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修行の日々①邪鬼の種類…沼地



マドカが言霊を使い、庵から少し離れた森の中を整地して、約三十分程で作り上げた修練場で初めての訓練を行った。


訓練場から三人で戻る途中の会話、正人の惨めな泣き言が周囲に木霊する。


その訓練の内容とは美咲と正人の組手であったのだが…


英二と涼夏は体力作りのランニングを終えた後に、少し修練場の様子を見に来たのだが、余りにも一方的で凄惨な有様に、目を背けながら…今は庵に戻って座学に励んて居る事だろう。


「うぅ〜酷い目に遭った…俺…やっぱり美咲ちゃん嫌いかも……ってか!やり過ぎだろう!見ろ!この顔面!……アレ?…でっ…でも!…鼻血の跡見ればどれだけ酷いかは分かるだろ?…何であんなに簡単に人の顔面を殴れるんだ!容赦無さ過ぎだろ!人の心が無いのかよ!」


そう、【地霊の加護】の回復能力で、蹴りを受けすぎて既に上がらなくなった筈の腕も元通りになり、素早いジャブを何度も打たれた青痣、打撲だらけの顔面も今は鼻血の跡を残すのみでとっくに回復している。


「えぇ?私に意地悪な態度取ってたの反省したんじゃ無かったの?直ぐに直るんだから別に良いじゃない!…あれぐらいの傷でさ、アタシの親友は女の子なのにあの顔面ボコボコの状態で殴り掛かって来たんだけど?…正人君と来たらさぁ、直ぐに目を瞑って、目を閉じたら余計に攻撃が当たるに決まってるじゃない!」


「あの状態で反撃出来るって一体どんな女だよ!どっかのヤンキー娘とオタク学生を一緒にしないでくれ!それに加護があっても痛いモンは痛いんだよっ!」


「そんな立派な身体してんだからさぁ、アタシのダーリンよか恵まれてるんだよ?…覚悟の問題よね、それにダーリン英二は正人君より弱いかもだけど、戦いで目は閉じないと思う」


それは美咲の言う通りだろう、英二は生粋のオタクで体格も小さく、身長は美咲とほぼ変わらない、体力も…腕力も…正人には及ばないだろう。


それでも彼は敵を目の前にして目を瞑る様な真似をしない、目を開けたまま、勝てずとも殴り掛かり、痛みに耐え気絶するまで耐えるに違いない、特に…美咲を守る為ならば。


「まぁまぁ♪二人ともその辺にしときなさい、明日も有る。兄弟は目を開けて組手をする事を意識して、そうだなぁ、今は無理に攻撃しようと思わない事だ、それも兄弟に取っては高いハードルだろう、明日からは防御と回避に専念して訓練を続けようか、大丈夫!地霊の加護が最大限効果を発揮出来る様に訓練場は出来ている。世界でこれ以上安全な場所は無いからね、さっ…二人とも身体の整備をしたら昼食にしよう、昼休憩の後は、午後は座学から、邪鬼の事を知ろうか、小鬼ばかりが邪鬼では無いからね、まぁ休憩の延長だと思って気楽に聞いてくれ…」



 ◆ ◆ ◆



【沼地の幼女】


沼地の妖女、或いは沼地の幼女とも呼ばれる、文字通り女性に近い姿をしては居るが、単性生殖で黒き魂を持つ邪鬼の一種で有る。


声を発する器官が無く、邪言は使えないが、代わりに沼の瘴気を変質させた毒性の粘液を吐く事が出来る。


寿命は数年から長い者で十年程度、汚い藻の様な髪に薄っすらと乳房らしき物が有り、身体の各所は苔の様な獣毛に覆われている。


知性は乏しく、小柄で醜い幼女の様な姿を取る。


本来は単生生殖の魔獣であったらしいのだが…


下の重い世界…人間のみの世界に転生出来なくなった黒い魂が溢れた結果、その低い精神性に見合った肉体をこの世界で得たのだと言う。


現在はその依代となった生物の本来の形を歪め、女性の形だけを持って増殖する不快な生物と成り果てた。


黒い魂を持つため、堕ちる前の転生体が幼女のまま亡くなったわけでは無いだろう。


魂が黒く腐りきった時点で人の胎児へは宿れない、人間は善と悪の狭間に生きる生物では有るが、それには限度が有ると言う事だ。


人間であった頃は成長しても大人になりきれず、周囲に怨嗟を振りまく呪物と化していたのだと云う。


そんな哀れな生物、沼地の幼女を孤独汚婆(こどおば)と呼ぶ者もいる。


本来魂に性別などは有りはしないのだが、元の魂の持ち主が女性で有る事に固執した為に、起こった現象では無いかと推察されている。


また元の魔獣の生態がそうであった様に、沼地から離れて生活する事は出来ない。


時が来れば分離した髪や皮膚の一部が沼地の瘴気を吸取り、別の個体へと増殖するが、稀に魂を持たぬ個体もあり、分裂元の個体の性質を受け継ぎ女性型にはなるが、攻撃性はそれ程無く空腹で無ければ大人しい。


オスを毛嫌いしており、沼に他の種族のオスが近づくと毒を吐いて執拗に攻撃して来る。


女性は容姿が美しく無ければ攻撃の対象にはならないのだが…


美しい容姿を持った獣人や現人の女性は集団で攻撃され、切り裂かれ、骨の髄まで食い尽くされるので注意が必要だ。


また綺麗な宝石や装飾品に目が無く、たまたま旅人を襲って捕食した時に、その手の宝飾品を得る個体がいると嫉妬とやっかみで共食いを起こす事も有る。


持っていたところで使う宛など無いのだが、人であった時の残滓で有ろうか?


但し、青鱗の魔女が統治する集団で有った場合は、そちらに財宝や捕獲したオスを捧げる為に同種での諍いは起こらない。


また子連れの夫婦で旅をする旅人も注意が必要である。


黒い魂に染み付いた習性によるものなのか、恋人同士、夫婦や家族連れに激しい憎しみを抱いており、過去の記録では街の直ぐ側まで追い掛けて攻撃して来たと言う事例もある。


また沼の幼女に寄生、或いは共生する別種族も存在する。


何を勘違いしたのか、群れからはぐれた小鬼が近くに生息している事も稀に有る。


妖女に毒を吐きかけられ、運良く逃げ出せた旅人を襲って捕食し、または食料として沼の幼女に捧げる特異な行動を取り、とある真人の観察で明らかになったのは遠目に沼の妖女達を指を咥えて盗み見ていたとの報告も有る。


連中は容姿は女性だが単生で生殖機能は無い、食べて排泄するだけの存在で、例え彼らが生殖行為を要求しようがそんな機能は持っていない。


哀れな話で有る。


基本的にはあらゆる種族のオスを毛嫌いする性質を持つ沼の幼女ではあるが、その子鬼達はエサを提供してくれる存在では有る為、彼らは冷やかな視線を投げ掛けられる事はあっても攻撃される事は無い。


そんな変わり者の小鬼は皮肉を込めて妖女の、幼女の騎士、或いは人を襲って食料を確保すると、指笛吹いて幼女にアピールする事から笛魅騎士(ふぇみきし)と呼ばれている。



m(_ _)m高評価ブクマ宜しくお願いします


フィクション…なんて素敵な魔法の言葉…

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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