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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第十三話

明人視点


…心当たりの無い事でキレられた。まぁ、完全に待遇に対する不満とか、嫉妬だろう。護衛騎士はかなり待遇が良いから、我慢に耐えかねた…という所か。


「それで、どうしたいんだ?」

「護衛騎士を賭けて決闘だ!」

「「認めない(わよ)」」


若い騎士の言葉をスパッと切り捨てるみたいに飛鳥と清水さんがそう言う。


「私達は今の騎士に納得してるし、それに選んでるのは実力より見た目なのよ。正直、私達の方が強いし」

「明人と誰かを変えるつもりなんて無いよ!」


飛鳥の声に怒気が含まれている。俺の為に怒ってくれるのか…。純粋に嬉しい。……さて、若い騎士は勇者である二人を認識してパクパクとするのみで、言葉が出なくなった。


「明人行こう!」


飛鳥が俺の腕を掴んでさっさとこの場を離れる。清水さんもエリストの腕を引っ張って連れて行き、清水さんは若い騎士の隣へと通った際に唇を動かした。何を言ったのか分からないが、その若い騎士の顔は真っ青に変わっていた。


何を言ったのか分からないが、あの様子だともう突っ掛かって来る事はなさそうだ。


それからは特に何事もなく月日が流れる。支配されていた地域はどんどんと復興がなされ、その間にも魔王軍を根絶やしにする計画が立てられ、一年が経過した。


一年の間に要塞の周りや支配されていた土地が栄えていった。要塞の周りではたった一年で大きな街となり、街の広場では勇者達の銅像が設置されている。飛鳥は街に買い物に出掛ける度、顔を真っ赤にしていた。


そして、今日は今居る大陸から出て、魔王軍が支配している魔界と呼ばれる大陸へと船で向かう。一年という時間が経ったのはこの船の用意に手間取ったからだ。食料やそれ以外の日用品や装備を其々の船へと乗せる。しかし、魔王軍討伐の為とはいえ、200人以上乗れる大型船110隻用意を用意するとは…。どこまで本気なんだよ。


俺達が乗る船は他の大型船と同じだが護衛騎士以外の騎士達が居らず、代わりに食糧や装備が多く備蓄されている。この船に乗船してるのは勇者と護衛騎士、それと乗組員(クルー)料理人(シェフ)しか居ない。


俺と飛鳥は真っ先に自分の部屋を確保する。何人かの勇者は既に甲板へと出て海の景色を見てるというが、飛鳥は出港してからで良いと言い、清水さんも同意してエリストと共に部屋の中へと入り、相澤さんは乗り込むと速攻船酔いして、ミカエルが寄り添い、大和はテンション上がってヒューリと一緒に甲板へと向かった。


どうしよう。出港まであと一時間あるし、その間かなり暇だな…。船の中でも見回るかなと思って飛鳥の部屋をノックして一緒に行かないと聞こうとしたが中から寝息が聞こえ、一人で見てもつまらないと思い、俺も自分の部屋で眠った。


眠ってるとゆらりと揺れる感覚に目覚める。一度大きな欠伸をしてから部屋を出ると丁度飛鳥も部屋を出た所で、髪の毛は少し乱れており、部屋の前で大きな欠伸をしていた。


「おはよう飛鳥」

「うん…。はよぉ……。…!?えっ!明人!!」


飛鳥は俺に気付くと直様部屋へと戻り、恥ずかしさに悶る声が部屋の外からでも届き、暫く待っていると乱れた髪もキッチリ直した姿になって出てくる。


「気持ち良く寝れたか?」

「〜~~///」


飛鳥は顔を真っ赤にし、黙って俺の胸をポカポカと叩いた。


俺と飛鳥は波の揺れが本格的になる前に食堂へと向かう。食堂には既に清水さんとエリスト、大和とヒューリが居た。他の皆はまだ居ない。料理人から料理が載ってるオボンを受け取り、四人が座ってる場所に飛鳥と隣合って座る。


「大和、ヒューリ。船の景色はどうだった?」

「凄い綺麗だったぜ。太陽の光に反射して、めっちゃ良かったわ」

「なるほど。楽しみだな」

「そうだね」


先程の事を忘れたのか、忘れようとしてるのか飛鳥は海上の景色へと思いを馳せる。食事を半分程進めると人が入って来始める。俺達の食事の速度がゆったりした状態から早い状態に変わる。うちのパーティーはどうも他の勇者達とのテンションの違いが気になり、なるべく接触しないようにしている。飛鳥も志村と会うのは最小限だしな。


俺達はさっさと食堂を出て、相澤さんの見舞いに行く事が決まる。俺は相澤さんの為に重湯とミカエルの為の料理を料理人に注文しに行く。

俺達は先に食堂へと出ようと扉が開かれ、飛鳥と人がぶつかりそうになり、俺は飛鳥の腕を身体ごと引っ張る。


「大丈夫ですか」


俺は咄嗟にではあるが余所行きの態度で飛鳥に尋ねる。飛鳥は顔を赤くして頷く。ぶつかりそうになった人を見て、相羅だと気付き、後ろには志村が居た。


「あれ?飛鳥!今、ご飯終わったの?」

「え、う、うん!そうなんだ!」


飛鳥は姿勢を正して志村と向き合う。俺も志村を見ると視線が合い、ニヤリと笑われる。これ、俺だと気付いてるな。別に俺が俺だと気付かれても良いが、余計な問題を起こさないように一応黙ってるという感じだ。だから、何となく勇者達の前では多少他人行儀に飛鳥達には接しており、勇者の前では相澤さんや玲子さんには明人と呼ぶように言ってある。


でも、何人か気付いてると思うんだよな。飛鳥や大和の態度があからさまだし。連携訓練の時だって皆は模擬戦音で聞こえないだろうとガンガン名字で呼び合ってたしな。


俺は志村の笑みに毅然とした態度を装う。すると志村は軽く驚いた顔をしてからニヤーと飛鳥へと視線を向けて、飛鳥がプイッと顔を背けたから彼女は確証を得て、プククと堪えながら噴き出す。


「じゃあ、長嶋さん!一緒に席に着くだけで良いよ!久々に葵と話したいだろ!?」


葵、この呼び捨てに飛鳥の眉尻はピクリと動く。


「いや…葵ちゃんとは話してるから…。それにこれから恵那の御見舞いに行くから…」

「恵那?…まぁ、見舞いなら仕方ないか。じゃあ、またの機会にね」


そう言って相羅と志村と他二人の勇者と四人の護衛騎士達が食堂へと入って行った。飛鳥の顔を見ると、相澤さんの事を忘れてるのが相当頭に来たのか、般若みたいな顔をしていた。


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