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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第四十六話

二日後、私達は予定通り神殿から旅立ち、騎士団の訓練場へと向かう。ミリィさんとは最後にキチンとお別れの挨拶をしてから馬車へと乗り込む。また会う事を約束して。二日、三日の知り合いだけど別れるのは辛くて、涙が目尻から一滴溢れた。なんとなくミリィさんとはもっと仲良くなれる気がする。話も合うし。好みのタイプは真逆なのに。


それで、執事とメイド達はここでお別れとなる。何人かごねた人達も居たが、訓練終了後に合流するという。男性の所は女性出入り厳禁、女性の所は男性出入り厳禁な為だ。これは王族でさえ許されない。その為、視察する際は同性である王族が出向く…と教わった。


私達は一週間と少しは野営と街の宿屋の繰り返しだった。正直、思ったより楽な旅。不満は多少出たが、庶民なら宿屋にも止まらず馬車の中で寝て、貴族でもここまで楽な野営は出来ないと納得させた。真実はどうか知らないけど。


そして、女子生徒達は王都近くの領地の領都ミリシアンで騎士としての訓練をする。この領地を治めてるのは女性部隊の団長、エリーファ・リリアントさんのお母様であるリーファ・リリアントさん。女性が領地を治めてるのはここだけという。私は何となく凄い人だなと感じるのみだった。


男子達はもう少し旅をして、王都を目指す為にこの領地からさっさと出て行った。何人にか女子生徒に向けて名残惜しそうな眼を向けながら去った。多分、殆どは玲子に向けてだろうけど。


エリーファさんの案内で女性部隊の宿舎の中を巡り、最後に鍵を渡して解散となる。私は早速割り振られた部屋へと入室する。旅の疲れを癒す為、ベッドに身を沈める。


「うわっ!ふわふわ!」


こんなベッド自分の部屋にもない!…というか良く考えれば私、身体洗ってないよね。いや、勿論野営してる時は身体をお湯で拭いたり、宿屋でお風呂に入って身体を洗ってるけど!野営の後の宿舎だからまともに洗えてない。それに身体を拭いたとはいえ、宿舎に辿り着くまでに汚れてる。確実に!


「お、お風呂入ろう!!」


そう言って立ち上がると丁度ノックされ、外から声が聞こえる。


「飛鳥。一緒にお風呂へと行きましょう。タオルケットと石鹸、貰ってきたわ」

「玲子…!ありがとう!」


あまりの感激に私は泣きそうになりながら扉を開ける。恵那も玲子の後ろに居て、頬を赤くしながらペコッと頭を下げる。


「じゃあ行きましょう。皆も既に行ってるわよ」


その日のお風呂は最高だった。旅の終り、もうお尻の痛い思いをしなくて良い。全てが解れる感じがする。とろけてお湯と一体になりそう。


「だらしない顔ね」

「だってぇ〜。気持ち良いからぁ〜。恵那もそう思うよねぇ」

「えっ…と…。そう、ですね。旅の後の…お風呂って……気持ち良い…ですよね」


恵那は私達二人に慣れてきたのか最初程しどろもどろにはならず、少し間があるけど頬を緩めた顔で喋ってくれる。…恵那って前髪と眼鏡で良く分からなかったけど、眼鏡がなく、前髪がお湯に濡れて纏まり、顔が良く分かる。この子めっちゃ可愛い。話し方といい、おずおずとした小動物的な雰囲気。私は可愛さ余って抱き着いた。


「ふぁっ!?な、なななななな何を!ひゃ!しゃれているので!?き、汚いですよ!?」

「汚くないよぉ〜。可愛いよぉ〜」


身体をすぅ~と背中からくびれ、骨盤へと右手でなぞる。うわっ!細っ!


「ひゃ、ひゃあああ…!」

「飛鳥…。顔だけじゃなくて頭までだらしくなったの?」

「それ酷くない!」

「貴方が今、恵那にやってる事よりマシよ」

「ええ〜。恵那は抱き着かれるのは嫌?」

「そ、そそ、そんな事は、な、ないです、けど…」

「飛鳥。そんな言い方したら恵那が嫌だなんて言う訳ないでしょ」

「む…。確かに。ごめんね恵那」


私は恵那から謝罪しながら離れる。恵那は俯きながら両指を合わせたり絡ませたりする。


「い、いえ。ただ…あまり…人に、抱きつかれる…事が…ないので…慣れて、ないので…。特に裸…で、なんて…」

「そっか…。ごめんね。距離感近くて。葵ちゃんとかだと気軽に出来るけど」

「そう言えば志村さんと話してなかったわよね?もしかして私達に気を使って?」

「い、いや、違うよ。ただテンションとかノリとか、何か合わなくて擦れ違って…。このままじゃ仲悪くなるかも…って思って、だから二人で話し合って、一週間に一回会って、一週間で起きた事を話すって決めたんだ」

「そうだったのね」


玲子は心底安心した様子でホッと胸に手を当てる。


「うん。だから二人に気を使ってる訳じゃないから、安心して」

「ありがとう。教えてくれて」

「いえいえ、此方こそ不安にさせてごめん」

「別に不安にはなってないわ。ただ、私のせいで誰かの友情が壊れるなんてごめんだから」

「そっか…」


玲子ってやっぱり良い人だ。あんまり良いイメージがなかったけど、喋ってみると優しいし、気遣いもしてくれる。それに可愛い所も案外あるしね。男子が惚れるのも分かる。


「それで明日は領都案内。明後日から訓練だよね」

「そうね。飛鳥は直ぐ馴染みそうな気がするけど。元の世界でも剣術を習ってたんでしょ?」

「あ〜と。…習ってるけど…」


明人は知らないけど、実は今の道場は剣術ではなく護身術を主にしてる、徒手空拳が主で。お祖父ちゃんに武術家じゃんと言うと、「刀は必要ない手刀で十分だと」中々に可笑しい事を言った。


「けど、実戦を想定した訓練と武術の訓練はきっと違うから、あんまお気楽に構えない方が良いと思う」

「それもそうね。覚悟して臨みましょ」

「私…付いて行けるかなぁ…」

「まぁ、明後日の事より明日の事を考えよう!楽しい事をね!」


明日の領都観光について話していると、盛り上がり過ぎて、恵那がノボセてしまい、恵那をベッドへと運んで体温を下げて、意識が戻ったのを確認して、其々の部屋へと戻った。


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