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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第十話

飛鳥視点


馬車に揺られて三週間。私達は侵略地域と接している要塞へと辿り着いた。私達勇者組と護衛騎士の特別扱いは続き、一人一部屋と割り当てられる。要塞自体はとても広く、万里の長城かの如く長く厚い壁のような要塞となっている。


私は明人と一緒に要塞の上壁の部分へと行き、外を見る。要塞の外は川を挟んである土地は元はどうだったか分からない程に不毛の地となった荒れた場所が広がっている。


「一つ跨ぐだけで景色がこれ程までに違うんだね」

「ああ。けど、ここまで酷いのは俺も初めてだ」

「そうなんだ」

「大概は建物や植物は残るものだけれど…。それも仕方ない。ここは何十、何百年と魔王軍の侵攻を防いでいる場所だから、必然と戦いに不要な物は全て排除された結果なんだ」

「…それを止める為に呼ばれたんだね。私達」

「そうだな」


私は改めて現実を再認識してから自分の部屋へと戻る。明人は少し用事があると言って何処かへと向かったが、暫く部屋に居ると明人が部屋に訪ねてきた。


「何?」

「現在の魔王軍の動きを聞いてきたから少し話そうと思って」

「分かった」


私は明人に隣へと座るようポンポンとベッドを叩く。明人は頷いて私の隣へと座り、私と顔を合わせる。


「魔王軍は三ヶ月前からこの要塞への攻撃をしておらず、斥候の情報によると魔王軍は何かしらの準備や魔物の補強を行っていた。現在も魔王軍による攻撃はないという。団長の見解だと勇者との戦いに備えての事だと考えられた」

「…つまり…いつもより激しい戦いになると?」

「多分。一様、各団長は集まって勇者含めた作戦を立てているが、このまま一週間以内で動きがなければ此方から攻めると決まってるくらいだ」

「そうなんだ。…それまで待機って事になるんだ」

「ああ」


いつ攻められるのか分からない(いとま)は謎の不安で胸をザワつかせる。


「それじゃあ俺は部屋に戻るよ」

「えっ!ま、待って!」


私は思わず立ち上がって明人の服の袖を掴んだ。


「どうかしたのか?」

「いや…、あの……もう少し…話さない?」

「良いけど…。馬車の中で結構話したろ?」


明人にそう問われて何を言おうかとテンパるが、聞きたい事が直ぐに浮かんだ。


「…どうしても聞きたい事があったから……良いでしょ?」

「分かった」


明人はそう言って座り直してくれた。


「それで、聞きたい事ってなんだ?」


私のどうしても聞きたかった事……それは……。


「私達って…付き合ってる…の?」

「え?」

「いや、だってさ?付き合うとか……その言葉が無いし…。確かにお互いの事が好きって分かったし……なんか……ね。どうなんだろうなぁ〜~…って」


段々言ってきて恥ずかしくなってきた!心臓の音が早る!顔が見れない!

私はどうしたら良いか分からずに指をモジモジする。早く答えてよ!!間が開くほどに熱と音が高まる!!


「〜~~///もう!早く何か言ってよ!!」


私は意を決して明人の顔を見る…………。え…?


「これが答えだ」


い、今、唇に…キスって…。……ズルい。こっちに答えを預ける感じがズルい…!


「…………ない」

「ん?」

「ちゃんと言わないと分かんない!!」

「俺は付き合ってるつもりだよ」

「……!?」


明人の言葉を聞き、嬉しさのあまり涙が突然零れ始める。明人が心配そうな顔をして口を開こうとする。その先の言葉を言わせたくなくて私は唇を重ね、離れてこう言う。


「嬉し涙だから、大丈夫」


恵那の言う通りだ。大好きな人に大好きと思われているのが分かると凄く嬉しい。前回伝えられた時はそんな余裕なかったし。


「一緒に生きよう。明人」

「それ、プロポーズみたいだな」

「本当だ。……でも、それぐらいの覚悟はあるから、私」

「…これは増々死ねないな」

「未練は沢山ないとね」


私はそう言って明人の首に腕を回してもう一度キスをした。


流石にその先の事はしなかったけど、異様に心がスッキリとして、絶対に生き抜いてやると覚悟を決めた。その次の日、急報が入った。


「魔王軍が要塞を目指して進軍開始したって…本当?」

「間違いない。斥候に出てた騎士が倒れながらも報せてくれた。あと三日後にはこの要塞を攻める為に十万程の魔王軍がやってくる」

「……」


三日後、か…。確かに今まで戦う為に準備してきたけど、いざ戦うとなると手の震えが始まり、止まらなくなる。


「あ…」


明人は両膝を着いて、震えた私の手を両手で包み込み、ベッドに座る私の顔を上目遣いで見て、笑ってくれる。それだけで震えは止まり、心の底から安心する。


「ありがとう。明人…」

「絶対に守るから、もう少し気楽に……な?」

「うん。…ねぇ、抱き締めてくれない?それで頑張れそうな気がするから」


明人は黙ったまま立ち上がり、私を抱き締めてくれた。……側に居てくれるだけで頑張れる。私は明人の服をキュッと握る。勝つんだ。大切な人と大切な日々を失わないように。


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