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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第二話

腕の疲労の回復を確認すると、俺は型の動きの確認をする。剣道のような面、小手、胴へと振るような動きではない。祖父様の剣術は殺人剣を元にしてる為、基本的には首や肩、腕や脚へと剣を振るう。確実に相手を弱らせ、仕留める型。


先ずは右上から左下へと振り下ろす袈裟斬り。次は左袈裟斬り。その次は腕を斬り裂くように右からの斜め斬り、次に左からの斜め斬り。


今度は高さを設定しながら斬る。最初は首を狙った一文字斬り、剣を返して胴体を狙う左一文字斬り、最後に太股を狙った一文字斬り。今度は逆に首を左一文字斬り、胴体に一文字斬り、太股に左一文字斬りをする。


それらを一通りすると休憩により引いてた汗が再び大量に出てる事が気付く。思ったより身体に負担が掛かるのか。こっからが本番なのに…。


「アキト。はい、お水♪」

「!?……ママ。ありがとう」


いつの間にか目の前に居た母に驚き、剣を落としそうになるが、動揺を必死に隠しながらお礼を言い、水が入った木のコップを受け取り、水を摂取する。母は膝を曲げて、視線を俺と合わせる。


「アキト凄いね!あんなにスムーズに剣を振れるなんて♪」

「それは…」


どう返したら良いのだろうか。返答次第では絶対怪しまれるだろな…。素直に記憶が戻って知ってる剣を振ったなんて言えば様子が可怪しいと思われて厄介な自体になる…。あっ!そうだ!これなら!!


「実は…ずっと楽しみで予習してたんだ~」


昨日の俺は今日を楽しみにしていたから、剣を振る真似をするのはなんら可怪しな事ではない筈だ。


「なるほど〜!そうだったのね!予習だけであれだけ出来るなんて凄いわ!流石お父さんの子ね!」

「あ、ありがとう…」


これだけ喜んで貰えると嘘をついた事で罪悪感に襲われる。今はまだ言えないけど、大人になったらいつか、俺が転生した存在だと言おう。


「あれ?二人共外に出て何をしてるんだ?」


大人の男性の低い声が庭の外から聞こえ、そこには筋骨隆々で茶色の髪をしたいい感じに日焼けした俺の今の父たる男性がそこに居た。お母さんは立ち上がり、父へと視線を向ける。


「お帰りなさいあなた♪それにしても今日は早かったわね。お昼過ぎに帰って来るって聞いてたんだけど…」

「ああ。実はアキトに聖心術を教えると伝えたら、今日は特に何も無いし早めに帰って良いよと言われてな」

「そうなの♪あ、今ね、アキトが剣の素振りをしてたの、少し見てあげて♪」

「勿論そのつもりだが…。既に剣を素振りをしていたなんて、待ち切れなかったんだな!!」


父は俺の前へと来てヤンキー座りをして、俺の頭を乱暴に撫でる。俺は無意識に父の手を弾く。


「む…やっぱり駄目か…」


父は俺に拒絶された為、酷く落ち込んだ。今、弾いたのは俺ではなく、この世界で生まれた五年分の『俺』が拒絶した。恐らく『俺』はこの父に撫でられるのが嫌だったんだろう。確かに撫で方が雑で強いんだよな。


「え〜と…。ごめんなさい…」

「いや、大丈夫…。気にしてない…」


思いっきり気にしてるじゃねぇか!!俺は困って母を見るとニコッと笑い、ヘコんでいる父の背中を抱き締める。


「大丈夫。アキトはあなたの事をちゃんと好きよ。だから落ち込まないで」

「うん…」

「じゃあ、私はお昼の準備をするから、さっさと元気だして!」


母は父の背中から離れると背中をバンッと左手で叩く。父は悲鳴を上げて、涙目の状態で母を見る。母は立ち上がって軽い足取りで玄関の扉を開けて中に入りながら「頑張ってね〜♪」と軽く手を振り、家の中へと入って行った。


「…それじゃあ。剣を見るか。好きに振ってくれ。駄目なら指摘するからな」

「分かった」


そういえば祖父様(じいさま)と飛鳥以外に剣筋を見られた事はなかったな。俺はふーっと長く息を吐き、深く息を吸って呼吸を整え、そして袈裟斬りをする。直ぐに足を狙った左一文字斬り、脇腹を狙う逆袈裟斬り、トドメの首を狙った左一文字斬りをし、残心をする。一呼吸置いてから剣を下ろして、父を見ると呆然とした様子で此方を見ている。


「どうしたの?」

「い、いやぁ…その歳で、しかも剣を握ってもなかったのに…」


あ…。ヤベェ…。また怪しまれる事をしてしまった。俺も学ばないな!本当に!いや、けどね!剣で嘘をつきたくないし!剣で嘘をついたら祖父様に怒られるし!しょうがないんだよ!クソッ!この人が親バカである事を祈る!


「…まぁ。才能があるなら良いか」


父は何処か悲しそうで、安心したような声音を出した。それを意味してる物は分からないが大丈夫そうだ。


「剣で俺が言う事は特になさそうだ。今、ナキアがご飯作ってるからご飯を食べた後に手合わせと、聖心術について教えよう」

「うん!」

「じゃあ、家に入ろうか」


俺と父は家の中へと入り、母のお昼ごはんを聖心術を楽しみに待った。


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