうな相手、正人をニヤニヤと見つめながらリーダーの方にチラチラと視線を送っている。
武器のサイズも鎧のサイズも人間用では無い。
やや雑な作りでは有るが、真新しく綺麗で、他の者達の様な錆び付いた装具や腰巻に棍棒の様な…
そんな貧相な物では無い。
全体を見回せば一見、蛮族の様にも見えるのだが…
その、他よりもかなり大柄な小鬼は、自分で作った武具を試したい血を吸わせたい、そんな意志と邪悪な欲望も感じさせる。
他の子鬼や少し大き目の、黒色のリーダーよりも更に一回り大きい為、腕にも自信があるのだろう。
小鬼達をよくよく観察すれば、その性向にはかなり個体差があるらしい、とは言え完全に恐慌状態に陥っている、正人達にそんな余裕は無い。
六体の視線が攻撃をして来た英二に集中する。
蹴り飛ばされた小鬼もダメージはそれ程無い様で、腹を抑えながらも苦悶の表情で邪魔なオスを睨みつけ、怒りの咆哮を上げ、真っ先に英二に襲い掛かる。
「ゲントォ!オス!ザース!」
六体の動きは素早く、美咲には目もくれずに英二だけを狙い群がる。
リーダーの命令で目的が変わっている、只の乱雑な野党では無い、自分達よりも身体が大きな相手に対する訓練もしているに違いない。
小ぶりな手斧が英二の膝を狙い横薙ぎに掠める。
「なっ!なんだコイツら突然!痛っ!……がぁぁぁっ!くぁっ!止めっろっ!…あぁっ!ぎぃ………………!!!」
膝を棍棒で殴打され、崩され…引き倒され、地面の上で蹴られ殴られ、頭部への棍棒の一撃!
僅かにズレたが、こめかみを強打し意識を失ない動かなくなる。
正人も恐怖で身体が凍りつき、動けない、周囲を囲まれ、この状態で助ける事になんの意味が有るのか?…と考えてしまう。
「え…英二…助けなきゃ、助けなきゃ……あ…あ…あ…動け…俺の身体っ!」
涼夏はトランス状態が解け、英二が小鬼達に滅多打ちにされてるのを見て。
「ひぃぁぁぁぁ…」
小さな悲鳴を上げ瞳に涙を溜め、腰を抜かしてその場に尻もちを着く。
「あ…あ…あぅ」
そして美咲は…
◆ ◆ ◆
(だめ…英二が……死んじゃう………)
最後に喧嘩をしたのはいつだったろうか?……長い黒髪の少女…対立してしまった、近隣の学校の不良娘のボス…彼女に負けて喧嘩はしなくなった。
…違う、それは最後じゃない、ヤンキーとして心が折れた過去のトラウマではあったが…最後は短大に入ってアルバイトを始めて数ヶ月の時だった。
そう…ファミレスの駐車場で…厄介客の派手な女の二人組、連中が店内で怒鳴り始めたのは自分のせいなのに、美咲が親友と呼ぶ、彼女は責任者は自分だからと…
それでも責任を感じて同僚の男の高桑の後ろから、最初は陰で見ていた。
彼女が厄介客の二人組みに言われるままに、あられも無い格好で土下座を強要された時だった。
高桑が飛び出して行き彼女の変わりに、美咲はヤバそうだと感じて、直ぐにキッチンリーダーに報告して通報して貰った。
そもそも、自分が大人の態度で接客していれば我慢出来ていれば、あんな事にはならなかった。
大人しくハイハイと言う事を聞き、大人の態度で接客してさえいれば、胸にチクチクするものを感じながら警察を待つ為に再び裏口の様子を見に行った。
「もう止めて!高桑が死んじゃう!」
酷い…あられもない格好にされたまま…自分が傷付くのも厭わず高桑を身を盾にして庇っていたのは、本社から出向していた社長の娘、彼女の事は高校時代から知っていた。
かつては金持ちのお嬢様が遊び半分でヤンキーごっこなどと挑発して、彼女の通う高校仏教女子の縄張りまで遠征しブチのめした事もあった。
普通の女の子ではあり得ない程に派手に、凄惨にブチのめしたにも関わらずゾンビの如く立ち上がる彼女にうんざりした。
それでも実力が違い過ぎた。
結局その時は美咲の勝利に終わった。
その時は何も思わなかった。
名前の無い雑魚では無く、初めてそれなりに名前の有る有名なスケバンを狩れた事に興奮していたかも知れない。
その後、デパートで山間第一高校の赤髪の娘を袋叩きにし、次の標的を釣ることには成功したが、県内で三大悪と呼ばれる乱れた学校、山間第一高校の一つ年下の娘、その当時売り出し中だった【お嬢】に敗北して喧嘩はしなくなった。
それから暫く後…第一高校の赤髪の男が美咲の通う第二高校の少数の不良を始めとした山間市の悪ガキ全てを巻き込み、悪辣な暴走族に対抗すべく山間連合を打ち立てた時に…
再び再会した彼女…雅に謝罪した。
勿論ブチ切れ気味に説教はされたが許してくれた。
その時から親友になった。
短大入学後まさかアルバイト先で先輩として現れるとは思ってもみなかったが…ファミレスのバイト仲間、高桑を身を呈して庇う彼女を見た時に、この女には敵わないと思った。
自分も何かしなければ、と体が動き、気付けば厄介客のデカい女に飛び蹴りを食らわせていた。
警察が来る前に逃げられてしまったのが悔やまれる。
勿論その後、浜野に自分の仕事上の失敗を謝った、
彼女の返答は…
「あん?別にそんなん良いって下のモンのケツ拭くのは上の人間の仕事だしね、アンタはタダのバイトでアタシは一応本社の社員扱いだからさ、それにアンタがバカなのは前から知ってっし、でもどんだけ態度悪くても相手は客だよ?進学校出ててどうしてそんなにバカなの?しかも短大生でしょ?アタシ高卒だよ?別に怒ってねぇケド、それだけ教えてよ、ねぇ、それともウチの会社潰す為に同業者から送り込まれた工作員か何か?何を泣いてるのさ、バカのクセに」
泣いたのは罪悪感で押し潰されそうな美咲に対して、敢えて憎まれ口を叩く彼女の繊細な気遣いが嬉しかったから。
そう…
口は汚いが快く許してくれた。
器の大きい天性のリーダー
彼女はやっぱり親友…
素直じゃないけど良い奴…
人間的に負けた気がした。
(去年はボコってごめん…)
心の中でもう一度謝罪した。
だが…彼女の様に身を呈して彼氏を庇うなんて出来ない。
守ってくれた自分の彼氏が瀕死になっているのに、自分は何も出来ない。
英二の事は同じ中学出身だったが覚えて居なかった、
告白された時もそこまで意識はしていなかったが、自分の事を愛してくれる男なら悪くは無いのかもと、それだけだった。
だがすぐに美咲の方が夢中になった。
自己中で浮気性の元彼とは違い、英二は全てに於いて美咲を優先しプリンセスの様に扱ってくれた。
満たされ無かった自尊心、自意識が満たされて行くのを感じた。
彼の為に何したいとは思ったけれど、守られ甘やかされそんな機会は中々訪れ無かった。
だから今日は朝早く起きて、英二の為に弁当を作った。
疲れた顔をしながらも美味しいと優しく微笑んで、ほんの三十分程前の出来事なのに。
なのに、こんな、自分は、何も出来…
(ううん…違う…アタシは…違う…やり方が違う…あの娘と…浜野と同じにはなれない…だから…私のやり方でっ!)
怪物達に抗う決意、突然、筋肉に力が漲る。
(今でもスイミングスクールで水泳は続けている、長年鍛えたバネを駆使すれ、タイマンしかした事無いけど、多人数でも行ける!いや、行く…!)
獣の如く鼓動が早まる、血液が沸騰し身体中を駆け巡る。
かつての美咲に取って、喧嘩は進学校の真面目ちゃんとバカにしてくる不良をいたぶる為のゲームでしか無かった。
喧嘩は元彼の喧嘩を何度か見ただけで、実際した事など無い、見様見真似でしか無かった。
だが、全く問題無かった。
小人数のレディースのリーダーや他の学校の不良を気取る女を挑発しタイマンに持ちかけた。
みんな大した事は無かった、中学時代は真面目に水泳に打ち込んで県大会でも上位に食い込んだ。
その気になれば中学時代からずっと遊んでいるだけの不良なんかには負ける筈が無い。
自分の周囲に群がって来た仲間達が、自分の名前を使って恐喝をしているのも知っていたが、どうでも良かった。
小遣い稼ぎでもカツアゲでも何でもやれば良い、名前の有るヤンキーが釣れればそれで良い。
だが【お嬢】とタイマンして心は折れた。
怪物には敵わない
負けただけでは済まなかった。
【お嬢】の手下に辱めを受けた。
茶髪のチビ【ぺットの子鬼】の邪悪な笑顔が怖い。
思い出すと、今でも膝が震える程に、彼女達の残忍な行為は、それを平然として行う精神性は美咲には怪物に見えた。
それ以来、戦うのが怖くなった。
ファミレスの駐車場で浜野と高桑を助けに飛び出したのは、罪悪感で心が締め付けられる自分への言い訳でしか無い。
それでも…今は…
◆ ◆ ◆
(ここでやらなきゃ、好き放題されてきっと、鬼子村の話を事実だと考えれば、アタシはただ泣き叫ぶだけの女じゃない!それにもう、二度と怪物には負けたく無い、負け無いっ!)
美咲は自分が積み上げて来た物を信じる事に決めた。
自分の21年間共に成長して来た肉体にそっと声を掛ける。
【私の身体、信じてる】と…
そして、雄叫びを上げて気合を入れる、美咲の肉体から無色透明のモヤの様な物が立ち上り、周囲から見れば空間が屈折して見えたかも知れない。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!バケモン共ぉ!英二からっ!離れろぉぉぉぉぉ!!!」
野獣の様な遠吠えに、笑いながら気絶した男を蹴り続ける小鬼達の動きが止まる。
小鬼の一匹が、声の方向を見るが声の主はいない、何処に消えたのか?
不意に、炸裂音が周囲に響き、天からあの現人のメスが降って来た。
仲間の一体の首がおかしな方向に曲がり地面に倒れる。
何をされたらこんな形状に曲がるのか?それを考える間もなく、衝撃が走り、意識は途絶える。
◆ ◆ ◆
正人は目を見開き突然動いた状況を注視する。
(なんだ?!何が起こった?!美咲ちゃんが叫んで、一瞬消えた?!今は英二に群がっていた六匹が……三……今二匹になった…凄え…これなら…)
次々と…周囲に炸裂音だけが響き小鬼達が倒れて行く、首はおかしな方向に曲がっている、凄まじい威力の攻撃、ユラユラとモヤの様な物は見えるが、美咲の姿が現れるのは攻撃の瞬間だけ。
だが…小柄とはいえ生物の首を折る程の威力の蹴り、何らかの方法で強化されているとしても…
いずれ限界は来る、力に溢れ自在に駆け回る美咲は気付いていない。
知らないのだから仕方無い、不完全な言霊で引き出した仮初の力だと…
彼女の【肉体】はちゃんとした指向性が無くとも、美咲の【願い】に充分にそれに応えたのだ、それは美咲が自身の肉体のメンテナンスを欠かさず、鍛え上げ大切に扱って来たから肉体がその恩に報いるべくそれに応えたのだ。
だが…肉体の持つエネルギーには限界が有る、危機意識には充分に応えてくれた。
普通の人間には出来ない超人的な動きは、前借りの様な物かも知れない。
最初に美咲の身体を覆っていた不可視の霧が晴れた。
「これでっ!六匹めぇぇぇぇぇ!」
次々と仲間達が首を折られて地面に倒れる中、何も出来ずに慌ててキョロキョロしていたが、彼、この矮小な生物の意識が途絶える瞬間、頭部への衝撃と、現人の女の咆哮を聞いた。
◆ ◆ ◆
周囲を囲む小鬼達は慌ててすらいない、弱く愚かな仲間が数匹やられたところでどうでも良いのかも知れない。
リーダーは冷静に観察していた。
彼に先程のバカにした雰囲気は一切無い。
右腕の【鍛冶師】はあの中肉中背の黒髪の男が手強い相手だと思って奴を殺らせろと…コチラをチラチラと見ているが…
現人の中に戦闘に言霊の法を使う者はそれ程多くは無いが、別に珍しい事では無い、もうひとりのオスは怯えて動けないでいるのは明らか、身体は大きいがそれ程鍛えている風でも無い、見てくれだけの男で間違いない、警戒は必要無い。
洞窟で待つ、他種族のメスに腰を振るしか能のない愚民共への手土産は、あの腰を抜かして怯えているモッサリしたメス一匹で充分だろう。
警戒すべきは言霊の法、肉体に作用する術、内法を使うタイプのメスだけ、この辺で仕留めた方が良いだろう。
役に立たない者が多いとは言え、あまり部族の数を減らしたく無い、数は力、他の部族の者に舐められたくはない無い。
奴とオス二人は、殺してここで食べてしまえば良い。
リーダーは【鍛冶師】に意識を集中して強化の邪言を呟く…
【鍛冶師】の鎧と大きなナイフが薄っすらと赤い輝きを放つ…
それに気付いた【鍛冶師】が、リーダーを見てニヤリと醜い顔を歪める。
彼の、リーダーの邪言は現人達が言う所の外法…外部に作用する術を得意とする。
勘違いしていると不味い、オスは後で良い、言霊使いを仕留めろと命令を下す。
◆ ◆ ◆
「英二っ…」
駆け寄ってうつ伏せで昏倒している英二を仰向けにして、身体の怪我を確認する、出血は派手だが、幸い頭部への致命傷は避けられた。
膝の部分は青黒く腫れ始めており、石斧の一撃を受けたのかも知れない。
ここに来てやっと正人も、腰を抜かして動けないで泣いている涼夏に肩を貸し、英二の元へやって来た。
「うぅ…ひっく…田中君…酷い怪我…うぅ……」
「美咲ちゃん…ごめん…俺が動けないばっかりに…本当は…男の俺が真っ先に戦わなきゃいけないのに…!」
「大丈夫よ、英二は、皆はアタシが守るから、正人君は喧嘩した事無いんでしょ?仕方無いよ、アタシは結構慣れてるから大丈夫、天邪鬼は初めてだけどね、それに今ならやれそうな気がするんだ、身体から不思議と力が湧い来るから、ちやっちゃと、あの化け物全部片付けて戻って来るからさ!正人君は英二と涼夏ちゃん見ていてあげて!そうだ!これ使って!」
美咲は周囲を見回して奴らの一匹が持っていた簡素な石斧を拾い上げ正人に渡す。
「サイズが微妙で使いづらいと思うけど、何も無いよりマシじゃん?これで守ってあげて」
奴らの一匹が両手で使っていた石斧、片手で使うには重すぎるし両手で持つには小さすぎる微妙なサイズ。
(何年か前にやったファミコンゲームの…最初に買える竹槍の方がまだ使い安そうな気がする、せめてどうのつるぎ、くらいは欲しいよなぁ、さっきの美咲ちゃん消えてた様に見えたけど…)
「なぁ…美咲ちゃん…さっきの…」
疑問を口にした時…
鈍く銀色に輝く全身鎧を身に纏い、手に大振りなナイフを握った小鬼がガチャガチャと音を立てながらこちらに近付いて来るのが見えた。
何故か赤く輝く燐光に包まれてている様に見える…
鎧の小鬼を見て美咲は舌打ちをする、それでも対策を練る呟きが聞こえる。
「チっ…金属製の兜に鎧…厄介ね…アタシよりも小さいから、前蹴りでバランスを崩せば、鎧の重さで直ぐには起き上がれない筈、マウントポジションで露出してる顔面に…よし!行ってくる!」
◆ ◆ ◆
体色は他の小鬼と大差無いが、かなり大柄で身長は美咲と頭一つ分くらいしか変わらない。
正面から美咲が突進するのを確認して、胴体をガードせずに顔面の前、顔を隠す様にナイフを構えてガードする。
「ん?アレ?、さっきより身体のキレが悪い、重い様な、でも、それを待ってたのよ!予想通り!胴体ガラ空きぃ!後ろに倒れちゃえっ!」
相手は重そうな全身鎧。
小鬼の筋力は小さくともかなりのものではあろうが、バランスさえ崩せばこちらのモノ、勢いを付けた前蹴りなら…
元の世界にも奇跡や祈祷、或いは超常の能力を持つ者も僅かに存在はする。
だがどの様な現象も起こる過程は未解明にしろ物理法則に沿って起こる。
勢いが付いた美咲の蹴りで、小鬼がバランスを崩し倒れるのは確実な未来である、元の世界で有れば…
だが…ここは森が人の頭の中に警告を囁き…
願いを口にすれば肉体ですらそれに反応して答えてくれる……
異世界である。
ナイフで顔面をガードしている【鍛冶師】の顔は、醜く嘲りの笑いに歪み、勝利を確信していたのである。
ペコリm(_ _)m
美咲と雅の話は、R18シリーズ、昭和アウトローガールズ【犀角】で加筆再編集版を現在投稿しておりますので、18歳以上の方で気になる方ははそちらもチェックしてみて下さい(・∀・)




