第七話
明人視点
連携訓練は団長の終了の一言で切り上げ、夜になって飛鳥の部屋に相澤さんとミカエルも集まる。
「それで明人。教えたい技術って何?」
「聖心力を循環させる技術だ。これを覚えると身体能力を長期間の間、強化する事が可能になる」
「そうなんだ」
「そのやり方を教えるからベッドに座ってくれ」
「うん。分かった」
飛鳥は言う通りにベッドに座る。前回教えた時に気付いた寝た状態では効率が悪い…というか、やり難いからわざわざ寝てから起きるという非効率だった。俺の場合は家族にバレないようにする必要があって寝た状態でやってただけだから、寝る必要性は無いんだよな。
「それじゃあ先ずは聖心術をするように握り拳を作り、内側へと入れ込み、力を籠めて腕を引く」
飛鳥は言われた通りに、両手で再現する。そうすると聖心力は掌から流れ出す。
「ここまでは普通だね」
「今度は足で再現してくれ」
「足で?分かった」
飛鳥は両手で再現した事を両足で行い、足の裏から聖心力が溢れ出した。
「うわっ!出た!」
「そのまま寝て、聖心力の流れを感じる。流れを感じ取ったら教えて欲しい。これは初歩だが、一番大切なもので…」
「え、もう分かったんだけど」
「…」
い、いやぁ…でも…確かに俺も聖心力を初めて使えた時も感覚は直ぐに分かったしな。うん。俺は次の工程を編み出すのに時間が掛かっただけだから。
「な、なら…次は両手両足を合わせた状態で片側の聖心力を切って、もう片方から聖心力を片側に流す。そうする事で、自分で体を流す感覚を掴む。片方が出来たら、反対側も同じようにして…」
「出来たよ」
「え……両方?」
「うん」
………。
「そっか…。な、なら…一番難しく、聖心力を扱うには一番基本の技術。動作なしに聖心力を引き出す。これは先程二つの工程を行う事でようやく至るもので」
「出来たよ」
…………………。
「え、なんか機嫌悪そうだけど…」
飛鳥は身体を起こして、俺の顔を見る。俺は思わず顔を逸し、視点を上へと移動して部屋の隅を見る。
「…なんか……俺の十一年の努力が空虚に思えて…。あれ?俺の十一年って飛鳥の五分にも満たないのか…」
「な、なんかごめん」
不貞腐れても仕方ない。ため息を一つしてから飛鳥に向き直す。
「…じゃあ、次を教えるよ」
俺がそう言うと飛鳥はもう一度ベッドに身を沈める。
「今度は引き出した聖心力を全身に循環させる。これは動作無しで引き出せるようになれば簡単だから…」
「本当だ。出来た」
飛鳥を見ると全身から黄金のオーラが溢れ出す。
「…。うん。なら今度は聖心力を身体から溢れないように、循環させる」
「……これは結構難しい…」
そう言いながらもオーラの形が整い、飛鳥の身体を覆う人形となり、その形が徐々に小さくなる。
「あれ…?ここから…凄い抵抗される……」
飛鳥の言葉通りに聖心力は小さくならず、形は固定されたままとなる。俺はそのタイミングで二人の方へと振り向く。
「…と、まぁ…こんな感じだ。今言った通りにすれば技術が手に入る。改めて言うが他言無用だ。この人なら言っても大丈夫も無しだ。分かったな」
二人はコクコクと頷いた。
「なら、二人は自室に戻って今のをしてくれ。…飛鳥、俺は部屋へと戻るから、一回聖心力を切ってくれ」
「分かった」
飛鳥はそう言って聖心力をフッとオーラを消す。俺と二人は立ち上がり部屋を出る。
「それじゃあ飛鳥、また明日」
「うん、また明日。恵那とミカエルさんも明日ね」
「「はい」」
飛鳥は扉を閉じて、中からガチャと音が鳴って鍵を閉めた事を確認する。俺は二人を見て頭を下げる。
「じゃあ二人共、また明日」
「は、はい…」
「ええ。また明日」
その挨拶を終えると俺達は其々の部屋へと戻った。
次の日、エリストとヒューリとミカエルのテンションが異様に低く、事情は察した。
「あ〜と……うん。取り敢えず、ヒューリとエリスト……分かるぞ」
「「アキト…」」
お互い見合って、三人同時に頷いた。
「一瞬で俺と同じ境地まで来たよ。俺の数年間って一体…」
「分かるよヒューリ。僕もドンドン自分の自信とプライドが瓦解した音が聞こえたよ」
「ああ。取り敢えず気持ちを落ち着かせろ。こんな場面はこれから幾らでもある。耐えろ!」
「「明人…!」」
俺達はヒシッと抱き合い、互いを慰めた。…それで、二人から離れてミカエルを見る。彼女の落ち込む理由は分かる。ヒューリも察しているのか、彼女の肩をポンッと叩く。
「大丈夫だ。俺も時間は掛かった」
「…合計何年?」
「合計?確か……ニ年弱だったかな…」
「なら!私は二ヶ月でお前を抜いてやる!」
彼女は目標を立てる事で気分を持ち直したようだ。それは何より嬉しい。今日は次の段階へと進めるからな。
「じゃあ、今日の連携訓練は勇者の能力含めての防衛訓練だ。しっかり気を引き締めろよ」




