第二十八話
飛鳥視点
あの恐ろしい肉の塊は溢れんばかりの聖心力により破裂。彼の一撃は肉の塊の一切れさえ消失させ、この世から完全に消失させた。
「《あれを消す、か…。しかし……代わりに、かなり……の……聖心力…を、消費……した…ろ》」
「それが何だ!俺はまだまだ戦える!!」
「《だ、ろうな……。あれを……使うか……。来い!!腐死鳥!!》」
カマエルが親指と人差し指を輪っかにし、歯と歯で挟んで指笛を鳴らすと何処からかバサンバサンと空気に羽を叩きつける音が私達の耳に届き、強い風圧で吹き飛ばされそうなのを必死で堪え、強烈な風から守る腕の間から正体を見る。それは先程見た大きな腐った鳥で、その腐敗した鳥がカマエルの隣に着地する。
「《やるぞ…。腐死鳥…!腐乱肉骨結!!》」
カマエルはドプンと腐死鳥の中へと入り、腐死鳥は卵の形となる。何か分からないけど…。止めるしかない!
「樋口君!!道を開く!!さっきのをお願い!!」
「ああ!!」
私はフラガラッハを取り出して邪魔な骨達を薙ぎ飛ばし、樋口君は開けた道を走る。私は彼を風のトンネルで守りながら、彼の背中を風で後押しする。ヒューリさんは私に襲い掛る骨のケンタウロスの露払い。
「これで終わりだ!!」
グンッと地面が砕ける程の脚力でカマエルに肉薄、最高の威力で最速の突きが腐敗した鳥へと向けられて……ガンッと鋼鉄に刺したのか勘違いする位の金属音が鳴る。
「硬い…けど…挿し込める!」
そう言って樋口君は剣を押し込もうとすると、腐敗した鳥の腹部から腕が現れ、彼のがら空きだった鳩尾を思いっ切しぶん殴って私が居る場所まで吹き飛ばした。
「樋口君!!」
樋口君は鳩尾を殴られて呼吸が上手く出来てない!!
「ゆっくり!ゆっくり深呼吸して!」
私はそう言いながら剣を元の状態へと戻し、腐肉の卵から生えた腕を注視する。生えた腕から更に肩、鎖骨、頭が出てきて、徐々に身体が出来上がり、気付けば二メートル弱の翼を生やし、全身の血管が脈動した全裸の大男へと変わっており、右手には奴自身の体長と遜色ない大剣が握られている。
「肉鎧を纏った私は強いぞ!」
鮮明にカマエルから肉声が発せられ、奴は地面を足裏で押し砕いて跳躍して樋口君に向けて大剣が振るわれる。
「させないっ!」
私は樋口君の前まで移動して剣で攻撃を庇う。くっ!重い…!相手の剣を刀身で滑らし、横殴りする形で攻撃の軌道をズラして力と聖心力を込めた足裏でカマエルを蹴り飛ばす。カマエルは吹き飛びながらも背後に骨を集めてクッションにして衝撃を殺す。
「中々に効いた」
カマエルは余裕の笑みを浮かべながら腹部をなぞる光景にゾッと寒気が走る。
「樋口君!早く起きて!」
「ああ…!もう大丈夫。痛み引いた…!」
樋口君は立ち上がり、カマエルに切っ先を向ける。
「では、これはどうかな?」
カマエルも樋口君と同じように切っ先を向けると、切っ先に小さな穴が空き、そこから白い何かが飛び出して来た。私は飛んで来た白の何かを斬り払う。…これは骨?
「まだまだ!」
長細く尖った骨がマシンガンの如く連射される。全部斬って防ぐのは無理!一瞬だけフラガラッハを召喚して風で弾く。
「樋口君!ヒューリさん!距離を詰めよう!」
「「はい!!」」
私達は一気に奴の懐まで飛び込んで、右・正面・左と三方向から剣を振り下ろすが、ジャンプして躱される。目線を上に向けると翼を羽撃いて空中でホバリングしてるカマエルが私達を見下ろして居る。剣が絶対に届かない絶妙な位置に飛んでいる。でも、私達には玲子が居る!
ヒュンッヒュンッと連続して風を裂いて黄金の矢がカマエルの目と羽に全て命中する。
「グッ!」
カマエルは飛行の安定性を失い、地面に向かって落ちるがそれも少しの間だけで直ぐに羽や目が回復する。
「…痛みは…そこまでだが……だが!!!羽を!!空を飛ぶ自由を再び奪われるという屈辱!!決して許せるものではないぞ!!」
カマエルが語気を強めると奴の周囲の黒い靄が濃く、激しく荒ぶって、ドス黒い竜巻を発生させる。
「行け!お前達!!あの女を生け捕りにしろ!!絶対に楽には死なさせんぞ!!」
カマエルの命令で骨のケンタウロス全てが玲子へと向かう。
「あの数は玲子達じゃ捌き切れない!樋口君!!ヒューリさん!!カマエルをお願い!」
私は玲子達の加勢に入ろうと踵を返そうとした時にバサンッと羽ばたき音が聞こえて、咄嗟に剣で塞ぎ、ガツンとドラを叩いたみたいな響く高音に顔を歪める。
「行かせんよ!!」
カマエルの剣は羽を動かす事で推進力を生み出し、それを剣での圧力に変えている。
「ぐっ!ヒューリさんは残って!樋口君行って!!」
私はそう指示するが、カマエルは左手の掌を樋口君に向けると骨が先程より速く飛び出し、恵那の能力の防御膜を破く。
「なっ!」
剣からじゃなくても飛ばせる!?しかも、剣の時より速い!!それに恵那の防御膜を破けるなんて!!でも、防げている。じゃなかったら樋口君の頭は今頃弾け飛んでいた。けど、これでは助けに行けない。どうすれば…!
「俺達が居る!!【軍神】!!」
「野村君!?」
野村君達が恵那達を襲う筈だったケンタウロス達を斬り壊していく。
「こいつらは俺達に任せてそいつに集中してくれ!」
「そうだよ!飛鳥!!貴方達だけに戦わせない!!」
「葵ちゃん…!ありがとう!!」
「僕が居る!安心して戦うんだ!」
…私は視線をカマエルへと戻して力を籠めて押し返し、跳ね飛ばす。
「カマエル!私は絶対に貴方を倒す!!来て!!アメノムラクモノツルギ!!」
この戦いを終わらせる為に最強の神器を召喚した。




