第二十六話
飛鳥視点
騒ぎの中心に着くと王冠とローブを着用している人骨がカタカタカタと笑っていた。その人骨の周囲には薄黒い靄と鎧を着た紫色の肌をした者達が私達を襲おうとしてくる。本来暗がりであれば見辛い光景。聖心力を全身に循環させている副次効果か、夜闇が昼間みたいにくっきりと今の状況が見える。
「クソッ!」
「待てっ!逸るな!!」
若い騎士の人がベテランの騎士の静止を聞かず、人骨に斬り掛かろうとすると、靄が彼の口内へと入り込むと急に悶え苦しみ、口から泡を噴き出して倒れた。もしかして、猛毒!!
「あ、あがっ…!ああ…」
と、手を空に差出した後にグタッ…と力が抜けて手は重力に従って落ち、瞳孔が開いたまま頬は地面に触れる。し、死んだ…?私は倒れた騎士を見ていると肌の色が紫色へと変わり、起き上がり始めた。その瞳には理性の欠片もなく、生気も感じられない。これって……ゾンビ?あっ!なら、他の鎧を着てる魔物は王国の騎士の方達!!
「全員!!下がれ!!!」
サエタルさんが全騎士に後退を命じる。騎士達は隊列を維持しながら下がる。勿論、ゾンビ達も確かな足取りで後退する騎士達を逃さない。こういう時は遠距離系の攻撃をする!!
「来て!ムラ…」
「【聖竜の咆哮】!!」
後退する騎士達を追うゾンビの軍団を飲み込む黄金の超螺旋が私の目の前を横切る。
「大丈夫ですか!?」
井上君が騎士の人達に声を掛ける。
「勇者様!」
「大丈夫だ!僕が来た!!これ以上はお前達の好きにさせない!!」
騎士の希望の如く勇者達が人骨に立ち向かうように現れ、相羅君が敵に向かって啖呵を切る。
「《勇者…かぁ…貴様達が…》」
『『『『『!!!?』』』』』
脳内で響くような不思議な声が聞こえる。その言葉は骸骨が放ったのだと全員が認識した。
「《まったく…奴は、上手く出来なかった…かぁ…。所詮は、家畜…。仕方ない事……だろう》」
「何者だ!お前は!上手く出来なったとはどういう事だ!!」
相羅君が剣で骸骨を差し、相手の正体を問う。
「《そうだな…。本来、家畜に名乗るものでは……ないが、勇者であれば……伝えるべき、だろう。…私は……四天王、の…うち………一人………カマエル…。君達を……殺す、者の……名だぁ》」
「僕は相羅光輝!お前を倒す者の名だ!【勇王降臨】!!」
彼は黄金の剣と鎧を纏って突撃しようとし、それに釣られて皆もカマエルに向かって進撃しようと駆け出す。それは不味い!!私はムラマサを取り出して彼等のテリトリーに入ろうとした人達を飛剣で止め、葵ちゃんが戸惑った表情で私を見る。
「あ、飛鳥!何をするの!」
「皆!下がって!あの靄を吸い込むと死んでゾンビになる!!鎧の紋章を見て!!」
私の必死の言葉、皆の視線はゾンビが着ている鎧の紋章に注視される。そして、全員の顔は恐怖と驚愕で青白く変わる。
「《チッ…。余計な事を…。あのまま……来てくれば、私の下僕に………なったものを…》」
奴は忌々しげに呟き、私を見定める。私は思わず唾を飲み込んだ。…っ!震えるな!怯えるな!弱みを見せるな!
私はムラマサを鞘へと収め、抜刀して先程より大きい斬撃を飛ばす。飛剣は鎧を無視してゾンビを上下に両断し、骸骨へと到達して……。
「《ふんっ!》」
斬撃を上から叩きつけるように左拳で殴り、粉々に砕いた。
「えっ……嘘…」
今まで魔物に防がれた事は無かった。それ所か粉々に粉砕されるなんて…。
「《ふむ……。中々に………痛い、な…》」
カマエルは自身の左手を慰めるように擦る。私の飛剣を殴った部分が剥がれてるみたいに見える。…効いてない訳じゃない。…絶望するにはまだ早い。私はムラマサから元の剣へと戻す。
「アイツには遠距離攻撃が有効!!近距離での攻撃手段しかない人は下がって!!」
『『『『『分かった』』』』』
青山君が黄金の壁を生み出し、津川さんが黄金の球体を自分の周りを五つ周回させる。…あれ?確か彼女は九つの球体が呼び寄せた筈。もしかしてまだ聖心力が回復してない?
「もう一度喰らえ!!【聖竜の咆哮……あ、れ…?」
井上君が放つ筈だった螺旋は空間に溶けて消失し、井上君は倒れた。聖心力切れ!こんなに早く!
「だったら俺が!【復元再現】」
村田君の後方から数本の剣が顕現され、黄金の壁を通り抜けると大きさを倍加させて、ゾンビを次々に斬り刻む。あの剣の数なら防ぐ事なんて出来ない!複数の剣がカマエルと迫る!
「行っ…け…」
剣がカマエルに触れる直前、村田君は倒れて彼によって呼び出された剣は黄金の塵となり、風に流される。
「だったら!私が!」
津川さんが五つの聖玉が壁を通過して倍加し、ゾンビを薙ぎ倒しながらカマエルへと迫り、大爆発を起こした。
「どうよ…!これで……!…え………?」
爆風による煙が晴れると沢山のゾンビがカマエルの周囲を囲んでおり、ボロボロとゾンビが崩れる。そこから無傷のカマエルが現れる。
「そん…な…」
津川さんは悔しそうな表情のまま倒れた。
「《流石……だな。多くの…下僕を…失う、とは……な。まぁ、幸い……粉々に……や…分断……された、だけの……下僕がいる……。それだけで……十分、だぁ……》」
カマエルが地面に触れると地鳴りが起きる。だが、その揺れは倒れる程の威力はない。一体何が起こるのだろうと構えると、バラバラにされ、両断されたゾンビ達が浮かび上がって結び付き、合わさり融合して肉の山が出来、そこから更に蠢く。嫌悪を覚える光景に勇者の何人か吐き出す。私も胃液が上る感覚が食道に伝い、必死に抑える。
「《それでは……死と……絶望を……ソナタ等、に》」
肉の山から八つの人間の頭が飛び出し、ゾウよりも三倍も太い四足が現れ、動き出した。




