第三十二話
飛鳥視点
「お断りよ!!私は明人と幸せになるんだから!!」
私はカマエルに向かって啖呵を切るとポンポンと頭を明人に撫でられる。
「終わったらイチャイチャするぞ」
「うん!」
頷いて剣を構える。けど、この剣ではあの斬撃と高速摩擦が襲う鞭の舞に触れただけでバッキリ折れてしまう。
「飛鳥!!この剣を使って!!」
玲子の方へと視線を向けると鞘ごと剣が投げ渡されて、受け取って鞘を投げ捨る。
「ありがとう!玲子!!」
玲子の視線を向けずに御礼を言う。でも、剣を貰っても再びあの攻撃を受けたら同じ結果になる。…どうすれば……。そう思考していると明人に肩をグッと掴まれ、耳元で囁く。
「(飛鳥。カマエルの動きに見慣れた。俺が攻撃を防ぐ。だから、飛鳥は確実に殺してくれ)」
「…分かった」
明人が自信を持って言うんだ。信じよう。
「《何をしようと無駄だ!!塵となるが良い!!》」
カマエルは砂埃を立てながら此方へと迫る。
「塵に帰るのはお前だよ」
明人は逃げようともせずにシーッと鋭く音が鳴る位の勢いで息を吸い込み、シッと息を吐きながら切っ先を地面に向けて持っていた剣を逆袈裟に振るう。
「《なっ!?》」
「えっ!?」
一瞬だけ明人の剣が眩く輝き、気付けば剣から刀に変形しており、カマエルの二撃を弾いた。形が変わった。まるで私の能力みたいに…。
「《形が変わったから何だ!》」
カマエルは弾かれた両腕を鋭くビュッも空間さえ裂く斬撃で明人の両肩を狙う。それも明人は見事に防ぐ。防いだ方法に目を剥いた。
「白銀の…盾?いや、膜…」
明人の頭上に白銀の傘の形の盾がカマエルの一撃を逸した。これって恵那の能力。何で明人が恵那の能力を扱えるのか疑問に思っていると明人はカマエルの懐へと入る。こんな事を今考えてる暇はない!!私は必死に聖心力を全身に巡らせて明人の横を抜けて、カマエルの背後を取ろうとする。
「《させるか!!枝塵鋏!!》」
奴は逸された攻撃を一回転させて、左腕は私に背後を取らせまいとし、右腕は短くなる代わりに底木かの如く密集し枝分かれした死肉が遠心力によって加速した速度で振るうが白銀の風が明人の下から吹き上げて勢いが失速する。
「《なっ、何故だ!!…何故、私の一撃が悉く防がれるのだ!!》」
明人は無言のままカマエルへと突きを放とうと予備動作を行う。その間にカマエルは右腕をまた伸ばして地面を叩き、後ろへと逃げる。
「《舐めるな!!その程度の攻撃がはっ!!》」
カマエルは衝撃を腹に喰らって更に突き飛ばされ、失速が出来なかった分、地面の上を滑る。
「《な、何故…攻撃が……なっ!?》」
カマエルは上半身を起こし、攻撃の正体を知った。それは明人の剣から伸びる白銀で透明な刃。これは兼本さんの能力。
「カマエル、と言ったな」
「《人間如きが呼び捨てにするな!!私はまだ戦えるぞ!!》」
カマエルは立ち上がり、明人をその空洞の双眸で捉える。明人は恐れる事なく余裕の笑みを浮かべる。
「良いのか。後ろ。ガラ空きだぞ」
「《っ!?》」
カマエルは慌てて気付いて顔を此方へと向けるが遅い!!私は無言でもイメージさえすれば召喚が出来る!!
「これで終わりよ!!」
「《ま、待/て》」
私はそう言ってカマエルの頭蓋骨から唐竹割りをアメノムラクモノツルギで御見舞いする。カマエルの言葉ごと斬り、カマエルの身体は塵となりサラサラと風に流され、倒したとホッと安心して剣を戻す。
「まだだ!飛鳥!」
「えっ…」
私は慌てて周囲を探すと六角形の紫色をした石が転がり、何故か近くにあった小鳥の死骸に入り込む。
「逃さない!!アメノムラクモノツルギ!!」
小鳥の死骸を串刺しにしようとするが、予想だにしない速度で地を這う形で飛翔して、そのまま空へと逃げる。
「サラバだ!!次、会うときは覚悟しておけ!!」
「待て!」
…っ!?ヤバい…限界が来る…。このまま顕現させても意味が無いと悟った私はアメノムラクモノツルギの解除をする。くっ!折角ここまで追い詰めたのに!!
パンッと手を叩く音が聞こえ、玲子と?想起して見たら明人が白銀の弓を召喚し、目の前の地面に突き刺していた剣が変形し、小さいアメノムラクモノツルギになり、普通の弓矢の動作で構えて……放つ。矢となって飛ぶ剣は目を疑う程の速度でカマエルへと接近する。
「その程度!」
「あっ!」
明人が放ったアメノムラクモノツルギが避けられた!
「あれで当たるとは思ってねぇよ!」
「なっ!?」
明人はカマエルの目の前に現れて、避けられたアメノムラクモノツルギをノールックで掴み取った。い、いつの間に移動してたの!?
「終わりだ!」
「クソォォォーーーーー!!!」
それがカマエルの最後の台詞。明人の一撃で小鳥の死骸は左右に分かれて塵となり、中から両断された紫色の石が地面へと落下して、砕け散った。




