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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第四話

父は俺の頭から手を離し、木剣を今一度構える。


「アースラー流は元々戦場で武器が使えなくなった時に殺した相手から武器を奪う。だから主に武器として使われる剣に槍と弓の三つ其々に技がある。先ずは基礎として剣の技を教える」


父はまた背中側へと手を引き、聖心力が木剣に纏う。


「俺が最初に使った技は《気連斬》と言って、横薙ぎを連続で行う事で相手の防御を崩す技だ」


そう言った父は言葉通りに横薙ぎを今度は大振りではなく細かく連続する。多分だけどこれが本来の《気連斬》なのだろう。さっきのは無駄があったし。


「そして、最後に使ったのが《真天斬》真っ直ぐに振り下ろす技。基本的には《気連斬》で防御を崩した後に使う」


その言葉の後、木剣を真っ直ぐに振り下ろされ、聖心力が世界に還元されて消える。次にした行動は姿勢を低くし、両手で持っていたが、利き手であろう右手で片手持ちし、その右手を後ろに引くと聖心力に木剣は再び包まれると疾走をする。


「この技は《舞葉斬》。敵に包囲された時、包囲網から突破する為に使う、攻撃ではなく逃げに使う技」


説明しながら架空の数人の敵を相手に最小限の剣撃をし、跳ねるように架空の敵から逃げて行く。その途中で父は片手持ちから両手持ちへと変え、速度そのままに左足を軸足にして回転して、周囲の全てを薙ぎ払うように横薙ぎし、そこで行動が止まり、金色のオーラは消える。


「これは《円環斬》と云う技。これは敵に囲まれた時に使う。《舞葉斬》を使っている時でも使う時も多い」


説明の後にシーッと力強く息を吐きながら木剣を鞘に納めるような動きの後、聖心力に木剣は染まり、抜刀するように左逆袈裟斬りをする。剣速は今まで見た四つの技と比べて圧倒的に早い。


「これが全流派含めて最速の技の《疾風斬》。とこれで最後。アースラー流の剣術はこの五つだ」


全ての技を見て思ったのが、突き技がない事が気になった。一つ位あっても良い筈だけど…。


「ねぇ?何で突き技がないの?」

「ん?それは……って何で突き技を知ってるんだ?剣術習ってないよな?」

「そ、それは…」


ヤバっ!またしくった!俺のアホ!反省したばっかだろ!考えろ!良い言い訳を!え〜と……え〜と…。そうだ!


「それは友達が騎士ごっこした時に教えて貰ったんだ!」

「そう言う事か!なるほどなるほど。でも、突きは危ないからやっちゃ駄目だぞ」

「うん!分かった!」


よしよし!バレなかった…。危ねぇ〜。ギリギリセーフ!


「それで何で突き技が無いか…だが、それはアースラー流が多人数を想定している流派だからだ。突き技で相手を突き刺すと武器を抜くのに時間が掛かり、次の行動に移せないからな」


なるほど。確かに突き刺せば筋肉に捕まった武器を抜くのは一苦労だろう。そもそも抜くと云う行為が時間を使う。直ぐ動くには突き技が不要なのは確かだ。


「まぁ、でも槍は必然的に突きになる。けれど俺の予想だとアースラー流を創った武人はメインの武器が剣で、槍は敵から奪った武器だったのだと思っている」

「それは……何で?」

「槍の技は三つと数が少ない。それに周囲の状況を考えた技には思えないからな」

「ふ〜ん。槍の技ってどんなの?」

「それについては剣の聖心術を覚えてからな」

「ん。分かった」

「では先ず、今見た技を真似をして貰おう。最初は《気連斬》」


俺はそう言われて両手で持つ。確か切っ先を横を向けてたけど、それだとロスがありそうだよな。それに全部の技を見ると腕とか手を引いた時に聖心力が武器に纏い始めた。でも、多分だが腕を引いただけでは聖心力は出ない。力を籠めて握り、手首を内に入れて、手を引くと身体の真ん中から血液とは違う何かが流れて手から木剣に伝わり、金色のキラキラとしたオーラが放出される。


「これは…」

「凄いな!構えをせずに聖心力を出せるなんて!ほら!今こそ《気連斬》だ!」

「う、うん!」


俺は相手の剣を弾くように、相手の手に負担を掛けるように横薙ぎとは違う、剣道のような連続した打ち込み、更には剣を巻き取る技、巻き上げをしてからガラ空きの身体に確実に命を刈り取る袈裟斬りをしてから残心をしてから父を見る。すると父はキラキラとした瞳で顔を赤くして興奮していた。


「凄い!凄いぞ!天才だ!神童だ!剣の神に愛された子だ!アースラーの生まれ変わりだ!!」


あまりの様子に正直ドン引いた。


「お、大袈裟だよ…パパ」

「大袈裟ではないぞ!通常の構えでなくとも聖心力を出せるのは普通じゃないんだ!ここ二百年、新しい技や新しい流派は創られていないんだ!」

「そ、そうなんだ…」


だとしたら聖心術を創った人達は天才って事になるな。なるほど、それなら父のテンションも説明つくし、父がアースラー流を創った人を尊敬しているのも納得だ。


「もしかしたら俺の息子は時代を創る凄い傑物になるかもしれないな」


父は何処か確信めいた声音でそう呟いた。


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