第四十七話
領都案内をして貰った。楽しかった。いや、うん、小学生みたいな感想になってしまった。けど、どれもこれも新鮮で素敵だったから。衣服やアクセサリー類とか、料理店に、八百屋とか肉屋も教えて貰った。何より夕日が素晴らしかった。白色と水色の二色に統一された建物も相まって綺麗の一言に尽きた。
そして、いよいよ訓練の日となる。私達は支給された訓練着を着込み、外庭に集まった。
「え〜。今日は皆様の体力を見る為に走り込みとします。では外庭十週です。付いて来て下さい」
エリーファさんに従って走る。今居る女子生徒は全員が全員運動部ではない。私は例外として、文化部が四人と帰宅部が二人、そして運動部が二人だ。そもそもではあるが勇者は計十七人。クラスメイトは二十八人。神様の言う通りなら転生したのは十一人となる。男女を分けると、男子は八人、女子は九人となる。そして勇者になった者達の過半数以上が運動部ではない。恵那は手芸部、玲子は数少ない運動部で、水泳部。中には吹奏楽部で体力がある人も二人居るけど、どうなるか…。
と、心配したが皆無事に十週を終える。運動部や私は余裕で、文化部は少し息が荒い程度だった。
「それでは型を一対一でお教えします。皆!出て来て!」
エリーファさんの声一つでぞろぞろと宿舎から凛とした綺麗な女性達が現れる。訓練着を着て、木剣を持っている。それだけで雰囲気が私達とは違う世界の人だと一瞬で理解した。其々一人に指導者がつき、私にはメリアさんという無表情の方が担当になった。
「私が教えるのはリリアント流。エリーファ団長の御先祖様が創られた流派です。先ずは《舞連・桜》教えます」
「はい!お願いします!」
「《舞連・桜》とは連続で突きを行い、鎧の縫い目や隙間を狙い、防御や行動を阻害させる為に使う技です。先ずはゆっくりと一突き一突き、繰り返していきましょう」
メリアさんは淡々とした口調で教えてくれる。突き…か、逢魔流には突き技がないから、正しい姿勢が分からない。その思いを悟ってくれたのか身体に触れて、姿勢を動かしてくれる。
「女性は骨盤の可動域の広さ、筋肉が付きにくいけれど、その代わりに柔軟性が高い。だから突きを最大限生かすには柔軟性と可動域を上手く使う事。利き足を前に、反対の足はなるべく後ろに、歩数を減らし、距離を詰める。突き刺す時は背中の柔軟性を利用し、弓放つみたいに突きを放つ。両手で持つなら腕を伸ばしたら、反対側へと移動。それを交互にゆっくり。より威力を上げたり、距離感を変えるなら身体ごと後ろへと下がり、身体全体で突き刺す」
メリアさんの言う通りにすると凄くスムーズに身体が動く。徐々に、徐々にとスピードを上げる。足を使って、距離感を変えたり威力も変える。凄い!突き技なんて初めてだけどこんなに簡単なんだ!きっとメリアさんの教えが良いからだ!
「メリアさん!メリアさんのお蔭で簡単でした!凄い教えるの御上手なんですね!」
「……」
「メリアさん?どうされたんですか?」
「…いえ、次にいきますか」
「はい!お願いします!」
それから私はメリアさんに次々と違う技を教わり、《風火・茜》、《逆巻・葵》の二つも覚えて、計三つの技を覚えた。
私はお風呂に入ってベッドへと入る。何という多幸感。新しい剣術を習うのがこんなにも面白いなんて!しかも、教え上手な人が担当だし!
身体が程よく疲れて凄い眠い。このまま寝ちゃおうかな。眠気に身を委ねようとするとコンコンとノックされる。私は重い身体を起き上がらせ、立って扉を開ける。
「飛鳥。一週間ぶり♪」
「葵ちゃん!ささ!どうぞ座って」
「うん」
葵ちゃんをベッドに座らせて、私も隣へと座る。
「それじゃあ話そうか♪」
「うん!」
私と葵ちゃんはこの一週間を話す。前の時より話す事が増えた。それは領都案内の話があったから。どれが一番面白かった。何が綺麗だったか。こういう話は凄く盛り上がった。
「今日の型の訓練さぁ〜地味で退屈だよねぇ〜」
「そう?私は新しい剣術を学ぶの面白かったよ」
「え〜!本当に!私全然型が覚えられなかったし!つまんなかったよ!」
「うん。まぁ、私は剣は習ってたし、ある程度基礎があったから、その違いじゃないかな?」
「はぁ〜。確かにそうかもぉ〜」
「葵ちゃん運動神経良いから直ぐにコツ掴めるって」
「そうかな?」
「そうそう」
「飛鳥が言うならそうかな」
うんうんと頷こうとした時に「ふぁ~」と欠伸が出る。
「もう眠いか。じゃあ、今日はこれぐらいにしようか」
「うん…。ごめんね。ありがとう」
「どう致しまして。じゃ、また一週間後ね」
「うん。バイバイ」
葵ちゃんが出て行った後に鍵を閉めてからベッドへと身体を倒して、布団に包まり眠気に従い、眠りに就いた。
翌日、メリアさんから《円舞・菊》と《循環・梓》を教わり、短槍の型を二つ教えて貰った後にこんな事を言われた。
「ごめんなさい。もう貴方に教える事がありません」
私は急にそんな事を言われて狼狽する。
「え…と…な、何でです?」
「言った通りです。私は全てお教えしました。教える事がないのです。ですので、私と模擬戦となります。必死に付いて来て下さい」
私はその日からメリアさんにボコボコにされる日々が始まった。




