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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第四十話

明人視点


飛鳥の部屋の鍵をチェストに仕舞い、自分の着替えを用意して直ぐに浴場へと向かった。脱衣所へと入ると勇者の姿は無く、全員が騎士達だった。居酒屋みたいなロッカーを開き、中に置かれてる籠の中に着替えとポケットから鍵を取り出し、入れてから服を脱ぎ始めるとガッと肩を掴まれて振り返ると同じ第一のベテラン騎士だった。


「よぉ!英雄さんよ!遅い行水だな!」

「ダリックさん。どうも」

「おう。…ったく。変わんねぇな。偉ぶっていれば拳骨一発入れて生意気だ!と言えたのによ」

「ダリックさんだって変わってないじゃないですか」


俺は彼の胸元にあるロケットへと目線を送る。


「まぁな」


彼は寂しげにロケットを開ける。ロケットの中には魔物被害により亡くなった奥様の写真が入ってる。魔物被害で家族を亡くした同じ境遇の俺をダリックさんは良く可愛がってくれた。ダリックさんは奥様を亡くしたが今年二十歳となる一人娘が居る。彼は亡くなった奥様みたいな人を出さない為、娘さんが被害に遭わないよう戦っている。そして、ダリックさんの腕には御守り的なミサンガを結んで着けている。


ミサンガか…。…もしかしたら……神剣も形を変えられるからミサンガみたいな腕輪に出来るのでは?大きさや形を変えられたし。部屋に戻ったら試してみるか。


「久方ぶりにお前の話を聞かせてくれよ。ここ一年強は勇者様と一緒で話す機会なんてなかったしな」

「はい。俺も久しぶりにダリックさんと話たいです」

「俺は大して面白い話はないと思うが、まぁ…良いか。じゃあ、風呂入ろうぜ」


服を脱いで全裸となり、タオルを持って木の板の鍵は首紐があり、頭に通してから浴室へと入る。


「でっか…」


騎士の宿舎にある浴室の五倍の大きさ。王都にある大衆浴場の二倍。今まで見たことの無い大きさだ。


「聞いた話によると大型の魔物が水浴びするにも使えて…ほら、一番奥には壁ではなく可動式の何枚もの扉があり、外から入っていたんだと」

「なるほど。だから天井も高いのか」


上を見上げると目測十メートルある。だから、浴場は突き当りにあったのか。こんな高さの浴場が突き当りにないと廊下が作れないし、大型の魔物を入れ難いしな。それに天井は些細ではあるが湾曲しており、真ん中がポッコリとしており、丸みを帯びてる部分から水滴が湯船へと落ちる。この形になってるのは両端にある蠟燭を水から守る為、下や横からの水は完全にカバーされてるけど、上だけは空気を取り入れる為に開いている。その為、天井が湾曲する必要があったんだ。これ造った人は頭が良いな。


「じゃあ、お湯に入るか」


俺が細やかな設計に感嘆しているとダリックさんにそう言われて意識を風呂へと戻し、俺達は近くにあった桶使ってお湯を掬い身体の汚れを落としてから入浴する。


「ふぅ〜」


全身の疲れが全て解れる…。疲労回復する~…。めっちゃ気持ちいい…。ヤバい…。もう寝そう。


「あああぁ〜~。気持ちいいな…」

「おっさん臭いですよ。ダリックさん」

「良いだろ。おっさんなんだし」

「確かにそうでした」

「おいコラ!」


俺達は見合い、軽く笑いあった。


「全く…。本当に変わらないなアキトは」

「変わらないですよ。俺はずっと。ずっと同じ気持ちで、ずっと同じ目的で戦ってますから」

「そう…だったな」


少し俺達の間に変な空気が流れるとダリックさんは大袈裟に「あっ」と声を上げる。


「戦いと言えばさっき団長と戦ってたの見たぞ」

「え、本当ですか?」

「ああ。まぁ、速すぎて目で追うのがやっとだったがな。頼もしいよ。こんな凄い奴が仲間に二人…いや、副団長や他の騎士団長達も含めると十人か。更に勇者様達も居る。必ず勝てると確信出来る。…いつか訪れる娘の結婚式にも出れるかもな」

「結婚式だけじゃないですよ」

「え?」

「出産に、お孫さんの修行の年もある。死ねない理由が沢山ありますね」

「…ふっ。そうだな…!」


ダリックさんは眩しそうに天井を見上げ、その瞳には明るい未来が映されているのだろうか。


ダリックさんの話は終え、今度は俺がこの一年と半年に起きた出来事を話した。ほぼ飛鳥とのデートと自慢になったけれど。


「…そろそろ上せそうだな。上がるか」


話も程々にダリックさんは熱を逃がすように息を吐いてから立ち上がる。


「そうですね」


俺はダリックさんに続いて立ち上がって風呂から出て、もう一度桶でお湯を掬って、頭の汚れを流してタオルで身体全体の水を拭ってから脱衣所へと戻り、ロッカーに木の板を挿し込んで開いてバスタオルでもう一回、完璧に水気を取りきって、寝間着へと着替え、鍵をポケットに入れた。


「アキト。ここに脱衣入れがあるぞ。ここに籠ごと入れれば洗ってくれるらしいぞ」


ダリックさんは入口近くにあるダストシュートみたいなのを指差す。


「あ、本当だ」

「な。ありがてぇな」


俺とダリックさんはそこに自分の服が入った籠を中へと送り込んだ。


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