第二十九話
飛鳥視点
「そ、その剣は…!」
カマエルは驚愕した声を上げて、私の手の中にある剣を震えながら指差した。
アメノムラクモノツルギ。
今まで召喚してきた剣と比べても一番光り輝き、最も刀身の幅が広い両手剣が現れ、鍔はないが該当する部分が円形となっており、柄は緑色で革巻きとなっている。刀身の方は樋が紫色、刃先が雲のような白さを合わせ持つ刀身は芸術的だった。このアメノムラクモノツルギは普通の剣より倍の時間を消費する。私は別の剣で時間をおよそ二十秒使った。本来なら残り四十秒だけど、この剣だと二十秒になる。それにもしこの剣で止めを刺せなかった場合も考えて、使えるのは十〜十五秒。この間に倒す!!
「行くよ!!」
私が全力で走り始め、カマエルは顔を歪めて羽を大きく羽撃かせて私から距離を取りながら骨の弾丸を浴びせる。
一
骨の弾丸は私に向かって飛ぶが防御膜に触れる直前、消失した。弾くのではなく消失。私はこれなら行けると地を駆ける。
ニ
カマエルは骨の弾丸が効かないと判断して、私とは反対側に向いて羽を大きく広げる。逃げるつもり!!逃さない!!
三
「玲子!!」
私が言葉を発した直後にカマエルの羽に黄金の矢が突き刺さり、奴の足が地面へと着く。
四
「絶対倒す!!」
「させるか!!」
私がアメノムラクモノツルギを振り下ろし、カマエルは倒れるように振り向き、大剣を回転の勢いそのままに横薙ぎする。
五
大剣とアメノムラクモノツルギが重なると何の抵抗もなく大剣は切断し、カマエルの頭へと刃先は捉えようとする。
六
「クソッ!」
カマエルは再生した羽を使って後ろへと下がり、頭ではなく左肩にアメノムラクモノツルギが食い込み、そのまま両断する。左半身は溶けて地面へと吸い込まれ、半身が消えたカマエルは身動き取れなくなり、私は肉薄して今度こそトドメと振り上げる。
七
その振り上げる間を突いた形で、高速で飛翔した鷹の死骸が右半身だけとなったカマエルを掴んで、そのまま空へと逃げる。
八
流石玲子と言うべきか羽を広げる鳥に向けて矢が放たれる。だが、その矢は別の鳥が身代わりになり、カマエルは上空に離脱した。
九
私はその光景を見て、アメノムラクモノツルギを元の状態へと戻す。すると、右から強い衝撃が走り、吹き飛ばされて、地面を何度も跳ね跳び、転がり……私は木に背中を強打してようやく止まった。
「あ…。かはっ…」
言葉が出ない。身体中が痛い…。何か…頭が、身体が…熱い…。それに頭がガンガンと……何か響く、聞こえる……。視界がボヤける。…何か…赤い…。これって……血?
「素晴らしい」
「…?」
目の前に誰か…居る?その人はしゃがみ込み、私へと手を伸ばし……私の首を掴んだ。
「かっ!?」
私はそのまま持ち上げられ、自重によって更に首の負担が増えてより絞まる。苦しさによって意識が覚醒し、目の前の人物がカマエルだと気付く。ヤバい!早くこの状況から逃げ出さないと!このままじゃゾンビになる!聖心力を循環する!あの靄は聖心力で無効化出来る!だから、鼻と口に喉を聖心力で覆う!
「お前の能力。神にさえ届く」
神に…届く?
「…それに…お前は美しい…」
虫唾が走った。私は嫌悪感そのままにカマエルへと蹴るが、無くなっていた筈の左手で受け止められた。
「私の眷属になれ。そして、伴侶となるのだ!」
カマエルが気持ちの悪い笑顔を私に向ける。余裕を持てるのは今のうちよ!!私は力を振り絞りアメノムラクモノツルギを呼ぼうとするとより強く喉を圧迫させられ、カヒュッと喉から息が漏れ、呼び出す為の集中力が削がれる。
「させぬよ」
私は離せ!と抵抗でカマエルの頭を殴るが痛がる素振りを見せない。
「ハハハッ。その程度、痛くないぞ」
カマエルはパッと左手を開き、拳を作って私の腹を思いっ切り殴った。
「あっ……!かはっ…」
私は腹部から昇った血液が吐き出す。それでも、私はカマエルを殴る、蹴るのを止めない!!
「ふむ…。まだ、抵抗するか…絶望が、現実が見えてないようだ。周りをよく見ると良い」
何を言って…。え…?
「三千万のゾンビの軍勢と、体積千立方メートルの私の傑作六体だ」
私達の周囲、勇者達や騎士団全てを人・獣・魔物が囲んでいた。更には海側から私達が倒した魔物や亡くなった人達だけではなく、足を生やした魚達が人間を襲う。
そして、大型のゾンビは私が居たであろう場所に羽を生やしたライオン。多分、あれが私を蹴り飛ばした奴。海側には足が生えたクジラ、海とは反対にある森側からは足が無数にあるムカデ、村の方向からは無数の触手を生やして歩く肉の球体、魔族の屋敷からは骨で積み上がったゾウ、拓けた道からは骨で針を再現されたハリネズミ。これらが一斉で襲って来る。
ありえない…。ありえない!こんな大きさ!こんな数…!
「私には勝てない。それが、分かっただろう。さぁ、私を受け入れろ」
カマエルは私の首を締める力を強める。私の口は息を取り入れようと大きく開く。カマエルは私の口の上に左拳を作り、強く圧迫させると黒い水が溢れ出る。
「これを飲め。そうすれば私の眷属に…妻となれるのだ」
「い、やだ…」
「何?」
「私、は……貴方…なんかの…妻に、ならない!」
「…何を勘違いしている。貴様の意思は関係ないのだよ」
カマエルは拳を掌が下へ向くように開き、掌には黒い水の塊の玉がくっ付いており、私の口の中へと黒い水を無理矢理押し込んだ。
「んぐっ!ん!ん〜!!」
吐き出そうとしても掌でせき止められる。
「さぁ!飲み込め!そして!私達は永遠となるのだ!」
…意識が……段々と落ちる…。……助けて…。誰か…。………明人…。助け……
「飛鳥に手を出してんじゃあねえよ」
白銀の光と共に現れた明人はカマエルの両腕を斬り裂き、自由落下した私の身体を受け止めた。
「…遅くなったな。飛鳥」




