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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第三十三話

明人視点


紫の石は砕け散り、俺は足音を立てずに着地して、剣をベルトに収める。


「勝った…の?」


飛鳥はそう呟き、暫く経っても何かが起こる事も、襲われる事も無い。勝利を皆はジワジワと認識し始めて、ワッと盛り上がり始める。飛鳥は勝った事で安心したのかフラッと身体を傾ける。俺は慌てて飛鳥が倒れる前に移動して受け止める。取り敢えずは良かった。……こんなになるまで頑張ってくれたんだな。褒めなければいけないよな。


「勝てたのは飛鳥のお蔭だ。ありがとう」

「ううん、殆ど明人のお蔭。皆もそう思ってるよ」

「いや、飛鳥のお蔭だよ。誰が何と言おうと」

「いやいや…って。こんな話をしてもしょうがない。もう疲れた…」


飛鳥は疲労感を滲ませて笑う。飛鳥の手足はガクガクと震えてもう立てそうにない。どうしてこの状態で戦っていられたのか不思議だ。


「神経張り詰めていたから、大分疲れただろ。俺が運ぶよ」


俺はそう言って飛鳥をお姫様抱っこする。


「あ、明人…」


飛鳥は少し恥ずかしげに頬を染めるが、俺に身体を預け、そのまま力尽き、意識を失うみたいに眠った。俺は一先ず飛鳥をテントの中へと運ぼうとしたが、先程の夜襲で倒壊していた。これでは飛鳥を寝かせて上げる事が出来ない。…魔族達が使ってた屋敷を使うか。と、踵を返すと目の前に清水さんが腕組みしていた。


「き…いや、明人君。屋敷へと行くのね。丁度良いわ。私も行くつもりだったから。じゃあ、行きましょ」


清水さんはさっさと御屋敷の方に向かう。俺は彼女の行動に移す速度に苦笑いしながらも付いて行く。大和達も俺達に続く。


「暗いな」


御屋敷の中に明かりが一切見えない。…村長が紹介した時には確か明かりは着いていた。


「ええ。明人君が思ってるように明かりは着いていた。そして、今は明かりが消えてる。その理由は…」


清水さんはフゥーと息を吸い、ハッと観音開きの扉を蹴り飛ばした。すると、屋敷の中から悲鳴が聞こえ、人影が見える。


「村人達がこの御屋敷に避難しているから、万が一にも明かりを灯してカマエルに間違えて襲われるのを防ぐため。明かりを着けていたのは村人達が屋敷の中を安全に移動させるため、でしょ?村長さん」


清水さんが見詰める先には村長さんと見掛けなかった人々…村人達が居た。


「そ、それは…」

「村長さん。余計な言い逃れは私の心象が悪くなるだけ…ですよ」


清水さんはニコリと笑う姿は殺人鬼に見えた。


「明人君。失礼よ」


いや、何故分かる。


それで、俺は村人に案内された寝所のベッドに飛鳥を寝かせた。現在、清水さんは村長を騎士達と共に詰問している。勿論、エリストも一緒だ。


「何か分かると良いが…」


椅子に座って飛鳥の寝姿を見守っていると、コンコンとドアをノックされる。


「どうぞ」


声で中へと誘うと相澤さんがお湯張った桶やタオルを持ち、ミカエルが飛鳥の衣服等が詰まったバッグを運んで入ってきた。


「玲子…に。飛鳥の……身体を…拭いて、上げて…と言われて…」

「次いでに着替えもして上げてとも言われたんです」

「はい。…ですから……貴山…君は…御自分の……お荷物、運んで……きて……下さい」

「分かった。お言葉に甘えるよ」


俺は部屋を退室し、中からガチャンと鍵が掛る音が聞こえて、安心して二人に飛鳥を任せて、屋敷の外を目指そうとした時、バッと野郎に抱き着かれた。


「アキト!お前は凄い奴だ!凄い奴だと思っていたが!!俺が思っていたよりずっと、ずっっっと凄い奴だ!!」

「ヒューリ…。涙やら鼻水やらで顔面グチャグチャじゃないか」

「だって…サリアや兄様達に両親の事を考えたら…」


と言ってまた涙を流し始める。あっ!鼻水が隊服に付いた!!……ったく、今日は許すか。今日の…今夜の戦いは俺の人生の中でも一番苦戦した。神剣が無ければ本当に飛鳥を連れて逃げるしかあの場を切り抜ける方法は無かった。大切な友人を見捨てる……なんて胸クソ悪い展開にならなくて心の底から良かったと想える。


「明人」

「ん、大和?」


大和はグッと拳を前に突き出し、俺はその意図を理解して拳を突き出して合わせる。


「マジで助かった。ありがとう」

「ああ。助けられて良かったよ。ってヒューリ!いつまでくっついてるんだ!離れろ!」

「ううっ…アキト……」


ヒューリは自身の服の袖で涙を拭い、鼻を啜りながら俺から離れた。


「…ったく。俺はこれから荷物を取りに行くけど、一緒に行くよな」

「ああ。良い部屋は早く取っておきたいしな」

「いや、部屋は村の人から鍵を貰えば良い」

「そっか!なら!貰いに行かないとな!」


大和は廊下を駆け出したが、直ぐに戻ってきて開口一番。


「村の人って何処に居るんだ?」


俺はズッコケ、呆れた溜息を吐いた。


「付いて来い」

「おう!」


俺達は鍵を管理している村人に会いに行った。


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