第三十八話
明人視点
そっぽを向いた飛鳥の頭を撫でてから、大和を視界に捉えて近付いてアイアンクローをする。
「あたたたたたたっ!!」
「余計な事を言うのはこの頭か…?」
「ご、ごめん!悪かったから離してくれっ!!」
「ふんっ」
俺は大和の頭をパッと離し、大和は「いたた…」と頭を抱え、相澤さんは心配そうに寄り添う。
「だ、大丈夫…?」
「あ、ああ…。いつもの戯れ合いだから大丈夫。からかい過ぎるとよくされるし、手加減はしてくれてるからな」
「そ、そう。なら……良かった」
相澤さんはホッと胸を撫で下ろしてニコリと笑い、その笑顔を向けられた大和は耳を真っ赤にする。
「…まぁ、今回はこれで御開きにしましょう。解散」
清水さん達は退室していき、俺と飛鳥だけが残った。飛鳥は変わらずそっぽを向いている。
「飛鳥。自分で鍵掛けられるか?掛けらないなら俺が今日は預かって明日渡すけど?」
「…して………の?」
「うん?どうした?」
「どうして……私の首に…キス、したの?」
「あ…と。起きてのか…」
俺は照れながら頬を掻く。
「ねぇ…。何で?」
「…それは………」
なんだろうな。無意識にやった感じがあるし。強いて言えば……。
「そこに首があったから、かな…」
俺の返答を聞いた飛鳥は顔を俺の居る方へと戻す。
「首があれば他の女の子にもキスするの…?」
非難するような目で俺を見る。俺はベッドの端部分に座って飛鳥を見る。
「飛鳥だけだって」
「……ふ〜ん」
「嘘だと思う?」
「…」
「そう…と、受け取って良いんだな」
俺は靴を脱いでから飛鳥に添い寝し、飛鳥の顎下を左手で包み、顔を左に動かして首をがら空きにしてキスする。
「あ、明人…!」
「言葉じゃなくて行動でなら信頼……出来るよな」
俺はそう言いながら首をツツーーと舐めたり、またキスをしたり、耳朶を唇で挟んだりすると飛鳥に突き飛ばされる。
「わ、分かった!信じる!信じるからもう止めて!!」
飛鳥は息を荒げ、顔を紅葉みたいに紅くしていた。
「なら良かった」
「…バカ……」
それで、鍵はどうするかと聞いたら、今日一日は俺が預かる事に決まった。飛鳥の部屋から出た俺は屋敷の中庭へと出る。
「…じゃあ、始めるか」
俺は聖心力を循環しながら、ゆっくり身体を動かして自身の調子を整える。俺はまだこの神剣の力……いや、正確には神剣の中にあった聖心力とは違う力を操れてない。仮に天神力としよう。この天神力は聖心力より出力が桁違いでいつものように動かそうとすると一気に持っていかれ、引っ張られる。しかも、全てを使った全力循環ではなく、消費したものだけを全体に循環させる方でだ。
正直、さっきの戦闘では半分が身体のコントロールに天神力が使われていて、戦闘の為の力は四割五割程度。天神力を全力で使えたらカマエルも俺一人で瞬殺出来た。
「全然駄目だな」
聖心力はいつだって最適に操れた。いつだって足りなかったのは経験だけだった。今でもサエタル団長には勝てない。身体能力なら俺の方が上だ。圧倒的に。けど、サエタル団長は経験による先読みと最小の動きによる攻撃についていけなくなる。
「ふぅ…」
天神力を循環させ、ゆっくり動いただけで汗が額から噴き出す。この力をもっと上手く扱えるようにしないと。今回はかなり飛鳥に助けられた。だが、それじゃあ駄目だ。俺は誓ったんだ、飛鳥を守ると。俺一人でも四天王を倒せる位に強くなる。
「四天王…。魔王…か」
魔王は清水さんの話を信じるなら元神になるが、どれほど強いんだろうか。…恐らく、俺達をこの世界に呼んだ神くらいはあるか。俺一人では手に余るな。皆が揃って戦って……勝つ、しかない。
「頑張ってるね、アキト」
「うん?あ、団長」
サエタル団長が屋敷の明かりに照らされながら中庭へと入って来る。
「久しぶりにどうだい?」
団長はそう言いながら木剣を俺へとぶん投げた。俺はそれを受け取る。
「いつぶりですかね。団長との模擬戦は」
「そうだね。半年位かな?楽しみだよ。この半年でどれほどまで至ったのか」
団長は中庭に木剣で円形を描く。
「期待に添えられるよう頑張りますよ」
俺は不敵に笑いながら団長が作った円形の中へと入る。
「じゃあ、始めようか」
団長はぶんっと木剣に付いた土を払い、木剣に黄金のオーラを纏わせて、油断なく構えた。




