第三十七話
飛鳥視点
え、えと………。
「それ……本当…?」
「ええ…」
人が管理されてる。その全てを…。自分達が反抗を受けない為に生まれたての男の子が捕食される…。そして、三十の歳に解体されて、しかも…その作業を人間に……。
「うっ…」
「恵那様!」
恵那は想像してしまったのか嗚咽を漏らしながら両手で口を抑えて蹲り、ミカエルさんが背中を擦る。
「…流石に私も気分が悪かったわ。別に知らない人間が何に食われても自分達もやってる事だから何も思わないけど……。自分達の手で解体するのは……酷いわよね」
自分達もやってる、か…。確かに人間も豚等の生き物を飼育、解体、捕食をするが、自分達でしろ…なんて言えない。出来ないから…って言うのもあるだろうけど。
……もし、豚等も人間と同じく解体出来る程に器用だったら……私達も同じ事を強要するのかな…。
「…まぁ、そっちの話は今はもう流して違う話にしましょう。個人的には此方の方が話したかったから」
「違う話?」
「ええ。魔王と四天王の正体について」
私達全員はまたも驚愕した。次々に衝撃的な言葉が玲子の口から放たれる。重い情報の後に刺激物は胃がキリキリする。
「カマエルが口走ってた断片的な情報で理解出来たわ。彼等の正体を割り出せるキーワードは『カマエル』『空を飛ぶ自由を再び奪われる』『魔王モーモス』『神にさえ届く』『神告』『何からなにまで』『魔王様でさえ』この情報を抽出すれば……自ずと正体は判明する。彼等の正体は………神と天使よ」
いや、それだけで正体を見極める玲子こそ神と言いたいけど…。
「何で神と天使だと思ったの?」
「良い質問ね飛鳥。先ずは彼等の名前。カマエルは私達の世界にも居る堕天使よ」
「堕天使…」
「ええ。モーモスはギリシャ神話に出てくる非難と皮肉の擬人化したもので、詳しくは喋らないけどモーモスはゼウスにオリュンポスを追放されてるわ」
「でも…偶々の可能性もあるでしょ」
「ええ。そこで他のキーワードが確信に変えてくれたわ。『空を飛ぶ自由を再び奪われる』はカマエルが翼を奪われた、つまり翼を持った存在であった事を示唆している。モーモスは『神告』『魔王様でさえ』この二ワードで神であったと推察。そして明人君と私が行った『神告』『空を飛ぶ自由を奪われる』に対して『何からなにまで』と言った。これは実際に体験しないと思わず口にしない筈の言葉でこの推察を確信させてくれた。『空を飛ぶ自由を再び奪われる』『神告』『神にさえ届く』これらの言葉を合わせると、モーモスやカマエル等の四天王は『神告』により追放。そこでカマエルは『空を飛ぶ自由を再び奪われる』。だから、追放された恨みで復讐の為に『神にさえ届く』飛鳥を欲した」
すべて偶然……と言ってしまえば終わりだけど、玲子が話す内容はストンと腑に落ちる。何の違和感なく納得してしまった。
「なるほど。確かにそれなら聖心力の効きが悪かったのは説明出来る」
「…ええ。けど、しっくりは来ないのよね。魔物と云う存在と何故…元天使である四天王は聖心力ではなく魔法が使えるのか。魔物は何故生まれたのか。魔物と魔王達は別物なのかも分からない。…これは情報を集めなければ断定は出来ないわね」
玲子は眉間のシワをつまんで解し、うーんっと背伸びして身体全体を解す。
「分からない事を喋っても仕方ないわ。これで私からの話は以上よ。皆からお話はあるかしら?」
玲子以上の話ってもう無いでしょ。私なんて寝てただけだし。…あれっ?今っていつ?どれくらい時間が経ってるの?
「一〜ニ時間よ」
「いや、だから何で分かるの…」
「なんとなくよ。なんとなく」
なんとなくで分かるっておかしいと思うんだけど…。
「他の話かぁ…。う〜ん、明人が逆ナンされた以外特にないな…」
……………………………………。
「ひっ…!」
「あ、飛鳥?顔、怖いわよ…。恵那も怯えてるし…ね?落ち着いて。変な事を言った樋口君は土下座させるから」
「えっ!ちょっ!な、何で!」
「取り敢えず謝りなさい!」
「あ、え!ご、ごめんなさい!」
樋口君は土下座する姿を見て、笑顔を意識する。
「怒ってないよ?何で私が樋口君に怒るの?」
「あれ?幻聴かな…?長嶋の声が何か加工されたみたいに感じる?」
何、変な事を言ってるのかな?人の声が何もしてないのに加工されるなんてあり得ないのに…。ウフフフフフフフフフフフフフ…!
「取り敢えず落ち着けッ」
「あたっ」
明人にデコピンされて、ムーッと唇を突き出して明人を睨む。
「明人…逆ナンされたんだ…」
「…別にモテる訳じゃないよ。ただ単にこの村には男性が少ないから唾付けられただけだよ」
「本当に?鼻伸ばして、デレデレしてない?」
「俺が心から一緒に居たいのも。下心が芽生えるのも飛鳥だけだよ」
明人は私の左手を両手で包み込み、真剣な眼差しを向けてくる。
「…一応信じる」
「ありがとう」
私はプイッと顔を反対側に背けた。




