第二章・プロローグ
第三者視点
人間が築いた外壁の遥か向こうには川を挟んである果てまで続くような荒野にズラリと並ぶ怪物達が此方を睨んでいる。
騎士団長であるサエタルは川を超えた先で魔王討伐の為に集まった全騎士の前へと神妙な面持ちで立つ。
「では、これより!魔王軍討伐に入る!皆の者!!覚悟は良いか!!?」
「「「「「おお!!!」」」」」
「私達には神が遣わせた勇者達が居る!!我等の勝利は絶対だ!!これまでの敗北!!先祖代々の土地を奪われた恥辱を奴等の血で洗い流すのだ!!全軍、突撃!!!」
「「「「「うおおぉぉぉーーーー!!!!」」」」」
騎士団長の号令により全員が魔物へと目指し行軍を始める。魔物達は決して待っていた訳ではないが、人間達の気迫に危機感を覚えたのか一斉に動き始める。
その時、複数の魔物に黄金の矢が脳天へと突き刺さった。
突如としての攻撃に魔物達の足並みが乱れる。その隙を見逃す訳もなく、黄金の槍が魔物の群れの一体を突き刺さる。だが、それだけでは終わらず、黄金の槍から蔓が伸び、蔓からは棘が生えて、周囲100メートルの魔物全てを突き刺して絶命させる。
「【王命】!!魔物達よ!!魔物を殺せ!!」
未熟な青年の声が響き渡り、黄金の粉末が魔物達へと降り注ぐ、次の瞬間には仲間であった筈の魔物が自分達を攻撃する。魔物達の混乱が増した時に眩い光が視界へと入り、身体が自然とそちらへと多くの魔物が黄金の煌めく透けている壁、更に先にいる人物を見定めて向かう。呼び寄せられてる事に気付かず。
「【聖竜の咆哮】!!」
壁の先から黄金の螺旋が壁から通り抜け、その大きさを倍化させ、直線上に居る多くの魔物を飲み込み、切り刻んだ。しかし、魔物達の数は尽きる事はなく、魔物の亡骸を踏みつけ、超えて行く。
「喰らいなさい!!【聖球】!!」
九つの黄金に輝く拳大の球体が壁を通り抜け、倍の大きさとなり、魔物を其々の球体が潰した後に大爆発を起こす。すると大型の魔物でさえ容易く吹き飛ばし、他の魔物達にも被害が広がり、ましてや虫型や小型の魔物は爆発で砕け散り、爆発の余波で薙ぎ倒される。
「まだだよ!【復元再現】!!」
青年の掌が黄金に輝き、そこから剣が生まれ、その剣は飛翔し、壁を通り抜け倍加した黄金の剣が魔物達に襲い掛かる。剣の数は一本、また一本と増えて、魔物達の亡骸を増やしていく。魔物達は奴等を驚異と看做し、直線的にならず、横並びで彼等へと迫る。
「俺達も居るぞ!!【勇王降臨】!!」
ただの騎馬と鎧が黄金へと変わり、黄金の騎士が魔物達の中へと突撃し、次々に魔物を斬り捨てていく。その後ろを追随する騎乗する者達の一人が剣を上へと掲げる。
「俺も居るぞ!【軍神】!!」
剣は黄金に輝き、彼の近くに居る人々や馬を優しく包む。馬の身体能力が上昇したのか、速度が跳ね上がり、そのまま魔物を踏み潰す。
「【一里一閃】!!」
少女が馬上で剣を突きだすと、剣から黄金の剣が一里の距離と伸び、そのまま横へと薙ぐ、魔物と一緒に先行している仲間を斬るが、何事も起こる事は無かった。だが、魔物に限っては別だ。一瞬の抵抗はあるが直ぐに両断する。
あちこちで爆発やら斬撃やらで魔物が悉く屠られていく中、空中で戦場を見回す少女一人が口笛を気軽な様子で吹く。
「皆、派手にやってるね!それじゃあ私も!【空間踏破】!!」
彼女は空中で何度も空気を踏みつけて加速。それを何度も繰り返すと音速にも匹敵する程の速度で魔物達に迫り、腰から二本の短剣を取り出し、刀身を黄金へと変える。
「斬り刻むよ!」
神速、瞬く間に魔物達の首をかっ裂き、倒していく。あまりの速さに返り血さえ浴びず、綺麗な姿のまま魔物をその凶刃でひれ伏せる。
勇者達の活躍はそのまま騎士達の士気向上へと繋がり、勇者の後に戦場へと着いた騎士達は魔物と戦ってる中で思う。今までの魔物との戦いは何だったのかと思うほど魔物達は簡単に倒れていく。それは後方に居る勇者達のお蔭だろう。
「皆に力を!【礼拝聖贈】」
彼女は神へと祈るように両膝を着き、両手を組んで瞑目して騎士達の勝利を願う。彼女自身が輝くと騎士達の身体能力や技術を底上げされる。強化を受けた騎士達は神が遣わせた天使かと見紛う。騎士達は自分達の勝利を彼女に捧げんと、血眼になりながら魔物達へと向かう。
前方に居た勇者の一人が数匹の大型の魔物を従えて、後方へと下がり、他の勇者と合流する。
「おーーい!戻ったぞ!」
「ああ。お帰り。…じゃあ、始めるか」
「分かった。【王命】魔物達よ!伏せて、何があっても叫ぶことなくその状態から動くな!」
「じゃあ、やるか。【回生回死】」
そう唱えた勇者は腰から短剣を取り出し、一体の魔物を斬り刻み始めた。魔物は言われた通りに叫ばず、動かず、伏せた状態で斬り刻まれる。突如、魔物を斬り刻んだ勇者からポコンと黄金のサクランボが出て来て浮かぶ。
「おお。出た出た。一定以上溜まったら騎士達に」
「分かった。運ばせるよ」
今の所、人間優勢で進んでいるが怪我人が出ない訳ではない。次々に怪我人が野戦病院として建てられてるテントの中で腕が魔物に噛み千切られた騎士に勇者である少女が触れる。
「【聖回全快】」
黄金の輝きが騎士を包み、全ての傷口が塞がり、更には失った腕でさえ再生し、体力も全快となる。
「き、奇跡だ…」
「これでもう大丈夫です…」
「これで、何度も戦える!ありがとうございます!」
腕を再生した騎士は立ち上がり、鎧をもう一度装着して戦場へと向かう。
「あ、丁度良いや。このサクランボ持っていって」
その騎士は勇者から内側から発光する巾着を投げ渡され、一度頭を下げてから、戦場へと舞い戻った。
「うわぁ〜〜。皆、凄い活躍だね」
「ああ。だな」
「じゃあ、私達も行こうか。付いて来てね」
「分かった。置いて行かれないよう努めるよ」
「行くよ!明人!」
「ああ!飛鳥!」
二人は共に戦場へと風のように駆けた。




