第二十四話
飛鳥視点
料理は何事もなく?配り終えて私達は席に着く。…あれ?そういえば明人が座ってた席って津川さんが座って…。
私は明人が席を引いた瞬間にその席に座る。
「え?」
「何…?」
あ、ヤバい。あまりの恥ずかしさに明人を睨んじゃった…。
「い、いや、何でもないです…」
明人は困惑した様子で私が座ってた席に座る。あれ?何か自分が座ってた場所に座られるのって…かなり恥ずかしい?しかも、私…明人が座ってた椅子に座ってる。なんか急に心音が煩くなった。
「それではごゆっくりお楽しみ下さい」
村長が頭を下げて部屋を退室。扉が閉じる瞬間に村長さんと騎士の人が一緒に何処かへ向かった。
「では、頂こうか!」
相羅君の言葉が始まりで皆は食べ始めるが、それに乗るのは嫌な感じがするから明人を見る。な、何を話そう…。…あ、でも、心配な事があった。
「あ、明人…。…さっきの疲れってない?」
「さっき…。ああ、ないですよ」
あ、余所行き用の言葉。……。私は、プクッて膨れて明人の服の裾を掴む。
「私と話す時は砕けた感じでって言ったよね。皆の前でも…良いから…」
「…分かった」
…明人の優しい笑顔でドキッとさせるのは本当にズルい。
「そ、それで…、疲れとかないよね?」
「ああ、お蔭様で」
「お蔭様って…」
私は皆の前で明人を膝枕した事を思い出して、顔が一気に熱くなる。くぅぅぅ〜~…!最近はここまで簡単に顔を熱くする事は無かったのに〜!
「また、してくれる」
「…ふ、二人…きりなら…」
恥ずかしさが限界になり、ナイフとフォークを掴む。
「じゃ、じゃあ食べようか!」
「ああ」
その時のご飯の味は恥ずかしさで何も分からなかった。
食事終えて五分程経つと村長と騎士の一人が部屋を訪ねて来た。
「勇者様方、大変申し訳ありません」
村長さんがいきなり謝罪をし、頭を下げる。
「一体どうしたんだい?村長」
相羅君がテーブルの上で手を組んで問い掛けた。
「はい。村の者が勇者様達が御休み頂きたいと思い、屋敷を清掃や修理していたのですが、想像以上に荒れていたようで、勇者様達が御休み出来るような環境でなく…。その事を騎士の方々に相談した所、大変心苦しいのですが今夜は仮設テントで御休み頂く事になってしまいました。大変申し訳ありません。ですが、仮設テントは既に組み上がり終えています」
「充分だ。ありがとう。ご苦労様。下がって良いよ」
「勇者様の御慈悲感謝します」
村長と騎士がお辞儀をして退室すると玲子が立ち上がる。
「行くわよ、エリスト」
「はい」
玲子がエリストと共に退室しようとして、私も立ち上がる。
「行こう」
「ああ」
私と明人が立ち上がると樋口君とヒューリさん、恵那にミカエルさんも席を立つ。
「ま、待ってくれ四人共!」
相羅君に呼び止められて玲子は不愉快そうに顔を歪めて、振り返る。
「何?早く休みたいのだけど?」
「折角の機会だし話さないかい?ほら、君達とはあまり話した事ないし、勇者同士親睦を深めたいんだ」
「なら、尚更止めておくわ」
「どうしてだい?」
「私、相羅君が嫌いになったの。これ以上関わると親睦を深める所か、殺意が湧くわ」
「えっ!?僕、何でそんなに嫌われてるの!?」
彼の全く理解出来ないという声音と言葉を聞いて、玲子の顔は軽蔑したものへと変わる。
「だから嫌なのよ。それじゃ」
玲子がエリストの腕を抱き締めて部屋を出て行った。それを見てた相羅君の表情は苛立ちがあった。
「じゃあ、私達も…」
「待った!君の騎士にも聞きたい事があったんだ!何故その騎士は…」
私は相羅君を無視して明人共にさっさと退室して部屋から出て、樋口君とヒューリさん、恵那にミカエルさんも私達に続いて退室する。玲子とエリストさんは私達を待っており、「私のテントに来て」と言われて、玲子の仮設テントに八人全員で入る。近くにある寝袋と座布団を持ってきて私達を座らせる。
「それで、何で私達をテントに入れたの?」
「そうね。話す前に…貴山君。村長は?」
「副団長に監視を頼んであるよ」
「流石ね。…じゃあ、招き入れた理由を話すわね」
玲子はもう一つの寝袋の上にエリストさんと一緒に腰を落ち着かせる。
「先ずは結論を言うわね。恐らく、今夜敵襲があるわ」
「「「「「「っ!?」」」」」」
「貴山君は察してるでしょ?」
「まぁ、あからさまだったし」
「確かにね」
玲子が明人の言葉に賛同していると樋口君が手を上げる。
「ま、待った!確証はあるのか!?」
「確証は…ズルい言い方になるけど、貴方達に委ねるけど。私の中では確証になってるわ」
「た、確かにズルいっすね…」
「ええ。…ちゃんと理由は話すわよ。…一つ目は今朝…いえ、昼?どっちでも良いわ。敵襲があった時に知恵を感じたのよ」
「知恵…」
私はそう呟く。知恵か…。その言葉の意味は分かる。作戦的な要素がある。海からの挟撃。そして、陸で待ち構えて、海と陸での挟み撃ち。…でも、正直作戦と呼ぶにはチープ過ぎると思うな。……そうか!だからなんだ!
「だから夜襲があるのね!?」
「気付いたのね。流石ね、飛鳥」
「どういう事だ?」
樋口君が疑問符が浮かんだ顔で答えを求めてくる。
「多分だけど、昼頃にあった敵襲は本命じゃない。海が奇襲と思わせ、陸の待ち伏せが本命と思わせる。そして、誰もが戦いを終えて弛緩し、寝静まった…もしくは勝利に酔ってる時に襲う。…そして、狙うのは疲れ切った勇者達」
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!それは考え過ぎじゃないか!?あの敵襲だって明人が居なければ負けてた可能性だってあった!わざわざ次の作戦を考えてるとは考えられないぞ!」
「恐らく、それで全滅しても構わない。全滅しなかった時の予防策。それに村長の態度が合わさる事で、確証になる…ってことだよね?」
私は自信を持ってそう言い切り玲子に問うた。
「ええ。その通りよ。もう一つ理由はあるけど」
「えっ?」
樋口君に向かって偉そうに講釈垂れてたのに恥ずかしい…!!
「もう一つの理由って何すか?」
「…村人。あの少ない時間の中だけど、見掛けなかったでしょ?村人の存在は村長の口でしか語られてないのよ」
「あ……そういえば…。確かにそうっすね…」
玲子の言う通り村長以外誰一人見掛けてない。
「それは暗に、ここが戦場になる事を示してるのよ」
彼女がそう言った瞬間にテントの外がワッと騒ぎ出した。




