第四十二話
明人視点
お風呂と疲労感のお蔭で熟睡して翌日となり、現在俺の隣には不穏なオーラを纏った飛鳥が居る。それというのも先程から……。
「騎士様、良ければ今度…褥を共に…」
「アキトさん…。この…手拭い…も、貰って下さい!」
「アキト様?一緒にお食事でもどうですか?」
「アキトくん♪少し稽古してくれない♪…勿論、報酬もあるよ♪それは…わ・た・し♪」
と、俺の周囲に沢山の女性が集まった。
「お気持ちだけ頂きます…」
俺は苦笑いしながらそう答える度に飛鳥は機嫌が悪くなり、カマエルみたいな薄黒い靄が漂っている。その沢山の女性達を捌いていると、我慢の限界を向かえた飛鳥は俺の手首を引っ張り、飛鳥の部屋へと連れ込み、ベッドの上へと俺を座らせ、飛鳥は俺の隣に座ると膨れっ面の状態で俺から顔を背けてる。
「あの〜…飛鳥?」
「…」
「御自分で部屋に連れ込んだのに無視は酷くないですか?」
「…」
「お〜い…」
俺は飛鳥の膨れてる頬を押すが無反応。相当ご立腹だな。外の手伝いに行きたいがこの状態の飛鳥を放置するのは不味いんだよな…。前に一度だけお怒り状態の飛鳥を無視して友達と遊んだ時、一ヶ月は口を聞いてくれなかった。
前回は平謝りで許してくれたけど、今回は何に怒ってるか分からないからどう謝ればいいか…。…正直に聞くか。
「飛鳥。一体何に怒ってるんだ?」
「…」
「飛鳥、教えてくれないか?」
「…するじゃん…」
「何……じゃん?」
飛鳥はバッと怒りの表情で此方へと振り向いた。
「勘違いするじゃん!あんな受け答えじゃ!」
「勘違い…?」
「そう!あんな中途半端な答えじゃ期待持たせるし!イケるんじゃって勘違いするでしょ!断るならキッパリ断ってよ!!」
「それが理由?」
「そう!別に相手が友好的に接してるなら良いよ!でも、好意だったら拒絶しなきゃ駄目!」
「……俺が曖昧な態度を取ったから怒ってたのか」
飛鳥はコクンと頷き、俯いたままになる。
「飛鳥…。俺の顔を見てくれないか」
「…」
「飛鳥…?」
飛鳥は渋々といった感じで顔を俺へと向けるが、ムスッとした表情で目線はそっぽを向いてる。けれど、頬はほんのり赤くなっている。
「顔も見たくない?」
「…そんな訳、ないよ…」
ボソッと呟きながら俺と視線を合わせる。
「明人の顔は…いつも見たいよ。でも…明人が誰にも優しいのは……何か嫌だ。別にただ自分だけに優しくして欲しい訳じゃなくて…。なんというか……無条件に…女の子に優しいのが…嫌…?だと思う」
「無条件…?」
「うん。困ってる人…とか、友達にとかは特に大丈夫…だけど。困っても友達でもない人、優しくする条件が無い人には……」
飛鳥は黙って暫く間を開けてたから頷いて、もう一回視線を合わせる。
「うん、嫌だ」
つまり…。
「優しくする理由の無い人には優しくするな…って?」
「言い方は良くないけど…。そうなる……」
飛鳥は気まずそうに視線を斜め下へと動かす。
「…」
飛鳥は自分の説明し難い言葉を言語化してくれた。俺もキチンと言葉にしないと。俺は飛鳥の両肩を掴む。
「飛鳥」
その言葉にビクッと反応してゆっくりと俺の顔を見る。
「俺は飛鳥が好きだ。俺が俺として居る時からずっと飛鳥の事を想ってきた。飛鳥以外に付き合いたいと思う事も、結婚したいとも思わない。俺はどうしようもなく好きなんだ。愛してるという言葉はまだ言わない。プロポーズもまだ言わない。その二つの言葉は指輪共に贈るから」
飛鳥の目を見て、思いの丈をぶつけた。飛鳥は長い沈黙の後、一筋の涙を流しながら強く抱き締めた後にキスをしてきた。唇が離れるともう一度抱き締めて頬と頬が触れ合う。
「私も…!好きっ!大好きっ!私も言わない!まだ愛してるって想っても言わない!一番大切な時に使う!」
俺も飛鳥の気持ちに応える形で強く、決して離れないように抱き締めた。




