第三話
明人視点
次の日
勇者と護衛騎士達が再び城の外庭で集まり、今度は団長と女性部隊の団長のみだ。団長が全員を見回してから口を開く。
「では、これより分隊を作る。勇者達で四人一組となって欲しい。一人余る者も居るだろうが、グループの一つに入れて欲しい。それでは始めてくれ」
団長がそう言った瞬間に俺は飛鳥に引っ張られ、相澤さんと清水さんの所へと合流する。
「あれ?二人の護衛騎士はどうしたの?」
飛鳥がそう疑問を彼女達にぶつける。
「それはね…。あ、来たわ」
ヒューリが相澤さんの護衛騎士とエリストに引っ張られ、その後ろに大和が付いて来てる状態だ。大和は此方の方へと誘導されてると気付いたのか、突然顔を赤くする。
「あ、相澤も居たのか!」
「う、うん…。よ、宜しく…」
…もしかして…この二人って…。と、考えた瞬間に飛鳥が俺の耳元に唇を近付ける。俺は昨日の事を少し思い出して、唇を注視してしまい、直ぐに視線を顔ごと相澤さん達の方へと向ける。
「(実はあの二人って両片想いらしいよ)」
「(なるほど。やっぱり…)」
「(え!?知ってたの!?)」
「(いや、今気付いた感じだよ)」
「(へぇ〜。そう言うの分かるようになったんだ…)」
ん?何か含みがあるような言い草だな。いや、確かに前は人の恋愛事情とか分からなかったし、そもそも俺は他人の恋愛事情を気にしてなかったからな。騎士見習いになってから人の心理がある程度読めるようにはなったから、恋愛感情という分かりやすいものは簡単に読み取れるようになった。
「それじゃあ、この八人でチームを組む。これは決定事項よ。樋口君も文句ないでしょ」
「あ、はい。清水さん。お、俺で良ければ…」
大和は相澤さんをチラチラと視線を向けながら答える。明らかに好意がダダ漏れだな。…俺、これくらい分かりやすい好意を前の世界では見逃してたのか……。しかし、当の相澤さんは清水さんに緊張してる大和を見て、少し機嫌が悪そうにしている。多分、清水さんに好意があって緊張してると勘違いしてるんだろう。
「それじゃあ、騎士団長さんにチームは決まったと伝えに行きましょうか」
と、清水さんが騎士団長の所へと向かおうとした時、彼女の前に相羅が立ち塞がり、進路妨害された清水さんは苛ついた顔で腕組しながら相羅を睨んだ。
「何かしら相羅君」
「い、いや…良ければ清水さんと長嶋さん、ウチのチームに入らない?俺、勇者の中で一番強いから!女子達は知らないだろうけど、剣術も能力も合わせた決闘で負け無しだから!」
清水さんはそれを聞いて、大和を見る。その意味を察した大和は頷く。
「そう。でも、悪いけど既にチームは決まってるし、それに私の親友を数に入れない奴のチームに入る訳ないでしょ」
…相澤さんは数に入れてなかった。その事に清水さんは凄いキレてる。
「じゃ、じゃあ相澤さんも入れるから!」
清水さんの気持ちを察する事が出来ずに、鈍感に、空気を読めずにそんな事を言う。清水さんは呆れ、チラリと飛鳥を見ると顔には出してないが、握り拳を作った掌が白くなっており、ブチギレてるのがよく分かる。
「じゃあ?おまけ扱いみたいで嫌いよ。巫山戯てるの?」
「巫山戯てない!真剣に二人を誘ってるんだ!」
清水さんの瞼がピクピクしてる。相羅ってこんなバカだったか?…学校の成績は良い筈だったが、頭の良さと空気が読めるかは別問題という訳か。
「兎に角、あなたのチームには入らないわ」
「そっかぁ。なら!長嶋さんは!志村さんも誘って一緒のチームなんだ!二人は仲良かったよね!」
相羅の悪気がなく、屈託のない笑顔に飛鳥はギリッと歯軋りが聞こえ、深呼吸を何度も繰り返し、それで気持ちを落ち着かせて、笑顔を作る。
「葵ちゃんとは違うチームで頑張ろうと互いに誓ったから無理!かな…。あとは玲子に同感」
「そっか…。残念だ」
「じゃあ、私達はこれで」
「ああ!でも、気持ちが変わったらいつでも言ってね!それじゃあ!」
相羅が爽やかに去って行くが、その背中を追うことは無く、清水さんと飛鳥が顔を合わせて一言。
「「何よ!アイツ!!」」
いきなり大声を上げたから周りをビックリして、此方に注目する。
「何でもありません。ちょっと熱くなり過ぎただけなので、うるさくして申し訳ありません」
俺はそう言って頭を下げて、ヒューリやエリストに相澤さんの護衛騎士も同様に下げる。周りは俺達を見た後に何事も無かったようにチーム探しや、話し合いへと戻る。
「アイツ本当になんなの!あり得ないんだけど!」
「恵那を蔑ろにするなんて許せないわ!!」
相羅って確か清水さんに告白した人の一人だよな。サッカー部のエースで成績もトップ10に入り、顔もファンクラブが出来る程に良く、清水さんとお似合いと噂されてたが、清水さんに告白し、フラれた。振った時の言葉が「顔が好みじゃない」だったらしい。それ以来清水さんに対して面食いのイメージになったんだよな。今の姿を見たら友達想いの良い子に変わったが。
まぁ、アイツが話し掛けたのは確実に未練だよな。フラれても諦め切れず、更にこの世界では勇者の中で実力者。今の自分なら清水さんを惚れさせる事が出来ると思ったのかもな。
ん?そういえば肝心の相澤さんと彼女に惚れてる大和は?ずっと黙ったままだけど…。
相澤さんは…涙が溢れてるけど嬉しそう。で、大和は……鬼の形相だ。ここまでブチ切れた大和も初めてだ。
「まぁ、取り敢えず皆冷静になろうか」
俺は聖心力で強化して叩いた柏手はパンッと響き、皆の意識は相羅から俺へと変わる。
「それでは団長の所に行きましょうか」




