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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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第九話

明人視点


連携訓練を五日と熟し、いよいよ魔王軍侵略地域である要塞を目指して馬車の旅が始まる。とはいえ、馬車で悠々自適に過ごせるのは勇者と、その護衛騎士のみ。特に勇者と護衛騎士はゆったりと広く造られた横長の箱馬車。

他の騎士達は交代で馬車の護衛の為に、馬車を挟むように武装した状態で歩いている。現在、第一騎士団のみで要塞に向かっているが、第三騎士団に、第六・第七・第八・第九が合流予定だ。勿論全部隊の全員が集まる事はなく、主力のみが集まる。第二は王都に、第四・第五や残された者達は国にお留守番となる。


騎士団はザックリとだが役割はある。

その前に騎士と兵士の違いを語ると、騎士の守るものは国…つまりは貴族や王族の味方で、護衛や国を侵略する者達からの防衛。兵士の守る者は街…つまりは平民の味方で悪事を働く者達の逮捕や成敗が仕事だ。グラウスのような事態は稀で、アイツは国益に反すると判断された為に騎士団が出る事となった。


それで騎士団の違いだが、第一は王都や王族の防衛又は護衛。第二は第一が何処かに派遣された時のスペア。第三は怪力持ちだけを集められている為、ガイングラウン流を修めてる者が大半だ。第四と第五は他国との戦争の時に出陣する。第六と第七は魔王軍に苦しめられている領地や国に遠征する騎士団。第八は団長以外第一級犯と認定された犯罪奴隷のみで構成された騎士団で主に先遣隊や囮に扱われる。第九は魔王軍侵略地域に面した要塞を守っており、最も人の出入りが激しい。


と、ここまでの事を勇者四人に教えた。グラウスの部分は省いたが。


「なるほどね。それで第二・第四・第五がお留守番って事。他の国の侵略に備えて…。本当に人は低俗で嫌になるわね。…連合軍もないんでしょ?」

「そうだよ。この国は最も栄えており、人口や食の豊かさは他の国と比べてもかけ離れている。それに何処の国も攻めてくる魔物達に手一杯だから」

「…という建前ね。実にイヤらしいわ」


呆れた、といった様子で清水さんは息を吐く。


「確かに。それに今回の戦いで侵略された地域を取り戻せば…領地取りに各国は躍起になるのは目に見えてるし」

「自分達は何もしないで益を得る。嫌な奴だけど成功するタイプ。何処の世界でも図太いのは居るわね。こんな気分の悪い話題はないわね。何か面白い話題はないかしら?」


面白い話題とは中々の無茶振りをしてくれたな。


「それなら…」


俺は孤児院の話をした。何気ないが俺にとっては面白くて、懐かしい思い出だ。マリアさんの人柄に、ケイトのシャイさと可愛さ、マリオのヤンチャさとエルトの生意気さ、キットがケイトと仲良くしようと画策する様、シェフィのしっかりした子である事、そしてミリィのお姉さんぷりを自慢するように話した。


「…ミリィ…って…」


右隣に飛鳥がボソッと何かを言った。


「飛鳥?どうかしたか?」

「え?い、いや!何でもないよ!それでその人達とは離れてから会ったの?」

「いや、軽く手紙をする程度だよ。インクも紙も運び屋に頼むのも安くないから頻度は年一になるけど。…皆、元気にしてくれれば嬉しいよ」

「「「「「…………」」」」」


相澤さんとミカエル以外の視線に妙な感覚となる。


「何だよ。皆して人の顔をジロジロと」

「いや…。その…明人ってそんな顔を出来たのか…」

「そんな顔ってどんな顔だよ、大和」

「そりゃあ、なぁ?ヒューリ」

「すっっっっっごい優しい顔してんだよ」

「そうか?」


そこまで変わった気はしてないが、皆がジロジロと見る程に変わってたのか…。


「その孤児院の皆の事、大切に思ってるのね」

「ああ。飛鳥と同じくらいな」


清水さんの言葉にそう言い切った。


「あら、素敵。良かったわね、飛鳥」


飛鳥は顔を真っ赤にして俯いている。そして、ジト目で此方を睨み、俺の額に軽く手刀する。


「何でそんな恥ずかしい事を言えるようになってるのよ…」

「長い年月は人を変えるんだよ」

「……そっか」


飛鳥は少し悲しげな表情となり、側の窓ガラスから外へと視線を向けた。


「……ねぇ、ミリィって子さ。今、何やってるの?」

「えっと…シスターになる為に修行してたから…、今は立派な修道女じゃないかな」

「そっか…。そうなんだ…」


飛鳥の少し陰のある顔が気になったけれど、自分の中で納得したのか直ぐに明るい顔となる。問題はないだろうけど…。そう思うが、俺は飛鳥の頭を撫でる。


「え…?な、何?」

「溜め込み過ぎるなよ。少しくらい吐き出してもバチは当たらない。沢山吐き出したいなら、俺に遠慮なく言えよ」

「……明人。……私は大丈夫だから。これは自分で解決する事だから」

「分かった。でも、言いたくなったら何時でも言えよ」

「うん。その時には沢山吐き出すから覚悟しててね」

「ああ」


俺は飛鳥から手を離して、身体の向きを直すと皆に見られていたのに気付く。


「皆が見る程に面白かったか?」


俺がそう訪ねると清水さんは頷く。


「ええ。とっても…ね」


と、飛鳥にウインクをして、飛鳥の顔は真っ赤に戻った。


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