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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第四十一話

明人視点


ダリックさんと浴場を出るとその場で分かれて、俺はそのまま寝室へと戻った。


「心地良い疲労感と風呂に入った事でめっちゃ全身が緩んで、眠い」


俺は思わず大口を開けて欠伸が出て、欠伸と一緒に出た涙を拭う。


「寝るか」


ベッドに座って、そのまま掛け布団の中に潜り込もうとした時、コンコンとノックされる。


『こんな夜分にすまん。俺だ。少し話がある。良いか?』


この声は……大和?一体何の用だ?俺は眠いから明日に話を聞こうかなと思ったが、大和もそれ位の事は考えたろうし、わざわざ今この時間に訪ねて来たのは何かしらの考えがあったからに違いない。


「…少しだけなら良いぞ」

『ありがとう』


俺は立ち上がって、扉の鍵を開錠して、扉を開くと大和だけでなく、エリストやヒューリにミカエル、それとマイクとエグロまでも居る。


「とうしたんだ?全員揃ってゾロゾロと…。まぁ、良いや。取り敢えず中へ」


流石に狭いので俺と大和はベッドの上で座り、他の全員が床へと座って貰った。


「それで、皆は何用で俺の部屋に?」

「それは俺から言わせてくれ」

「大和からっ……て事は皆同じ用件なのか?」

「そうだ。でも、揃ったのは偶々なんだけどな。多分だけど皆は俺と同じ想いだからこの場に居るんだと思う」


大和の言葉に全員が頷いた。つまり共通する出来事があったという訳か。…共通する出来事と言ったら先程の戦いの事か。つまり……。


「全力循環を覚えたいと言う事か」

「あの金髪に変わるのが全力循環と言うならそうだ」

「う〜ん。あれは確かに巨大な力を得る変わりに尋常ではない痛みが襲うからあまり人に教えたくない技なんだよ。あの技はかなりの聖心力を削る技でもある。全力循環を使うと人間の肉体の限界を超える力が得られる。けれど、人間の限界を超える為に身体が引き裂かれる痛みが走る。ようなではなく実際に引き裂かれている。だから、回復の為に聖心力が消費する。身体が引き裂かれると同時に超高速で回復するの繰り返し。これは奥義と言っても過言ではないもの。でも、やはりデメリットの方がデカイんだ」


俺の全力循環による説明を聞いて全員顔を青ざめている。説明の段階で血の気が引くような人間には扱えない。


「うん。やっぱり教える事は…」

「頼む!!明人!!」


大和はバッと床へと下りて土下座する。


「おいっ…!大和!」

「俺はあの時…四天王相手に傷一つさえ付けられ無かった!もし明人が来なければ相澤が……恵那が、死んでいた…。そんなのは嫌なんだよ!!自分の力不足のせいで好きな人が死ぬのは!!」

「大和…」

「僕もだ!僕もこれ以上清水様の足手まといに成りたくない!」

「エリストまで…。皆も、同じか?」


そう尋ねると四人全員が強い意志を瞳に宿し、視線で俺に訴え掛けてくる。


「覚悟はあるのか?どんな痛みにも耐えられる覚悟を…」

「「「「「「勿論!!」」」」」」


俺は皆の声音に本気を感じた。本当に大丈夫か…なんて聞くのは野暮だな。


「分かった。教えるが、俺が教えられるのは言葉による説明と方法だ。コツは自分達で掴めよ」

「「「「「「はい!」」」」」」

「返事は宜しい。…なら先ずは大和からだな。取り敢えずベッドに座禅を組んで聖心力の循環をしてくれ」

「おう」


俺はベッドから離れ、大和にベッドの上に座らせて座禅を組ませる。


「聖心力の流れを読み、聖心力の源の位置を感じ取り、聖心力を全身に流して、源へと戻すのを繰り返せ」

「分かった」


大和は目を瞑って集中する。多分、今は聖心力を循環させているんだろう。


「もし、源に戻せない場合は一回循環を解いて、もう一度循環する。それを繰り返せ」

「ああ…」


大和は自分の内側に集中しているからか返答が生返事だ。あ、あとそうだ。俺は腕輪にしていた神剣を大和の首近くに持っていく。


「もし気を失った剣の方に倒れないよう気をつけろ」

「え…。えっ!」


大和は虚ろだった目が見開かれて神剣を見て、慌て始めて体勢を崩して神剣の方に倒れる。


「やばっ!」


自分の危機に大和は目を瞑って身体全体が力んだ瞬間、ゴウッと聖心力が全身から漏れ出て、髪色と目の色が金色と変わり、神剣に当たる。


「オワッ!」


大和は咄嗟に神剣から逃れて壁へと背をぶつけた。


「アキトッ!今のは幾ら何でも危ないぞ!」

「危なくはないよ。ほら」


俺はそう言って掌に刃を押し付けると、ぐにゃり…と水のように歪む。


「刃を柔らかい状態にしたんだ。もし当たっても大丈夫なように」

「明人…だとしても心臓に悪いって…。マジで死ぬと思ったぞ…」

「本物だと錯覚すれば本気になるだろ?実際に修得出来たしな」


神剣を腕輪に戻してそう言うと大和は苦虫を噛み潰したような表情で両腕を組んで、険しい顔になる。


「だとしてもなぁ…。やり方ってものがあるだろ?」

「俺も気を失えないタイミングで、起きようとしたから修得出来たらから他に方法も思い浮かばなかったんだ。悪いな」

「…ったく。しょうがない…。実際これで修得出来たし、学ぶ側だからあんま文句は言えないな」


大和は納得してない表情をしてるが自分に言い聞かせるように渋々俺の行為を受け入れた。


「言っとくが、俺は長い期間で修得したんだからな?こんなに早くは出来ないぞ」

「俺が勇者だったから、という事か」

「ああ、他の皆は修得するのに月単位なると考えてくれよ。でも、大和のお蔭で修得出来ると皆も分かったろ?全員が、気を失わない状態を作って、起きなければならない状態を作る。今みたいにわざわざ危険な事をしなくても、水桶を張って倒れるとずぶ濡れにするとか各々やり方を考えてくれ」


俺は必要な事を全部言うと身体が終わりを意識したのか欠伸に襲われて大口を開ける。


「じゃあ、そろそろ全員自室に帰ってくれ。いよいよ俺の眠気がやばい」

「分かった。ありがとうな明人」

「ああ」


大和達は部屋を出て、扉に鍵をもう一度閉めて就寝した。


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