第十一話
明人視点
作戦会議を重ね、其々の騎士団への作戦の伝達。あまり余裕は無かったが、なんとか作戦を三日の間で形にした。
作戦の内容は先ず、勇者と護衛騎士達が先んじて魔王軍の数を減らす。その後、騎士団が合流して魔王軍を討伐。この作戦で本当に大丈夫かという不安の声が多数あったのは確かだが、うちの団長の一声で押し通された作戦だ。
しかし…。
「ここまで刺さるとは…」
目の前の現状に大変驚いている。勇者の祝福がこれ程まで強いとは…。パッと見であるが三割の数を一気に粉砕していった。
「うわぁ〜〜。皆、凄い活躍だね」
「ああ。だな」
飛鳥は一歩前に出て、振り返る。
「じゃあ、私達も行こうか。付いて来てね」
「分かった。置いて行かれないよう努めるよ」
「行くよ!明人!」
「ああ!飛鳥!」
俺と飛鳥は聖心力を体内で循環させながら一歩を踏み出す。飛鳥達は一月という期間で体内に聖心力を留める事が出来る程に聖心力の扱いが上達した。
俺達の一歩は魔物達の前へと躍り出る。
「「逢魔流、五之太刀・改…」」
「《舞葉落日》」「《落日・梓》」
ギュンッと魔王軍の群れへと迫り、二足や四足の獣型の魔物達の膝裏を深く斬り裂いて、ひれ伏せさせる。虫型の魔物は羽根か足を切り落とす。俺はジグザグに、飛鳥は回転し、反転も加えて蛇のように動く。そして、魔王軍の中を抜けるともう一度魔物達の中を駆け抜けて、元の位置へと戻る。
「じゃあ、トドメ…いくよ。来て!ムラマサ!!」
すると、飛鳥の持つ剣が刀へと変わり、鞘も日本刀に収める紫色の鞘へと変わる。飛鳥は刀を鞘へと収めて、抜刀の構えを取る。
「飛剣!!」
飛び出した刀は黄金の斬撃を作り出し、その斬撃は魔物の群れを悉く上下に分断させる。飛鳥の祝福の威力は聖心力の操作技術を修得してから上がり、飛剣の距離も上昇して一キロになった。
流石に直線全ての魔物全部を斬る事は叶わないが、三分の一を斬り捨てた。
「マサムネ!」
刀身が赤となり、鞘の色が紫から漆黒へと変わる。飛鳥は一歩地面を踏み抜くと直ぐに一キロ先の倒れ伏している魔物達の前へと立ち、ムラマサに再び変えて、一キロと魔物を真っ二つに斬り裂く。それをもう一度繰り返して俺と飛鳥が膝裏や羽根を落とした魔物を全滅させた。
俺と飛鳥が一列の魔物達を綺麗に倒している間に魔王軍の数は減らし、残り三割という数となり、全滅確実と思った時、二割の魔物達が我々へと死にものぐるいで迫り、一割の魔物は逃げた。囮か…。
勇者達が追撃しようとするが騎士達に止められて二割の魔物を掃討して、初戦は人間側の完勝に終わった。
その日は完勝を祝った宴が始まる。が、俺と飛鳥と他の六人は自分達の部屋でコッソリと祝った。どうも俺達の勇者様方はああいう場が苦手らしい。
「だって…人の視線が気になってご飯が不味くなるんだもの」
「そうか」
まぁ、勇者は否応なしに注目を浴びるからな。そんな状態で食べるご飯なんて味なんてしないに違いない。
「私はこうやって大切な人とゆっくり過ごす方が良いよ」
「俺も飛鳥と一緒にご馳走を食べられるのは嬉しい」
俺達はテーブルの上にあるキャンドルの火を灯し、その明かりを頼りに豪華な料理を食べる。グラスのブドウジュースも味が良く、雰囲気に酔いそうとなり、窓の方へと目を向ける。窓の先ではぼんやりと火の灯りが煌々と光る。まだ宴は続いてるらしい。
「…こんな料理を若いうちに食べられるなんて思ってもなかったな。それも明人と」
「俺と食べられて嬉しい?」
そう冗談交じりに言うと、飛鳥はナイフとフォークを置いて、頷いた。
「うん。嬉しい。………私、いつかは明人とこんな良いお料理を食べたいと考えたりしてね。でも、結婚しても離婚したりして別れちゃって食べられないのかな…とか、そもそも付き合えないとかなんとか考えたりして……。うん、私は今が一番幸せだとハッキリと想うよ」
あ〜…。ヤバい。酔ってるな…。俺が飲んでるの、本当はワインかも知れない。俺は立ち上がり、飛鳥の顔に触れて口付けする。
「…俺達はこれからもっと幸せになるんだ。これだけで満足しないでくれよ」
「…なら、もっと…ね」
飛鳥にそう強請られて、唇をもう一つ重ねた。
食事を終えて、扉の外に置いてあるワゴンに食器を載せ、部屋へと戻ると蝋燭の火を消してから臭いを除去しようと窓を開け、換気をする。俺達は隣合ってベッドに座り、風を浴びながら窓の外を見やる。
「綺麗な満月だね」
「…月が綺麗ですねって?」
「私もそれ思った」
今日の飛鳥はいつもよりしっとりとした雰囲気で大人な印象だ。と、考えているとフフッと上品に笑った。
「何か可笑しかったか?」
「いや、今日の私……なんかテンションが変だなって思って」
「そうだな。なんか……エロい?」
「エロい、か…。そうかも」
飛鳥はそう言って身体全体を俺に預ける。女性特有の肌の柔らかさと甘い匂いを強く感じる。
「今日…ずっと変なんだ。高揚してる……っていうのかな…?なんか……多分、明人と今、一緒に生きてるのが凄く嬉しいんだと思う。ずっと…こうしていたいっ……て想うんだ」
「分かるよ。俺は飛鳥を失わずに今日を無事終えたのが何より嬉しいから」
「……そっか。そういう事なんだ」
飛鳥はそう言って俺を押し倒す。
「ねぇ、子どもを作ろう。勿論今じゃないけど、この戦いが終わって…。元の世界で、大学卒業したら結婚して、二年後には一人欲しいな。…ってヤバいな、重い女になっちゃってる」
「大丈夫。どんなに重くても飛鳥を受け入れ、持ち上げるから」
「体重の話?」
「さぁ、どうかな?」
「もう…!」
飛鳥は俺に身体をピッタリと合わせる。
「口惜しいなぁ。…正直、今にでも出来るならしたいな…。でも、それは魔王軍に勝ってから。…未練は残さないとね」
「そうだな。まだ、な」
俺は自身の欲情を抑えるように飛鳥を強く抱き締めて、飛鳥も俺に身体を押し付けるみたいに抱き締めた。




