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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第十七話

明人視点


船旅のストレスをリフレッシュした日から一週間。ようやく魔界である大陸の姿を捉えた。


「前方に魔界確認!予想到着時間は二十分前後!!」


檣楼(しょうろう)から声が掛かり、舵を取る船長がそのまま指示を口にする。


「このまま直進し、上陸出来る場所を探す!ミズンマストとフォアマストは畳め!」

「了解!!」


そのまま何事もなく上陸が出来ると思った時、周囲に霧が発生し始める。


檣楼員(しょうろういん)は仲間の船を見失わないように注意しろ!!」

「はい!!」


霧は徐々に濃くなり隣の船でさえボヤけ始めた時、雷が落ちたかのような爆音と光が靄の中で響き、波が荒れているのか船が激しく揺れる。それは周囲一帯にまで広がり、突如としてパンッと音を立てて赤い光が弾ける。


「敵襲だ!!しかも、周囲全てに赤色だ!!囲まれてるぞ!!総員に伝達!!急いで上陸を進める!!」

『『『『『はい!!』』』』』


乗組員の人達が船の中を慌ただしく駆け回り始める。船内に居た勇者達も騒ぎを聞き付けて甲板へとやって来る。


「敵襲だってな!それなら俺と薫で一網打尽に…」

「なりません!こんな視界が明瞭ではない状態で勇者のお力を振るえば他の船に損害が出てしまいます!!」

「ぐっ!確かに…」

「私の聖球も攻撃する船が見えないと…」


このままではこの船が攻撃をいつ受けてもおかしくない。…視界を開けさせるには、風だ。


「飛鳥!」

「うん!来て!フラガラッハ!」


飛鳥は腰から剣を抜き放ちながらその刀身を蛇のようにうねった刀身へと変える。


「行ってくる!」


ダンッと甲板を蹴り、足元に風が可視化される程に強い風を纏い空中へと浮かぶ。飛鳥が操る風は良く見ると黄金の粒子が見える。改めて風は聖心力で操っているのが分かる。


飛鳥の姿は靄で見えなくなるが、直ぐに飛鳥が操る風により周囲の霧が晴れる。霧は飛鳥を中心に段々と押し流されて、全ての霧を払うと、攻撃してきた者達の正体が見えた。


「魔物だ!!」


魔物達が黒い帆船に乗り、砲撃で仲間の船を攻撃しており、更には魔法による炎が次々に襲い、船を炎上させる。このままじゃ沢山の騎士達を失った状態で上陸する事になる。これでは港を作って、国から支援を受ける計画が頓挫する。食料も残り一週間分で帰国が難しく、再び国に戻ってのやり直しが不可能だ。ここを乗り越えないと不味い。どうすれば……。


「そうだ!」


…チッ!ここからだと飛鳥まで遠い!声が届くか不安だ。…なら!


俺は聖心力を全身に巡らせて甲板を蹴り、檣楼に両手を付いて更に上へと飛び、メインマストの天辺へと到達し、そこから飛鳥に向かって飛ぶ。


「飛鳥っ!!」

「えっ!明人!!」


飛鳥は俺を受け止め、少し後ろに動く。


「明人、一体どうしたの?」

「飛鳥!一週間前にした海水ごと魚を釣り上げたの!あの黒船達の中央に出来ないか!?」

「…!やってみる!」


飛鳥の振るう剣の切っ先から風が生み出され、黒船達の中央へと向けて竜巻が伸びる。異変を感じた魔物達は魔法による反撃をするが全て俺達の周りにある風に弾かれて、海へと落ちる。


竜巻は海水を呑み込んで巻き上げる。


「そのまま釣り上げろ!」

「はぁーーーっ!!」


海水は釣り竿のように引き上げられて、船も引っ張られるみたいに何隻か垂直となり、そのまま船は転覆し、乗っていた魔物達は海から落ち、転覆した船は他の船を押し潰して海に沈める。他の船達も大荒れした海に操縦を狂わされているのか、船同士で激突している。


「反対側も頼む!!」

「うん!!」


結果は先程同じ、魔物達の悲鳴が大海原に響き渡る。正しく阿鼻叫喚というものだろう。そんな感想を抱いていると飛鳥の身体がぐらりと揺れる。


「ヤバい…。意識、が…」

「聖心力が…!飛鳥!元の船に吹っ飛ばせ!俺が着地する!」

「分かっ…た…」


飛鳥は最後の力を振り絞り、自分ごと元の船に風で吹っ飛ばして気を失う。


「おいおいおい!幾ら何でも勢い良く吹っ飛ばし過ぎだろ!」


かなりの速度で船へと迫り顔が歪みそうになる。というかこの体勢だと頭からぶつかる!!


「クソッ!」


俺は右腕で飛鳥を固定し、左手を甲板へと伸ばし、接触した瞬間に甲板を指先で撫で、身体を反転させて仰向けの状態となり、飛鳥をお姫様抱っこの状態で抱えて、甲板の上を尻と足で滑りはぎつけに背中を打つける。


「助かったぁ…」


飛鳥はすぅすぅと可愛らしい寝顔のまま眠っている。このまま見ていたいが、そうもいかない。俺は飛鳥を抱えながら船長を見て、大声を上げる。


「今のうちです!!」

「分かってるわ小僧!!総員!!勇者様が作ったチャンス!!無駄にするんじゃねぇぞ!!」

『『『『『おう!!』』』』』


乗組員達は畳んでいたフォアマストとミズンマストを全開にし、風の勢いを帆に浴びせながら座礁覚悟の速度で魔界へと迫り、他の船も切り抜けるチャンスであると気付き、俺達の乗ってる船を追う。


「碇を下ろすタイミングしくじるなよ!!」

「おう!!」


乗組員達はタイミングを見計らい碇を下ろす。素人目では早いのではと思うが、碇が下ろされてる中、船は段々と大陸が近付き、途中でガッと船が急停止するみたいに揺れるが船の勢いは止まらない。上陸するであろう場所には港がある。しかし、この勢いだと突っ込んでぶっ壊しそうだ。


「「「「「止まれぇーーー!!」」」」」


全員が願うように叫ぶと激突直前で船は停止した。


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