第三十九話
明人視点
俺は遠慮なく団長へと斬り掛かる。団長は突きを放ち、俺の木剣を自身の木剣で滑らせ、右ステップで避けながら左へと俺の木剣を打ち払い、そのまま俺の首を狙う。
俺は身体を後ろに反らし、反時計回りに木剣を振るって攻撃を逸し、攻撃の勢いを利用した右足による回し蹴りは団長の頭へと目指す。回し蹴りは頭を微かに後ろへと動かすだけで躱される。だが、左足で跳び上がり回転の勢いそのまま左足の踵が団長へと迫る。団長は左腕で顔面を庇うが、右足を空振ったお蔭で遠心力で上昇した威力による痛みで顔が歪み、団長の身体を後ろへと動かした。
団長は俺が着地する寸前の隙を狙って、右手だけの袈裟斬りが振るわれる。俺は刀身で受け、時計回りに回転して勢いを吸収して団長へとカウンターする。団長は即座に反応して、手首を切り返して振り上げて防いだ。けれど、俺はそこから剣を押し込んで鍔迫り合いへと持ち込む。団長は力が入りづらい斬り上げ、しかも右手だけ。俺は人間が最も力が入る振り下ろし。押し込めれば勝てる。
「このまま終わらせないよ」
団長は自身の木剣の柄頭を右膝で膝蹴りする。俺の木剣も衝撃で跳ね、団長と俺との木剣の間にほんの少しだけ距離が開く。団長はその間に順手から逆手へと木剣を持つ手が変わり、腹部へと横薙ぎする。俺は攻撃を防ぐ為、刀身へと振り下ろした一撃を与えた時、団長は逆手から順手へと持ち直し、斬り上げがくると思い後ろへと下がる。しかし、団長は予想とは違う行動を取った。
団長は右足を着地させると地面を蹴って再び柄頭を右膝で膝蹴りし、前へと移動しながら腕の動きも連動させた事で加速した突きが俺の首へと迫り、寸止めした。
「僕の勝ちだね」
「…はい。参りました」
「いやぁ〜ギリギリの戦いだったよ。流石に負けるかと思った。左腕は今も痺れてるし」
「それで負けたのがより悔しいですよ」
俺は悔しげに溜め息を吐き、木剣を団長へと返した。
「久しぶりに戦えて良かった。良い息抜きになった。それじゃあ僕はこれで失礼するよ」
「はい。お疲れ様でした」
団長が去る後ろ姿に礼をした。
「…俺はもう少し動きを確認しよう」
最後の一撃、見えてたし、反応も出来た。けれど天神力が強過ぎて身体が吹き飛びそうになり、制御しようとして動けなかった。
それから一時間後、眠気に襲われて中断した。
「…取り敢えず今日はお湯で身体を拭いて寝るか」
伸びをしながら大きな欠伸をすると複数の視線が突き刺さるのを感じた。目尻の涙を拭いながら視線の正体を探ると窓から俺の事を見る女性達が居た。あ〜…と今までの動き、見られてたか…。恥ずいな。さっさと退散しよう。
御屋敷の中へと入ろうとすると一人の女性に行く手を阻まれる。この子は確か…うちの騎士団に居たな。名前は分からないけど。
「えっと…。なんですか?」
「こ、これ!使って下さい!」
トンッと女性は俺にタオルを押し付けてタタタッと足早に去って行った。
「なんなんだ?」
俺は汗を拭い、彼女の行動を不思議に思いながら入口方面へと向かった。その間、女性に限らずチラチラと視線を向けられる。
「モテモテですね」
受付の女性の所に着くと彼女にそう言われた。
「そういう類の物ですかね?」
「女性は殆どそうだと思いすよ」
「女性は…か」
この人の言う通りならこのタオルをくれた女性は俺に対して好意があると云う訳か。でもなぁ…。納得は出来ないかな。だって散々俺と飛鳥が一緒に居るのを見てる筈だしな。
「女性は優秀な人を放っておけないのよ」
「うわっ!び、びっくりした…。背後を取らないで下さいよ」
「悪かったわね。明人君」
勿論、清水さんが突如として現れた事にも驚いたが、心を読まれた事に驚いた。清水さんに関しては今更だけど。
「で、明人君。どうせ、自室でお湯と布を使って身体洗うつもりだったのでしょう。浴場がある事も知らずに」
「え!?あるんですか!?」
「ええ。大体の人は貴方が目立ってる間に入ってるわ。面倒もない筈よ。場所は右通路の突き当りよ」
「ありがとうございます。早速準備してきます」
俺は上機嫌に自室へと戻った。




