第十六話
飛鳥視点
「わ!私は!ひ、樋口…君。が好き…だから!…それに!す、好きな…人を!貶し…める…!人は嫌い……です!に、二度…と、話し…掛け…ないで、下さい!」
恵那が珍しく強い言葉で、強い語気でそう言い放った。私はその時、心の中でガッツポーズをした。良く言ったよ恵那!
「……なるほど。今は樋口の事が好きなのか。じゃあ、僕はこれで…。最後に言っとくよ。心変わりしたらいつでも僕のとこに来てね♪」
彼は爽やかなウザい笑顔でそう言うと自身のパーティーの人達と合流した。まるで何事もないように。
スーーーッ。…ハーーーッ。
「おい、飛鳥?無言でフラガラッハを出して、海へと歩いて何する気だ?」
私はフラガラッハを海へと向け、風を生み出して海水を呑み込む。そして、海水ごと魚を釣り上げて海水だけ海に戻す。
パンッ。
玲子は苛立ちを孕んだ柏手一つし、手を広げるとその間に黄金の弓が生み出されて、弦を引っ張って矢を生み出して溜めて……放つ。
一本だった黄金の矢は枝分かれし、打ち上げられた魚達の脳天を全て突き刺し、私は魚達を風で浜へと運んで一言。
「「恵那の事を何だと思ってるのよ!!」」
私達はもう一度深く深呼吸し、能力を解除してもう一言。
「「ふざけんてんじゃないわよ!!!」」
ハァハァと叫ぶだけで体力を使った。海に入る前なのに余計な体力を使っちゃった。
「ふざけてるかどうかは兎も角、あんなにムカつく奴だったけ?相羅って」
明人は相羅君の姿を遠目で捉えながら私の傍に来る。そう問われて私は彼の事を思い出すが、全然思い浮かばない。
「私はあんま喋った事ないから、よく分からないけど…。この世界で話した相羅君って嫌な奴の印象で大分固まってる」
「私は少し話した事がある程度だけど…。謙虚を装っているナルシストという印象ね」
謙虚なナルシスト?なんか相反する言葉な気がするけど、なんとなく分かる。
「まぁ、気分悪い話は止めて海を楽しもう。釣り上げた魚は団長達に言っておくよ」
「うん、分かった。じゃあ、戻って来たら一緒に海に入ろう」
「ああ。早めに戻って来るよ」
明人は森の中へと入り、危険な魔物が居ないか調べてる団長さんを探しに行き、直ぐに戻って来た。
「結構早いね?」
「飛鳥達のお蔭だよ。海の異変に気付いた皆がこっちに向かってたから」
「あ…それはご迷惑お掛けしました」
「ちゃんと説明したから大丈夫だよ」
「ありがとう、明人」
「どう致しまして。…それで魚の件だけど、騎士の一人が船に戻って料理人を呼んでるから、その間に準備運動しておこう。料理人が来たら魚の事を頼んでから海に入ろう」
「うん」
明人の言う通り準備運動を入念に行っていると、マッチョな料理人の人達が駆け足でやってきて、魚を次々に箱の中に納めていき、あっという間に全ての魚を回収した。あまりのスピィーディーさに驚き、呆然としてると肩を揺さぶられる。
「海、入らないのか?」
「あ、うん!入る!」
明人と一緒に海へ入ると、冷たいけど丁度良い温度で直ぐに身体が馴染む。海は何処までも透明で、色んな魚達や綺麗なサンゴ礁が広がる。あまりの綺麗さに言葉を失う。
「ここら辺の生き物はよく分からないし、変な海流があるかも知れないから沖に行くなよ」
「分かってるよー。子どもじゃあるまいし…」
私はそう言って潜る。すると景色が全然変わり、上から差す太陽の光が海中の景色をキラキラと輝かせており、私は思わず興奮する。こんな景色見たことない!
私はバッと明人を見て、視線が自然と合い………………………っ!息がっ!私は直ぐに海面へと浮上する。
「「プハッ!」」
明人も私と一緒に海面へと出て息を吸う。危なかった…。呼吸を忘れてた。…なんか……明人が景色と相まって凄く幻想的で、格好良かっ…た…。
バシャンッ!と火照った顔を海水に浸けて、ブクブクと息を吐いた。
海の中を堪能し、泳ぎ疲れて海から上がり、玲子とエリストさんが寄り添って景色を楽しんでいる。その横へと邪魔をしないように黙って座る。
「飛鳥、海の中はどうだった?」
「え、うん。ここで見てるよりは綺麗だったよ」
「そ、なら、私達も海に入りましょ。行くわよ、エリスト」
「はい!」
二人はそのまま海へと向かう。他の人達は…樋口君とヒューリさんはまだ泳いでる。恵那とミカエルさんは砂のお城を作ってる。…てか!完成度高っ!
「飛鳥」
「え?冷たっ!」
振り返ると冷たい感触が頬から伝う。その感触の正体は飲み物が入ったグラス。中身は…オレンジジュース?
「飲み物とちょっと早めのお昼ごはん貰ってきた」
「あ、ありがとう。何処から貰ったきたの?」
「あそこ」
明人が指した場所には屋台があり、飲み物やご飯を作ってる。私は貰ったご飯を見るとスープパスタだった。
「…でも、海なら焼きそばかラーメンだよね…」
「パスタは保存が聞くからな。それにスープパスタなら身体が温まるだろ」
「確かに」
明人は私の隣におぼんを置いて、自身もその隣に座る。
「じゃあ、食べるか」
「うん」
身体が冷えた状況で、この絶景を見ながら好きな人と一緒に食べるという最高のシチュエーションで、スープパスタが今までより美味しく感じた。




