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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第三十一話

飛鳥視点


カマエルは俯いた状態で両手をワナワナと震わせる。


「ふ、ふざけるな!!どれだけ私が準備していたと思っている!!三千万の軍勢を用意するのにどれほど時間を掛けたのか分かるか!!」

「知るか」

「一年だ!!一年全てを使って用意した作戦をたかが人間一人に!!」


奴は目の奥を赤く光らせ、黒い風が周囲に吹き…いや、逆、黒い靄がカマエルへと集まっている。


「私の真の全力を教えてやる!!私の操る魔法、死霊魔法は死体を動かす、組み替える、人を死肉に変えるが!!それだけではない!!死肉を操る、それが極まれば!!」


カマエルの身体がバキバキと全身の骨が砕けてるのではないかと思う程の凄絶な音が聞こえ、奴の身体はドンドン縮み、大剣の大きさも縮小されてナイフと変わり、カマエル自身も私も同じ身長…160センチ位にまでなる。


「限界にまで硬くする事が可能だ!!」


カマエルが左拳で地面を殴ると容易に地割れを起こした。


「パフォーマンスは良い。さっさとくたばれ」

「それはお前だ!!」


カマエルが地を踏み込んで一歩、それは爆発的な速度でマサムネの時の私と変わらぬ速度で明人に迫る。私は咄嗟にマサムネを呼び出して明人を庇う。


「邪魔をするな!!」


ガンッとナイフが触れた瞬間、山が剣を振るっているのかと勘違いする重みと木で鉄を殴ったみたいな硬さ、攻撃の衝撃に私の身体は振り払わられ、手が痺れてマサムネを手放してしまう。マサムネは手放すと普通の剣へと変わり、土で汚れる。


「喰らえ!!五指斬死(イシザシ)!!」


ナイフごと持っていた右手から腕まで五つに裂けて、五つのナイフが其々の指に融合して一つとなる。それはまるで(おおとり)の爪で獲物を捉えるように、明人の左半身を狙う。


「明人!!」

「…逢魔流…二之太刀《宵闇》」


明人は振った直後の速度が乗り切る前に一歩前に出て、真っ向斬りしてたが、浅く斬り付けた。けれど明人は全ての指を纏めて押し潰し、地に着ける。


「チッ…硬い。が!」


明人は押し潰した手を左足で踏み付けて、カマエルの頭を狙って近付こうとするが、明人が踏み潰した手から死肉で出来た縄が飛び出て、踏んでいる足を捕えて上へと振り上げようとしている。明人はそうはさせまいと堪えるが、カマエルはその隙を突きバキバキッと左腕を細身の剣に変形させて明人の首を狙う。


「させない!」


私は右足をめいいっぱい強化して剣の樋部分を蹴り上げる。


「ありがとう飛鳥!」


明人は御礼を言いながら右足に白銀の渦巻きを纏わせてカマエルの胸を蹴り飛ばす。カマエルは後頭部から倒れるが、そのまま一回転して着地する。だけど、仕切り直すには良い位置。


「明人。私ならアイツの防御力を無視出来る。一瞬でも良い。隙を作って!」

「…分かった。止めは頼んだ。行くぞ」

「ええ!」


明人は瞬く間にカマエルへと肉薄して、剣を振り下ろす。カマエルは剣となった左腕は体内を経由して腹部から明人の胴を狙って突き放たれる。しかし、明人は踏み切る筈だった右足を使ってバックステップで躱しながら手首を返し、刀身は白銀に強く輝き、細見の剣を振り上げによりバキンと斬り折った。


「グッ…。これで折られるのか…なら!」


カマエルは大きく距離を取りながら身体を変形させる。勿論、私達は追撃する為に距離を詰めるが、奴が変形するには十分な時間だった。カマエルの身体は肋骨が無くなり、全ての死肉が両腕に集中しており、両腕は骨が中から浮かび上がる程に死肉が凝縮されていて、細い枝みたいになっている。


「《先程までより硬くなっている!!もう斬られぬぞ!!》」


肉が無くなった為に元の喋り方に近くなっている。カマエルはブンッと(しな)る腕を剣で捌くが往なし切れずに衝撃が骨の芯まで響く。


「っ!絶対離さない!」


私は痺れを堪えて強く握る。けど、痺れのせいで感覚がなくてちゃんと握れてるか分からない…。でも、握ってると信じて戦う。


「《これを喰らえ!!独楽護摩死刃消(コマゴマニシバケ)!!》」


カマエルは両腕をヒュンヒュンッと高速で回し、小学生の頃、跳びもしないで縄跳びを回してた男子居たけど、威力も速度も比べ物にならない。周囲の地面を深々と斬撃を刻んでいる。冷や汗がツーッと頬を撫でる。


「これじゃあ近付けない…」


けど、戦わないといけない。なら、間合いに入らずに剣で軌道を逸らす。それで攻撃の隙を作れれば…!


「はぁ!」


私が高速で動く死肉の鞭に剣を振り、奴の攻撃に接触するとガガガッと振動が全身へと伝わり、直ぐに剣を引く。斬られたという感覚じゃない。…どちらかと言えば……削れた?


刀身を見ると削り取られていて隙間が出来ている。何で削り取られた?カマエルの事、必ず何かの身体の部位。……分かった。削り取った部位の正体。


「明人!気を付けて!アイツ、多分だけど腕の尖端辺りに歯があるよ!」

「なるほど。それで剣が当たった時に変な音が…」

「《実力だけでなく、聡明とは。ますます欲しくなったぞ!》」


カマエルの言葉に寒イボが立ち、身震いして自分自身を抱き締める。


「お断りよ!!私は明人と幸せになるんだから!!」


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