第五十話
私達がこの訓練場へと来て半年も経ち、いよいよ魔王軍討伐の為に魔王侵略地帯への進軍が始まるという。勿論、私達勇者も組み込まれる。
そして私達は今、その魔王討伐前の宴を兼ねた勇者の近衛騎士を決める選抜、面会の日でもある。私達勇者は壇上へと立たされ、壇上には更に上へと続く階段があり、その先には大きな椅子と横柄な態度で座っている立派な髭を携えて、王冠を頭に被ってる男性が居て、恐らくこの方が王様だろう。両隣には背丈が大きい男性の騎士と、法衣にも似た緑を基調としている服と帽子を着用している細見だが威厳あるお爺さんが居る。護衛と宰相とかかな?
私達はその人達を見上げる形となっている。宰相?のお爺さんが一歩前へと出る。
「これより!!ミカイル陛下の御言葉を授ける!!静粛にし、よく拝聴するように!!」
と、言ってから元の位置へと戻る。入れ替わりに王様が立ち上がり、階段を降りて私達の目の前まで来た。
「先ずは勇者様方に謝罪をさせて頂きたい。この度は私達が己が助かりたいが為に、自分勝手に勇者様方を召喚してしまいました。一国の王として、この世界の住人として謝罪させて頂きます。……大変申し訳ありませんでした」
王が頭を下げたからか会場に居る全員がざわめき動揺している。王様は顔を上げると私達全員を見回す。
「本来であれば私達だけで解決するべき問題です。しかし、神からの甘い言葉に縋りついて頼り、勇者召喚という誘拐に近い横暴な行いをしてしまいました。私は国王失格です」
王様が自分の不甲斐なさを嘆いていると、私達勇者側から一人、男子生徒が前に出る。
「陛下!安心して下さい!必ず俺達が魔王を討伐し、この国に!いや、この世界に平和を齎すと約束します!」
うっわ…。随分と大きな事を言ってる…。良くもまぁ、私達が戦場で役に立つか分かってないのにそんな大きな事を言えるね。彼ってあんな感じだったけ?確かにクラスの中では発言力高い方ではあったけど。その言葉に感動したのか王様は泣きながら謝罪と感謝を繰り返し、男子生徒はそんな王様を宥める。ん?此方を見た?私は隣を見る。玲子が居る。あ〜、そういえば彼が玲子に告白して、フラレたという噂があった。なるほど、玲子を気にしてるんだ。玲子にカッコいい所を見せる為に。
王様は泣き終えると男子生徒に一言謝罪し、自身の席へと戻って座る。
「少し湿っぽくなってしまったな!これは魔王討伐の前祝いだ!全員!飲んで食べてくれ賜え!」
王様のその一言で皆が食事や飲料に手を付け始めるが、勇者である私達は一斉に色んな人達が群がって来た。
…気持ち悪い。この品定めされてる感覚。何故か人としてではなく、道具に目を向けるみたいな感じに見られて息が詰まる。他の皆は普通に応対している。何で気持ち悪くないの?こんなの嫌じゃないの?
「………」
「どうですか勇者様!私は血にも武勲にも優れ、幸い容姿にも優れている。貴方に相応しいのは私以外には居な…」
「すいません。気分が優れないので。少し席を外します」
「そうですか!なら、私も一緒に!」
「いえ、結構です!」
私はこの輪から逃げる為に席を外し、誰も居ないテラスへと移動する。
「…疲れた。…もう嫌。こんな世界。早く…早く帰りたい…。…明人…!貴方、今どこに居るの!?私がこんな大変な時に助けてくれないの!」
涙が自然と滲み、月が霞む。
「会いたいよぉ…。明人…」
私は更に泣きたくなる思いを閉じ込める為に、涙を袖で拭いて、思いっ切り身体を伸ばす。
「あ〜あ。喉乾いたなぁ!何か飲もう!」
「これをどうぞ。ノンアルコールです」
「あ、どうもありが…と…」
私はグラスを受け取りながら気付いた。…少し声音は低いが、変わっても私が声を聞き間違える筈がない。私はバッと振り返り、その姿を見た。
「あ、ああ…。あああ………」
風貌も背丈も変わってるけど、間違いない。分かる…。私には分かるよ…!
「明人…!!」
手からグラスを落とし、衝動そのままに抱き着く。本物だ!本物の明人だ!引っ込めた筈の涙が溢れ出てくる。でも、もう良い!明人に会えたから何でも良い!
「明人!明人…!明人ぉぉ!!」
「久しぶり。飛鳥」
そう言って明人も私を強く抱き締める。少し苦しいけど、嬉しさで気にもならない。
「何処に居たのよ!このバカ!!心配したのよ!!私達が来た事くらい分かったでしょ!!なんで何の連絡もないのよ!!」
「単なる一市民が勇者と連絡なんて出来ないよ。それに魔物討伐遠征してた時とも被ってたし」
「うるさいバカ!そんな言い訳聞かない!!」
「飛鳥ってそんな我儘だったか?」
「少しくらい許してよ!!バカァ…!!」
「分かったよ」
私はみっともないくらいに泣いた。小さい子みたいにワンワンと。それぐらい嬉しかった。それぐらい不安だった。それぐらい心配だった。
「…良かったよ〜。また会えて…。生きてて…。本当に良かったぁ〜」
「俺も嬉しいよ。会えて…。飛鳥」
私達は互いの再開を祝うように、より密着するみたいに抱き締め合った。
………。
「あれ…?そういえば明人、……何時から、居たの?」
明人は私から顔を逸し……
「あ〜…と。会いたいよ。明人辺りから…」
「な…」
「な?」
「何でそんな恥ずかしいこと言ってる時に来るのよぉぉぉーーーーー!!」
身体中の血液が熱湯へと変わるかという程に体温が跳ね上がるのを感じ、私はそう叫ぶしか恥ずかしさを発露する事しか出来なかった。




